第52話 希望 - 神様に認めてもらったので俺は新たなる旅へ -
白い部屋から出ようとした時だった。
< サトル、残念だが……アレは我が影。本物の私は『聖地・アーサー』にいる。私を倒したくば直接来るのだな >
「なっ……! まだ生きていたのか! 俺の体から出て来た魔王は幻だったというのか。そうか、弱すぎると思ったわ」
< 貴様の力、しかと見せて貰った。
これは早急に対策せねばなるまいな。そうだな、女神・メサイアあるいは、まだ女神の属性を半分残すアルラトゥあたりを我が贄とし、吸収すれば、私は更に最強の魔王になれるだろうな……クク >
「……お前、メサイアに手を出したら分かってんだろな。一撃では絶対許さん」
< ほう。凄まじい憤怒を感じる。なれば……戯れてみるのも一興だろうか。手始めに突然変異したモンスターの軍勢を送り込んでやろう >
「好きにしろ。全部ぶっ潰す。
――ああ、決めた。決めたよ。……まず、魔王。お前を一番初めにぶっ潰す……! いいか、魔王! メサイアは俺の女神だ!! 指一本……髪の毛一本だって触れさせやしない! 首を洗ってまってやがれ、この根暗魔王!!」
< フフフフフフ、ハハハハハハハハ!!
いいだろう。これからは『聖者』である貴様と『魔王』である私の戦いというわけだ。いいぞ、神の抹殺は貴様を排除してからでも遅くはない! 足掻け……踠き苦しめ! ……精々、抗うがいい。フハハハハハハハ!! >
魔王の気配が忽然と消えた。
ヤロウ……。
超絶面倒なので、聖地なんて行かないけどな。――だが、小屋を、メサイアを狙うようであれば、俺は今日得た力を使い、守ってみせる。もちろん、皆もな。
◆
第100層の出入り口地点へ戻ると、みんなの姿があった。
どうやら、神王の展開するバリア内でみんな待機していたみたいだ。
「よ、戻ったぜ」
「サトル! 無事だったのね。神王様に聞いたわ……『聖者』になった途端、体から魔王が出て来たって」
「恐ろしいことに事実だな。俺は一度死んだが『究極スキル』が発動したから蘇生、また最強の力を手に入れてしまった。けど、魔王は幻だった。本体は『聖地・アーサー』にいるらしい。――で、メサイア、お前を狙うみたいだ。今後は俺がしっかり守ってやるからな」
「サ……サトル。なんか、あんたちょっと変わったわね。ちょっぴりカッコイイし……! やば、私なんでこんなドキドキしてるんだろう……。好き、かも」
メサイアは胸を押さえ、すっかり顔を赤くしていた。
あんな乙女な顔になりやがって。ちょっとグッときた。
「神王」
「ええ、サトル殿の言いたいことは分かっていますよ。魔王が動き出したのですね。――大丈夫。あなたはもう『聖者』ですから、それに、アグニは『聖炎』。スイカは『聖導』となりましたので、力を合わせなくとも最強です」
「普通、合わせるのでは……合わせなくていいんですね!?」
「ええ。あなた方は、私が認める『最強の聖者』ですから、胸を張って良いのです。――そこで、です。こうしましょう。
サトル殿は『魔王・ゾルタクスゼイアン』を。アグニとスイカは『アルティメット・デス・アナイアレイション・ドラゴン』を討伐して戴きます。異論はありませんね?」
「分かったよ。でも、俺は面倒だからアーサーには乗り込まないぜ」
「そうですね、向こうからやってくるのを待ってみてください」
「ああ。ヤツの事さ、どうせメサイアを狙ってやってくると思う。俺はそこを反撃する。ていうか、メサイアを……いや、仲間全員を守るならそれしかないと思う」
神王は納得したように頷いた。
「神王様、アタシとスイカはもう行くよ。そういえば、そのドラゴン討伐には、あのバカ兄貴もいるんだよな。久しぶりに顔出してくるかな~」
「……アグニちゃんは、すぐお兄さんを邪険にする」
「だってさ~、あんなベタベタされたらねえ。スイカ、あんただってお父さんに顔だしてあげなよ」
「うっ、それは……」
「とにかく、サトル。お世話になったよ、アタシらは行く」
「そうか。少し寂しくなるな。また気が向いたら来てくれよ。二人とも」
「うん。ドラゴン討伐したら合流するよ。短い間だったけど……あの小屋の居心地よかったし。それじゃ、みんな~! またね~!」
「お世話になりましたー」
スイカは丁寧にペコリとお辞儀。
し終えると、宙から杖を取り出した。
早々に『テレポート』を発動し――行ってしまう。
そのタイミングで、
「兄様!」「サトルさん!」
フォルとリースが抱きついてきた。
「どうした。長い間、迷子になっていた子供みたいに」
「な、なんでもないんです!」
「はい、なんでもないんです!」
ふたりとも『なんでもない』と言いつつ、腕を組んで来る。右にフォル、左にリースという状況だ。……幸せ。
「理くん。家へ帰ろうか」
「お、ベル。ついてきてくれるんだな?」
「うん。神王様の許可貰ったし。もう今度こそ好きにしろってさ。だからね、アテもないし理くんのパーティにお邪魔するよ。正式によろしくね」
「おう。よろしくな。みんなもいいだろ?」
「あたりまえでしょ」と、メサイア。
「人数は多い方が楽しいですよ~」と、リース。
「ええ、ベルさんは聖戦士ですから、貴重な戦力ですし」と、フォル。
意見は完全に一致した。
「神王様、それに女神様。俺たちは下界へ戻るよ。あとは任せてくれ」
「サトル殿。武運長久をお祈りします。……因みにですが」
神王がかなり小声で耳打ちしてくる。
顔が……近いな。
「なんです?」
「聖者以外の皆さんには、私の妻の姿は見えておりません。また、先ほどのサトル殿の『女神様』の部分は他の方には聞こえないよう、加工を施しておきましたので……悪しからず」
「まじ?」
「まじです。妻は特別な霊体。それに、メサイア様が妻を見たら驚かれるでしょうし……」
そりゃそーだ。
ソフィアの顔を見た瞬間に卒倒しそうだ。
「ところで、気になったんですが……なんで、俺のことを『殿』とか、メサイアのことを『様』で呼ぶんです? 神王様なら、呼び捨てでいいんじゃ」
「これは性格といいますか。まあ、昔にいろいろあったのですよ。この昔話もまたいつか話す時がくるでしょうな。お楽しみに」
「そ、そうですか……」
――などと、神王と密談していれば、
「帰りましょう、サトル」
メサイアに服を引っ張られる。
そうだな、そろそろ帰ろう。
「よし、みんな。帰るぞー!」
「「「「「おおー!!」」」」」
「……って、まて。返事がひとり多いぞ! 神王!」
「私もお邪魔させていただ――」
「却下です」
「そ、そんな、ごむたいなぁ~…!!」
「うわっ! しがみつくなっ! 暑苦しい!」
つーか、神がいたらゆっくりし辛いわ!!
「大人しくココにいて下さい。いいな!?」
「仕方ないですね~。では、定期的に遊びに行きます」
「くんな」
「そ、そんな、ごむたいなぁ~…!!」
「わああぁあ、分かった! 分かったから、しがみつくなあああ!!」
「よろしい。それでは『テレポート』して差し上げましょう。――いいですね、サトル殿。あなたは我が希望。全てを託します」
……まったく、この神王は……。
でも、こんな陽気な神様で良かったよ、俺は。
◆
神王に『テレポート』してもらい、俺たちは『山小屋』の前へ戻った。
「ふぅ~……。やっと終わったか。これで久しぶりに家でゆっくり……」
「サ、サトル……」
メサイアが顔を青くして、唇を震わせていた。
なんだその幽霊でも見たような。
「あん? どうした?」
「あれ………。あれよ!」
「あれって――」
『グガガガガガガギギギギゥゥゥ!!』
『ピギャァアッァァアァアズアァ!!』
『シィッ~~~~~~~~~~!!!』
えーっと……。
今現在【炭鉱ダンジョン前】の横にある俺たちの小屋――その周囲は……『魔王軍』の突然変異済みのモンスターによって囲まれていたのである。
「…………」
これは…………
何千匹いるんだ……?
「15498体」
「――は? なんだって、ベル」
「小屋を囲っているモンスターの数だよ」
……突然変異したモンスターが『15498体』だって……!?
「あのクソ魔王……!! みんな、戦闘態勢!」
最強になったとはいえ、数が多すぎるだろ!!
だけどな、やってやるさ!!
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