第497話 血斧使いダークミノタウロス
慌ただしくやってくる女騎士。見覚えのある美人顔だった。
――って、あの美しい青い髪……!
氷の騎士チャルチ・ウィト・リクエだ。
「おや、チャルチ。血相を変えてどうかしたのですか」
ミクトラン王は、冷静な声で状況を聞いていた。顔面蒼白のチャルチは、こちらに一瞥しならがも報告をしていた。
「申し上げます。先ほど、この花の都ネオフリージアの周辺にレイドボス級のモンスターが多数出現。恐らく、ミレニアムの破壊目的でしょう」
「……ほう。魔人サリエリのモンスターでしょうね」
「はい。只今、闇の騎士アロンダイトが対応中でございます」
「彼なら上手くやってくれるでしょう。しかし――」
「お察しの通りです。彼一人では厳しいかと」
と、チャルチは声のトーンを下げていた。マジか。というか、闇の騎士アロンダイトがいるのか……!
アロンダイトといえば、かつては“敵”だった。出会った時から洗脳され、何度か戦った。最終的には洗脳も解けて味方になってくれた。が、それ以来は会っていなかった。
そして、最近ではエルフの郷カムランでもその名を耳にした。ポウラと縁があったようだが……。
「それでは聖者であるサトル殿を派遣しましょう」
「俺かよ!?」
「当然でしょう。聖者といえばレイドボスを打ち倒す者ですから」
「そうだけどさ。いいのか、俺が戦っても」
「もちろん、手を貸していただけるのなら歓迎します。報酬も弾みますよ」
「マジか。最近、金に困っていたんだよ」
「では、金貨で支払います」
「乗った!」
メサイアたちも報酬が貰えると聞いてテンションを上げていた。みんな、ほぼ一文無しだからなぁ……。美味しいものも食べたいし、今夜の宿屋代も必要だ。稼がなきゃな。
「やったじゃない、サトル。討伐報酬ありよ!」
「そうだな、メサイア。討伐クエストとして受けることにしよう」
ミクトランに確認すると、アッサリ『OK』が出た。さすがだぜ。
さっそく外へ向かおうとするが、グレンが足を止めた。
「すまないが、私は内部を守らななければならない」
「なんだ、来ないのか」
「外の警備は、アロンダイトとマナスの担当だ」
「そうか。グレン、またあとで会おう」
「うむ。では、また」
グレンと別れ、俺たちはネオポインセチア城を後にした。
さっそく街の外を目指し、そして到着。
門は固く閉ざされていた。
「申し訳ございません。現在、外で危険なモンスターが暴れているため……ここは通れません」
と、こちらの事情を知らない門番が止めてきた。だが、チャルチが話してくれた。
「門番よ。私たちは王の命に従い、こちらへ参上した。アロンダイトの加勢に来たのです」
「そ、そうでありましたか! お通り下さいっ!」
チャルチと分かった途端、門番は態度を変えた。おかげで外へ出られたが……なるほど、こりゃヤバい状況だな。
真っ黒なミノタウロスがうようよしていた。
【ダークミノタウロス】
【詳細】
魔人の影響で闇属性化したミノタウロス。
HPが高く、魔法耐性もある。
ブラッディアックスは、攻撃力が非常に高い。一撃必殺の『メテオストライク』に注意。
メサイアのモンスター情報開示スキル『ヴァールハイト』で詳細が判明したが――これは!
分析中、フォルが叫んだ。
「大変です、兄様!」
「どうした?」
「あの黒い騎士さん、ダークミノタウロスの一撃を喰らって倒れちゃいました……!」
「なにィ!?」
よく見ると、ちょうど斧の一撃を受けていたところだった。アロンダイトは、その場に倒れていた。
――って、ウソだろ!?
敵が強すぎるのか……?
とにかく、助けに行かねば!




