第515話 建築スキルで別荘を建てまくれ!
【三日後】
ミクトランの王様権限で特殊転移用ゲート『レンブラント』を設置してもらえた。おかげで、無人島と花の都ネオフリージアは繋がった。
メサイアの建築スキルで『別荘』を十棟ほど建てた。
木材は、俺が花の都周辺から伐採しまくってきたし、材料は腐るほどある。まだまだ建てられるぞ。
「おー! 見違えるようですねっ」
目を輝かせるリースは、別荘のベランダで燥いでいた。
それにしても、なかなか良い別荘を建てたものだなぁ。
見事なデザインだ。
部屋は広くて落ち着いている。俺たちのかつての小屋よりも快適だぞ。
「これは素晴らしいな、サトル!」
いつの間にか島にやってきたグレン。ラフな格好で室内を吟味していた。別荘を気に入ったらしく、売ってくれと言われたが断った。
「サブスクだ」
「さ、さぶすく……とは?」
「つまり、月額払いだよ。それなら貸す」
「なるほど――って、そんなに泊まらんわ!」
だよなぁ。普通に一泊料金でいいか。
「じゃあ、一泊20万セルってとこだな」
「プルではダメか?」
「え、フリージアは未だに『プル』を使ってるのか!?」
「一応流通しているだけだ。プルーフ銀貨としてな」
今は銀貨になっているのかよ。
てか、プルって『プルーフ』って名称だったのか。はじめて知ったぞ。
なかなか価値があるように思えるな。だが、セルが今の世界貨幣だ。どこでも使える便利なお金だ。
「セルのみだ」
「分かった。泊まろう」
「まいどあり」
交渉が成立すると、メサイアが飛んで喜んでいた。
「わぁ、20万だなんてやるじゃない、サトル!」
「いや。メサイア、お前のおかげさ」
そう、コイツの建築スキルがなければ建物すら建てられないのだからな。メサイアの万能スキルには、いつも助けられている。
少し別の方向に視線を向けると、新婚さんの貴族がいた。男は貴族服でビシっと決め、女性の方も綺麗なドレスに身を包んでいる。美男美女でまぶしいな。
対応はフォルがしていた。
「――では、お幸せに」
祈りを捧げていたのか、夫婦は満足気だ。
どうやら、あの二人も別荘に泊まるようだな。
「ありがとうございます、聖女様」
「こんな素敵な別荘に泊まれるなんて夢のようですわ!」
この事業は、かなりいいかもしれないぞ。泊まりにくる人も、騎士や貴族などの金持ちばかり。おかげで財布が潤うぜ。
「兄様、みなさん喜んでいますよ!」
「そうだな。ここまで反応がいいとは思わなかったよ」
今日は多くの旅行者が来ていて、大反響を得ている。
ただ、この無人島――いや、もう無人島ではないな。島は、危険なモンスターも棲息している。それに、海も危険がいっぱいだ。魔人の気配もある。
しかし、ミクトランは最強の守護結界『ミレニアム』はもう張れないという。
理由は――分からん!
本人曰く、ネオフリージアにリソースを割いているので、これ以上は無理だという。なんじゃそら!
ここに来たときは同時にしていたクセに、今は出来ないとは……。
「仕方ないのです。私はもう神ではないのですから」
「そういうものなのか」
「そういうものです」
そんなアッサリと。
だが、別の策を打った。
三日前のあの時から、フォルの聖域スキル『グロリアスサンクチュアリ』を島全体に展開している。
おかげで魔力がカツカツらしい。相当消費するようだな。
となると魔力回復ポーションをガブ飲みするか“魔力を供給”するしか方法がない。
ポーションを飲むとしても、身体的に限界がある。さすがのフォルもお腹が破裂して死んでしまいますと嘆いていた。
なので、俺が魔力供給をすることにした。
超覚醒オートスキルでな……!
「兄様の魔力……美味しいですっ♡」
ヨダレを垂らし、目をハートにするフォルは、聖女のする顔ではなかった。
おい、美人が台無しすぎるぞ!!
ヘンタイは置いておき、俺はベルに声を掛けた。
またステータスとスキル振りに集中して、ブツブツと独り言を言っている。この光景、いつまで続くんだよ。
「なあ、ベル。もうシンプルな型でいいだろ。二極とかさ」
「絶対に嫌。わたしは完璧主義だから、こだわりが強いの知ってるでしょう」
もちろんだ。ベルは転生前からずっと頑固で、人の意見を聞かないタイプだった。異世界に来てからは多少柔軟になったが――しかし、ステとスキルに関しては強いこだわりがあるようだな。
サクリファイスオンラインでもそうだったよな。
そんな中で、事件は起きた。
「ヒャッハー!!」
「こんなクソ別荘はぶっ壊してやる!!」
世紀末な二人組が現れ、メサイアの建てた家を破壊しようとしていた――いや、破壊しやがった。
その瞬間、メサイアは涙目になっていた。
あのスキンヘッドとモヒカン――殺す!
……しかし、チョースケ、パースケ、グースケを思い出すビジュアルだな。
アイツ等全員、死んじまったけどな。
いや、そんなことはクソどうでもいい、ぶっ飛ばすか!
「このハゲえええええええ!!」
俺は“チョキ”で二人組をぶん殴った。
メサイアが愛情をこめてつくった建物をぶっ壊しやがって!!
「「ぶへえええええええええ!!」」
「俺のメサイアを泣かせてんじゃねえぞ、このタコ!」
ゲシゲシと蹴っていると、スキンヘッドとモヒカンは絶叫していた。
「ぎゃあああ、やめてくれ!!」
「オ、オレたちは気に入らなかったんだ!!」
「なにが!?」
「こんな島で悠々自適に暮らす貴族共をよォ!!」
スキンヘッドによると、幸せオーラ全開の新婚さんが許せなかったらしい。……たったそれだけの理由で! ただの僻み妬み嫉みじゃねえか!
そんなくだらん理由でメサイアの作った建物を損壊させるなど、この俺が許さん。万死に値する!
「くたばりやがれ」
今度はオートスキルを任意発動しようとしたが――二人は土下座していた。
「まってくれ!」
「……って、あれ。なんか、どこかで見たことあるような」
モヒカン頭の方が俺の顔を見て妙に懐かしんでいた。
「あ?」
「――あ! まさか……サトルのアニキですかい!?」
「え……お前、グースケか!?」
「そうですよ! アニキ!」
「じゃ、じゃあ……こっちのスキンヘッドは……パースケ!?」
「ええ、そうですよ!! これは申し訳ない。アニキの島でしたか!!」
二人とも深々と土下座したが――こんなところで、まさかの再会かよ!! 嬉しくねえよ!! てか、生きていたのかよ!!




