第511話 女神、死神になる
リュウオウノツカイは、怒り狂ったかのように『血海奔流砲』を乱れ撃ちしてきた。
なんて魚だ。凶悪すぎんだろう……!
敵の攻撃に反応して、俺の【超覚醒オートスキル】も反応するが――発動をストップ。このまま攻撃すれば、メサイアたちを巻き込んでしまうからだ。
なので、俺は手動でスキルを発動。
パニッシャートライデント、アンティオキア、アルメニアをそれぞれ放つ。しかし、リュウオウノツカイの体力および物理防御力が異常に高いせいか……あんまり効いていない。
あの分だと、魔法防御力もかなり高いな。
「なら、これならどうだ! 覚醒聖槍ロンゴミニアド!」
久しぶりにこれを使う!
この槍なら、さすがの魚野郎も耐えられまい!
まぶしすぎるほどの閃光が光速となっていく。刹那で到達した俺の槍は、リュウオウノツカイの触手をようやく切断した。
「……よし、リースを救出した! ベルも落ちてきたぜ。メサイアは……」
まだ捕まっていた。
なんでアイツだけ運が悪いんだよ!
俺はいったん、リースとベルを小脇に抱えて後退。フォルの展開する聖域スキル『グロリアスサンクチュアリ』の中へ入った。
「おかえりなさいませ、兄様!」
「おう。二人を頼んだぞ」
「ええ。あとは姉様ですね!」
「なんとかする!」
再び聖域を出て俺は、メサイアを救出しに行くが――ミクトランが呼んできた。
「お待ちを、サトル殿」
「こんな時になんだ? 急いでいるんだが」
「あなたの体力と魔力を回復して差し上げましょう。リカバリー!」
サーフパンツ姿の王様は、人差し指を俺に向けた。直後、俺は全回復した。
おい、マジかよ。
……いや、まてよ。そのスキルはメサイアも使えたような気が。まあいいや。
「助かったよ、ミクトラン。たまには役に立つな!」
「迷惑を掛けっぱなしでしたので、少しくらい協力せねばです」
どうやら、予備の魔力があったらしい。それを使って俺を回復させてくれたようだ。おかげでメサイアを救えそうだ。
ダッシュでリュウオウノツカイの元へ向かうと、複数の触手が俺に向かってきた。おかげで【超覚醒オートスキル】が発動。
メサイアだけとなった今なら、少しくらい無茶できる!
「ヒドゥンクレバス……!」
スキルの凍結効果で、リュウオウノツカイの触手が凍っていく――!
これでもう何も怖く……って、血海奔流砲を忘れていた! ギリギリで緊急回避していく。
「なんという魔力量。こんなレイドボスがいたとは……さすがの私もビックリです」
後方でミクトランが驚愕していた。
まてまて、あんたの作った世界だろうがっ!
モンスターくらい、ちゃんと管理しておけよな。
いや……まあ、俺と同じで“面倒臭がり”なんだろうけどさ――。
「ええい、近づけん……!」
こんな乱発されてはメサイアを助けられんぞ。
てか、アイツの怪光線のせいで無人島の岩やら木々やら破壊されまくっている。あの魚野郎……!
せっかくのバカンスが台無しだぞ!
そんな中で、気絶していたはずのメサイアの体が少し動いていた。
「…………ん、ぅ」
「む? メサイア、気づいたのか!」
「あれ、私なにを……って、いやあああああ……!」
触手の中でジタバタと暴れるメサイアだが、やっぱり抜け出せない。抜け出せたフォルが異常なんだよな。
「落ちつけメサイア! 今助けるから!」
「で、でもでも! いえ、自分でなんとかするわ!」
指をパチンと鳴らすメサイアは『建築スキル』を発動したようで――空から小屋が落ちてきた。
それはリュウオウノツカイの頭上に激突するや、バラバラになってしまっていた。
って、なんの意味があったんだよ!?
「おい、ダメージすら入っていないぞ、メサイア!」
「お、おかしいわね……こんなはずでは」
「いいから大人しくしてろ」
「無理! 一刻も早く脱出するわ!」
「ちょ、おま――ん?」
よく見ると、破壊された小屋の中から“ナニカ”が四体現れた。
って、まさか!
『『『『…………』』』』
この四体のナゾのおっさんは――!!
かつて俺たちの小屋を運んでくれていたヤツ! 懐かしいなぁ、オイ!
四体のおっさんは、リュウオウノツカイに突撃するが――『血海奔流砲』の餌食となり、一瞬で蒸発。
「意味ねええええええええええ!!」
まったく役に立たなかった。
やっぱり俺がなんとかするしか……お?
「このおおおおおおおおお! オーバードライブ!」
ごぉぉぉぉと紫色のオーラがメサイアを包む。ま、まさか“死神専用スキル”!
【オーバードライブ】Lv.1(最大)
【効果】
対象:自分
死神専用スキル。
全ステータスを100倍にする。
「メサイアが“死神”になった……!」
ついにこの時が!
となれば、あの魚をぶっ倒せるぞ!




