第512話 黒い魔導書、発動。蘇る死神
“死の呪い”の残滓――『黒い魔導書』が自動で発動していた。
俺の【超覚醒オートスキル】が勝手に……いや、メサイアの意思に従ったのか。もともとアイツから貰ったギフトみたいなものだからな。
「シュネーヴァイス!」
ずっごおおおおおおおおぉぉぉん――なんて凄まじい轟音と共に、白き聖なる光がリュウオウノツカイの頭上に落ちた。バカデケェ光だ。
リュウオウノツカイの頭部がボコッと穴が空きそうな勢いで凹む。
「おぉ、オーバードライブ付きのシュネーヴァイスとはな! ……ん?」
しかし、リュウオウノツカイは直ぐにメサイアを触手で締めていた。
「ぎゃあああ!」
「って、ええッ!? 死神化して強くなったんじゃないのか!?」
慌てていると、ミクトランが叫んでいた。
「説明しましょう! メサイアは死神になったことで、女神の力を発揮できなくなったのです。よって、今の女神スキルであるシュネーヴァイスは撫でられたようなレベルなので、ダメージなど皆無なのです!」
「な、なんだってー!!」
つまりアレか。女神と死神で反発し合ってしまって、スキルの威力が出なかったわけか。さっきのエフェクトも見せかけみたいなものかよ。なんだそりゃ!
結局、俺ががんばるしかないのか!
血海奔流砲を回避しつつ、俺はオートであらゆるスキルを発動して、リュウオウノツカイの触手を吹っ飛ばしていく。
そして、とうとうメサイアを捕縛している触手を切断成功。抱えることに成功した。
「サトル!」
「しっかり掴まっていろよ!」
「う、うん……」
向かってくるレーザーをスキル『ニトロ』の爆発で相殺していく!
我ながら上手い防御方法を編み出したものだ。天才か、俺は!(自画自賛)
「メサイアを取り返した以上は、俺の勝ち確だ」
「そうだ!」
「どうした?」
「あんた、イミテーションというコピースキルが使えるでしょ! それで、私のオーバードライブをコピーしなさいよ!」
「…………!」
そういえば、以前にもコピーしたことがあった。今までいろいろありすぎて、すっかり忘れていた。普段、オートでスキルを発動しているものだから、いちいちスキルツリーなんて見ないしな。
「さあ、早く!」
「おう。なら任意発動でイミテーション!」
【死神スキル:オーバードライブをコピーしました!】
よぉし!
これで俺も発動可能だ。
さっそくオーバードライブを使用した。
すると、一瞬で力が10倍に高まり……明らかに能力が上昇していると理解できた。久々に使ったが、こりゃスゲェ。
メサイアを抱えたまま、俺は右手に力をグッと込めた。
やはり、これしかないよな!
「気をつけて、サトル。あの魚、触手を再生させたわ!」
マジだった。
全部切り落とすと、全部再生するのか……トンデモねぇレイドボスだな。しかし、もう仲間は全員救った。
こうなれば、俺の独壇場である――!
スキルを任意モードに切り替え、魔力を全力全開に。
「くらええええええええ! エンデュランス!!」
必殺にして最強の槍を穿つ!
オーバードライブの効果も乗っているから、いつもの10倍の破壊力だぜ!
『――――グゴオオオオオオオオオオオオ…………!』
無人島全体が真っ白に染まり、そして光に包まれた。
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どうやら、先ほどの俺のエンデュランスはバベルの塔並みのサイズに匹敵したようで、さすがのリュウオウノツカイも塵となっていた。
【 リュウオウノツカイ を討伐しました 】
= リザルト =
【 110,255,000 の 経験値 を 獲得しました 】
【 10,000セル を 入手しました 】
【 うねうねの触手 × 10個 を 入手しました 】
【 特別報酬:剣(未鑑定)を入手しました 】
「――ふぅ、終わったな」
「よくやったわ、サトル! というか、助けてくれてありがと!」
素直に喜ぶメサイアは、俺に抱きついて賞賛する。水着姿で迫られると、さすがの俺も照れるというか。それにしても、なんだか妙に明るい。いつもツンツンしているのにな。
もしや、死神なるとちょっと性格が変わるのか?
「いや、まあ……当たり前だろ。大切な仲間なんだから」
「……いつも感謝してる。好き」
耳元でささやくメサイアは、立ち上がって俺の手を引っ張る。
「その、メサイア」
「行きましょ」
「お、おう」
俺もメサイアが大好きなんだけどな――。
◆
浜に戻ると、聖域を解除するフォルが飛びついてきた。
「兄様ぁぁぁん!」
「ちょ!」
続いてリースも! 君たちはいつもセットだな!
残念ながらベルはいつも通りに冷静に俺を見つめている――かと思いきや、ベルも妙に涙ぐんで俺に飛びついてきた。なんでぇ!?
「ごめーん、理くん。わたし、失敗しちゃった……! またステ振り直しだよ……慰めてぇ」
そうだったな。つか、みんなに囲まれて俺はどうかなりそうだ。致死量の鼻血が大量に噴き出てしまいそうだ。
「お疲れ様です、サトル殿」
「ああ、ミクトラン。これでもう脅威はいなくなったよな?」
「ええ。ただし、サトル殿が私のミレニアムを破壊してしまったので、今後はどうなるやら……」
「え……」
「先ほどのエンデュランスです。あの大技によって粉々に」
「あ……あああああああああ!!」
解除していたわけじゃなかったのかよ……!
となると危険なモンスターが現れるかもしれないな。バカンスどころではないか?
いや、もう細かいことを気にしても仕方ない。
楽しもうじゃないか!(半分ヤケクソ)
「サトルさん、あたしと遊びましょ!」
俺の左腕に抱きつくリース。
「ちょっとリース! 兄様に抱きつきすぎです! 無駄に大きいおっぱいが当たってます! いけません!」
おっぱいとかド直球で言うな、聖女が!!
――と、いいつつもフォルも俺の右腕に。ヘンタイ聖女がっ!
「リースもフォルもなにやってるのよ。サトルは、私のなんだから!」
ええ!?
メサイアまで!? 今はスーパーデレデレモードなのか……?
「ダメ! 理くんは、わたしのオモチャなんだから!」
ベルまで声を荒げていた。……って、オモチャって他に言い方とかあるだろう!
みんなに密着されて俺はもう意識が……!
「では、この私もサトル殿に!」
「やめええええええい! ミクトラン、あんたは寄ってくるなァ!!」
男同士で――しかも“自分”と抱き合うとか、頭おかしいだろ!
つーか、もう入る余地なんてない!
普通に楽しませてくれ!
『お~い! 私たちも来たぞー!』
ん、ん!?
背後に転移魔法の光が……誰か来た!




