第499話 魔法耐性を下げるルーンストーン:ウィン
また騎士が現れた。
まるで天使の降臨のように、やたら神々しく。
アロンダイトの黒い鎧とは違い――純白の鎧。そして、黄金のように輝く金髪。
だが、俺よりは年上に見えた。
けど、それでも若く見える。なんだあの人……いや、見覚えがあるな。
当時はあまり接触する機会がなかったから、印象が薄かった。
アイツはそうだ……!
「光の騎士マナスか!」
「そうです。私こそマナス! ご存じであったとは」
「ああ、少しな」
「ふむ。ところで、あなたと一緒にいる騎士はアロンダイトではないですか」
地面に降り立つマナスは、アロンダイトの元へ駆け寄った。
こうしてみると背も高いし、なんだか礼儀正しいな。こんな丁寧語だったけ……?
「マナス、やっと来たか!」
「こんなところで何をしているのです?」
「ダークミノタウロス三体を相手にしていたんだ。一体はお前が倒したがな」
そういえば、一体消滅したな。マナスの力は本物か。
あんな体力オバケをよく倒せたな。
「最近、噂の魔人サリエリの魔物ですね」
「そうだ。そこのサトルという男が吾輩を助けてくれた」
「サトル。なるほど、かつてアルラトゥ戦で共闘した……」
思い出したのか、マナスは顎をしゃくった。
俺の中では二人とも洗脳されていて敵対していた存在だからな。当時はこうして、ゆっくり話すこともなかった。
こうして接してみれば、割と普通なんだな。
「討伐をミクトラン王に頼まれてな。外へ出てみれば、アロンダイトが逆さまになっていた」
「ふむ。やはり、鍛錬を怠っていたようですね」
ジロリとアロンダイトを見つめるマナス。そうだったのか。
そんな彼は図星をつかれたように焦っていた。
「う、うるさい。最近、お見合いだとか……貴族令嬢との恋愛沙汰で忙殺されていたのだ」
な、なんだって……?
そういえば、ポウラとも関係があったっぽいしな。
あとで詳しく聞くとしよう。
それより、フォルを助けねば!
未だに一体のダークミノタウロスを引き付けていた。
「うああああ、兄様あぁぁ…………!」
涙目で爆走している。
一刻も早く対処せねば!
しかし、倒す方法が……。
「サトル、でしたね」
背後からマナスが声を掛けてくる。
正直、直ぐにフォルを助けに行きたかった。だが、今は彼の話を聞いた方が得策だと考えた。
「なんだ」
「あのシスターを助けたいのですね」
「そうだ。マナス、お前はさっきダークミノタウロスを倒していたな……どうすりゃいい」
「コツを教えてあげましょう」
「コツ?」
「ええ。奴らは無駄に体力が高い。通常のモンスターの数百倍はあるのでしょう。だから一撃で倒すのは困難……」
と、マナスは剣をまさぐりアイテムを取り出した。
この『P』みたいな文字が入った石は……まさか。
「ルーンストーンか」
「そうです。これはルーンストーンの“ウィン”です」
【ルーンストーン:ウィン】
【効果】
①対象の魔法耐性を大幅に低下させる効果がある。②対象が『闇属性』の場合、三倍のダメージを与える。③特定のスキルの触媒に使用可能
「これが……そうだったのか。このアイテムのおかげでダークミノタウロスの魔法耐性を下げていたのか!」
「これを貸してあげます」
「せんきゅ!」
マナスからルーンストーン:ウィンを借りた。
今まで俺は魔法スキルばかり使っていたからな。そりゃ、少ないダメージで体力を削り切れないわけだ。
ならば、このルーンストーンを握りしめたままなら――!
「兄様あああああ!」
俺は直ぐにフォルの方へ向かい、間に入った。
ダークミノタウロスが向かってくるが【オートスキル】の聖属性攻撃『オーディール』が発動。
十字の閃光が飛び出し、激突。
『ウオオオオオオオオオオ…………!!』
確実なダメージを与え、ついに撃破したッ!
「た、倒せた!」
続いて残りのダークミノタウロスにもオーディールをぶつけた。これも粉砕。
『ギョオオオオオオオ!』
よし、討伐完了!!
「兄様、兄様ぁああぁ!」
涙を滝のように流し、鼻水まで垂らすフォルが飛びついてきた。……ちょ! まあいいか。
「すまん、遅れた」
「いえいえ、信じておりました。兄様はきっと助けてくれるって……」
「あたりまえだろ」
「……嬉しいです」
マナスのルーンストーン:ウィンのおかげで助かったな。アイツがいなかったら、やられたところだ。
これでひとまず、ミクトラン王の依頼は完了。
街へ戻るか。




