第510話 恐怖! 血海奔流砲 - ネプチューンレーザー
ギョロっとした目玉でこちらを見つめるリュウオウノツカイ。
触手に絡めとられているメサイアたちは、なんとか脱出を試みようとしているが――ダメだ。
抗えば抗うほど締め付けられて脱出不可能になる。まるで蛇みたいなヤツだ。
……チクショウ、あれでは!
だが、俺はそれでも諦めんぞ!
必殺の【超覚醒オートスキル】で攻撃を与えようとするが――リュウオウノツカイは、俺の目の前にメサイアを差し出して……いや、違う。
盾にしやがった!
「こ、この野郎! それは卑怯だぞ!!」
「……っ。サトル、わ、私のことは構わないわ。みんなを助ける為なら……オートスキルで」
「バカ言うな! メサイア、お前も守ってやるさ!」
「…………サトル」
強い締め付けによって気を失うメサイア。……おのれ、魚野郎!
フォルやリース、ベルも苦しそうだ。このままでは窒息死するぞ。
だがしかし、迂闊に超覚醒オートスキルを発動すれば、味方を攻撃してしまう。あのリュウオウノツカイが盾にしてくるはずだ。
「なら、オートスキルは抜きだ! パニッシャートライデント!」
槍を召喚し、俺は構えた。
そのまま投げれば、リュウオウノツカイは誰かを盾にするだろう。だから、慎重にタイミングを見極めねばならない。
隙だ。
敵の隙をつく――!
『――――グォォォォ』
リュウオウノツカイが目を赤くし始めていた。
な、なんだ!?
とてつもなく嫌な予感がしやがる。
って、すげえぇ魔力だ!
「サトルさん、避けてください!」
辛うじて意識を保っているリースが叫ぶ。
ま、まさか!
その瞬間――赤い光線が俺の頭上をかすめていった。
それは無人島の岩に激突すると大爆発を起こして砕け散っていた。
「――んなッ!! なんちゅう破壊力!」
【血海奔流砲】
【詳細】
火と水属性を併せ持つ凶悪なレーザー。
必ず大爆発を起こし、対象を木っ端みじんにする。
魔法攻撃力:100000% + レベル影響
「こ、これは……わたしの盾でも防げないね……」
抵抗する様子もないベルは、そう嘆く。マジか!
ベルのシールドスキルでも防げないのかよ。
てか、なんてレーザーを目から放つんだよ、このバケモノ。
だが、リュウオウノツカイは不思議と動きがなかった。
……!
もしかして、あの攻撃をすると反動で動けなくなるのか――!
「兄様ぁー! わたくし、もう限界です……!」
――と、言いつつもフォルは触手から“つるん”と抜けて浅瀬へ着地していた。……そや、幸運聖女だったなコイツ。
「よかったな、フォル」
「あぁん! こんな時にフォーチュン様の導きが……」
俺に助けて欲しかったのか、フォルはその場で悲しんでいた。いや、悲しんでいる場合ではなかろう!
「俺はリースを助ける。お前はベルを頼む」
「そうですね! では、奥義――」
華麗に跳躍するフォルは、リュウオウノツカイに特攻。そのまま拳を振り上げた。強烈に。猛烈に!
「覇王天翔拳!!」
強烈な一撃が命中する。
しかし、即座に反撃で『血海奔流砲』が放たれた。――フォルが危ないッ!
俺は瞬間でフォルをお姫様抱っこ! 救出した!
「セーフ!」
「……兄様っ! やっぱり、兄様はわたくしが好きなのですね! 愛しています!」
目をハートにして抱きつきてくるフォルだが、そんな場合じゃないって!
血海奔流砲がまた!!
『――ズゥゥゥゥ、ドォォォォォォ……!』
砂浜にクレーターが増えていく。
やべぇ、さっきの一撃でリュウオウノツカイの怒らせたらしい。
「フォル、お前はグロリアスサンクチュアリで聖域を張れ! そこで身を守っているんだ」
「で、でも……」
「リース達も守らなきゃならん。なにより、メサイアが気絶していて危険だ」
「そ、そうですね。姉様の為なら!」
後退していくフォルを確認し、俺は次の行動にでようとしたが――ん?
なんか空が曇っていないか……?
見上げると、そこには巨大な魔法陣が展開していた。……って、これはリースの大魔法か!
「…………プ、プロ」
まさか最強の火属性魔法プロミネンスを放つ気か!
焼き魚にする気か!? んな無茶な!
しかし、がくっと気を失っていた。惜しいところで気絶した。いや、放たなくてよかった。危うくメサイアとベルまで丸焦げになっていたぞ。
「じゃあ、今度はわたししかないよね!」
ようやく動き出すベル。最初からそうしろっ!
ステとかスキルとか振りなおしてマシになったんだろ? 真の力を見せてくれよな!
「頼む!」
「ストーンヘンジシールド!」
頭上から石で出来た巨大な盾が降ってくる。しかし、それは海へボトっと落ちると一瞬で溶けて砂となった。
なんだそりゃああああああ!?
「うぉい、ベル!」
「……う、しまった! ステ振りをミスった!」
「バカやろおおおおおお!!」
俺の股に血海奔流砲が飛んでくる。
うおおおおお、あぶねえ!!
大事なところを破壊されるところだった……!
「ごめーん、理くん。うっかり……」
「あれだけ悩んで、結果がそれかよ! もういい、俺がヤツを食い止めてやる!」
やはり、俺には【超覚醒オートスキル】しかない。でなければ、メサイアを救えない。おまけにベルも!
やってやらァ!




