第496話 ミクトラン王の復活
再びフォルを仲間に加え、今度は『ネオポインセチア城』へ。
ここからはそれほど遠くなく、ネオフリージア騎士団まで戻り――そこから奥だ。
すぐにお城が見えてきた。
花の都の中央に位置する巨大な建造物。
地球に住んでいた頃で言えば『ノイシュヴァンシュタイン城』に近いだろうか。それ以上か。
無駄に広い通路を歩き、ついに城門を突破。グレンのおかげで顔パスだ。
しかし、本当に当時のままだな。まったく変化がない。
今度はやたら段数のある階段を上がっていく。
「……やっと到着ですねぇ~」
息を乱し、疲労でぶっ倒れそうになっているリース。俺が抱えてやるべきだったか。
城内に入って門番が目の前に現れた。
「ようこそ、グレン様。そちらのお連れの方たちですが――」
「彼らは友人だ。通してもらうぞ」
「……解かりました」
門番は素直に下がっていくが、なぜかメサイアを睨んでいたように見える。どういうことやらな。
通路を通してもらい、更に奥にある玉座へ。
この先に“王”がいるはずだ。
なぜか閉ざされている扉が開く。
次第に見慣れた光景がそこに。
みんなと共に先へ進む。
そして、ついに到着した。アイツの前に。
玉座に座り、細い目でこちらを見つめる桃色の髪の男。あの何を考えているか分からない表情。やたら威厳のある騎士のような賢者のような服装。
間違いない。
ミクトラン王だ。
「久しぶりですね、みなさん。ようこそ、ポインセチア城へ」
静かな声で口を開くミクトランは、真っ先に俺を見つめ――そして、メサイアと順に姿を確認していった。
あの姿、本物じゃねえか……!
つい最近も、虹の空中庭園っぽい場所で会っているから間違いない。
本当に復活していたのか。
「へえ、ウワサは本当だったんだ」
「ご無沙汰ですね、ハーデンベルギア」
「また会えるとは思わなかったよ。というか、もう二度と会えないかと思ってた」
珍しく嬉しそうにするベル。
そういえば、別れを言うヒマもなかったしな。
――それにしても、本物が現れるとはな。
幻ではなさそうだし……。
「メサイアも変わらないですね」
「ミクトラン、どうして今更現れたのよ」
「おやおや、せっかくの再会ですよ。嬉しくないのですか?」
「どうせ、虹の空中庭園で会えるじゃない。サトルに力を託したのも、ただ神様を引退したかっただけでしょ」
それが図星だったのかミクトランは、砕けた表情で笑っていた。おいおい、マジかよ。
メサイアの言うことが本当なら、当時のアレはなんだったんだよ。確か、スターゲイザーやら何やらあって消えたはず。
その後、ベルが原初の女神の涙『ティアドロップ』を俺に託した。あれを飲んだ俺はアルクトゥルスを引き継げたのだ。
「バレましたか。ええ、実は消滅はしていませんでした」
「おい、ミクトラン!」
つい声を張り上げる俺。
さすがにツッコミたくもなった。
「ですが、サトル殿に全てを託したので、私に神王としての力はほとんどありませんよ」
「それにしては下界に降りたり、花の都全体にミレニアム張ったりしているじゃないか」
「それは――」
と、ミクトランは眼鏡越しにフォルを見つめた。……フォル!?
「え……」
「フォーチュンのおかげです。彼女が力を貸してくれているんです」
「わ、わたくしは何も……」
「聖女フォルトゥナ様。あなたの魂にはフォーチュンが宿っているのです。彼女はかつて、私が生み出した原初の神。だから、アルクトゥルスと同等の力を持つのですよ」
そうだったのか。フォーチュンがいるのは知っていたけどな。たまに降臨するし。
なるほどな、このネオフリージアにフォルがやってきたことで、ミクトランの力も戻ったんだ。
多分、フォルの中にいるフォーチュンが手を貸しているとか、そんなところだろう。
「そうだ、ミクトラン。フォルの母親がこのネオフリージアを創ったかもしれないらしいな」
「ええ、そうですね」
「なッ」
「その通りでしょう」
「断言するのかよ!」
「アイファ様は特別ですからね。そのような力があってもおかしくはない」
「そりゃビックリだ。で、どこにいるんだ?」
「解かりません。ですが、今回の『魔人』事件と何か関係があるかもしれませんよ」
「なんだ、知っていたのか」
「ええ。私は常にあなたと共にあるので」
ずっと見守っていたわけか。つか、モロに見られているんだな! それを聞くと、メサイアたちと接触し辛いじゃないかっ。
だが、まあいい。
これで聖女アイファにまた一歩近づいた。
それと聖地アーサーのことも。
「ミクトラン、あと聖地のことだが――」
聞こうとしたその時、通路の方から複数の気配が。なにかこっちに来る。




