表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
511/552

第502話 美人エルフに隠された真実

「ルーンストーン:ウィンは在庫がございます」


 丁寧に対応してくれる着物姿の女性エルフ。店員さんとは思えないほどに綺麗だ。


「あるのか!」

「はい。ただし、ルーンストーン:ウィンは現在、高騰中で値上がっております」

「ふむ。いくらなんだ?」



 そう聞くと、店員さんは「100万セルです」とキッパリと言った。


 その瞬間、俺は耳を疑った。


 ……ひゃ、ひゃくまん!?



「なんですってぇ!?」



 さすがのメサイアも目を皿にしていた。

 だよな。ただの触媒アイテムが100万セルは、ボッタクリ価格だ。

 高騰というか、これは……!



「なあ、店員さん。さすがに100万セルは適正価格じゃないだろ」

「いえ。残念ですが、相場です」


「マジかよ」



 アイテムの相場なんて普段気にしていないが、そんなに高くなったのか。……どうして。

 ――いや、まさか『魔人サリエリ』のせいか!


 だとしても、100万セルはやりすぎだ。



「どうするのよ、サトル。お金なんてないわよ」

「そ、そうだな。さすがに100万も出せん」



 いったんお店を出て外へ。

 俺は腕を組み、空を仰ぐ。


 100万……100万は無理だ。こんなことなら、カムランの自販機で稼いだ売り上げ……とっておけばよかったなぁ。

 今から戻るの面倒だし、ルクルに悪い。



「てか、本当に相場なのかしら」

「調べてみるか、メサイア」

「ええ、そうね」



 ネオフリージアの街中を少し歩いていると、見知った顔が現れた。この赤髪の少女は、アーカム家の令嬢アグニだ。

 会った時と同じ、派手な赤いドレスで着飾っている。

 静かにしていれば、誰もが羨むお嬢様だろうな。

 しかし、彼女はそんな性格ではない。



「あ、サトルじゃん!」

「ちょうどいい」


「ん~?」


「アグニ。ルーンストーン:ウィンのことで聞きたいんだ」

「あー、今話題だよね」

「そうなのか」


「うん。魔人サリエリのせいで、みんな怖がって買ってる」



 彼女によると、光の騎士マナスが情報を提供して回っているようだった。花の都ネオフリージアを、民を守る為に。


 言われてみればそうか。


 自己防衛の為にルーンストーン:ウィンの情報を提供するわな。

 バケモノを越えたモンスターも襲ってくるだから、仕方ないわけだ。



「そういうことなのね。だから、冒険者が買いまくって暴騰ってわけ」



 メサイアも納得し、腑に落ちていた。

 そういう事情なら仕方ない。


 しかし、それでも100万セルは高すぎやしないか……? そのことをアグニに話すと、顔を(しか)めていた。



「ありえないわ。いくら魔人対策とはいえ、100万セルはやりすぎ」

「だよな」


「サトル。そのお店はどこなの?」


「この近くだ。着物を着た美人エルフだったよ」

「おかしいわ。そんなお店は聞いたことがない」


「なんだって!?」



 もう一度、そのお店へ向かった。

 扉を開けて中へ入ると、着物の店員の姿はなかった。……あれ、不在か?

 そう思ったが、アグニは怪しんでいた。



「ここ、そんな着物の女がやっているお店じゃないわ」



 と、アグニは恐ろしいことを言った。


 あのエルフのお店では……ない?



「な、なに言っているんだ。だって、受付で接客してくれたぞ」

「その女は詐欺師集団のメンバーよ」



「「詐欺師集団!?」」



 俺もメサイアも驚いてその名を口にした。


 まてまてまて。


 この花の都ネオフリージアには、そんなヤベェ組織がいたのかよ。

 だとしたら、俺たちは詐欺られそうになったってことか。……っぶねえ。



 隣でメサイアが「よかったわね、お金がなくて」とつぶやく。そうだな、もし金があったらホイホイ支払っていたかもしれない。


「あ、ああ……。じゃあ、ここは誰のお店なんだ?」



 そう疑問に感じていると、お店の扉が開いた。


 そこには馴染の、馴染みすぎる顔がいた。



「……おや、サトル殿。それにメサイア。アグニもいますね」



 スチャッとメガネを直す王様こと、ミクトラン。



「あんたのお店かよ!?」

「ええ。ここは、私の経営するアイテムショップですが……なにか?」



 アイテムショップもやっていたのかよ。そういえば、以前には鍛冶屋をやっていたこともあったな。あの時はいろんな意味で世話になった。



「…………」



 メサイアは気だるそうにミクトランを見つめていた。親子のはずなんだがな。妙に仲が悪いというか、話したがらない。



「おい、メサイア。たまには親子水入らずで話したらどうだ?」

「あ?」



 なぜか睨まれる俺。

 目が怖いぞ、メサイア……。


 やはり、触れない方が良さそうだな。


 仕方ないので、俺はミクトランに更に話を振った。



「ミクトラン。このお店、詐欺集団に使われていたようだぞ」

「そうでしたか。最近、不審者の出入りがあるようでしたが、入られていましたか」


「ああ、着物姿のエルフだった」

「女性ですか?」


「そうだ。えらく美人だったぞ」

「ほう、それは興味深いですね」



 どこかで買ってきた品物を棚に詰め込むミクトランは、アグニに視線を向けた。



「な、なんだよ、王様」

「アグニ、あなたにミッションを」

「あ、あたし!?」


「退屈していたのでしょう? ならば、サトル殿たちにお力添えを」

「……そ、そうね。わかった」



 おぉ、アグニが協力してくれるのか。そりゃ嬉しいね!

 今後、アグニはルーンストーン:ウィンの発見と詐欺師集団を追う任務を負うことになった。


 これで少しは見つかりやすくなったな。詐欺師も含めてな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ