第493話 聖女アイファの家
【聖女アイファの家】
グレンの案内もあり、ようやく到着。
邸宅から少し離れた場所。そこにひっそりある民家がそうらしい。
「やっぱりここだったか」
「なんだ、ベル。知っていたのか」
「さっき思い出したんだ」
そういうことか。どうやら、過去の純正フリージア時代に来たことがあったようだ。つまり半年前。その時も存在したんだな。
小屋の扉をノックするグレン。
しばらくすると中から気配が。
誰かいるようだ。
もしかして聖女アイファなのか……?
それとも、フォルか。
扉が開くと、そこには――。
「フォルちゃん!」
誰よりも先にリースが反応し、フォルに抱きついていた。
「リ、リース! 兄様たちも……なぜ、ここに」
激しい動揺を隠し切れないフォル。そりゃ、勝手に抜け出して行けば誰だって心配する。理由も告げずに実家に帰った理由を知りたいね。
「話はゆっくり聞かせてもらうぞ」
「……そ、そうですね。それに、まずは謝罪を。……申し訳ございません」
土下座しそうな勢いで深々と頭を垂れるフォル。今はリースが抱きついている状態だから、ひざまずくことは叶わなかった。
無論、そんな深い謝罪は求めない。
俺はただ理由さえ知れればいいのだ。
それはメサイアも同様だったようで、俺に目配せを送ってきた。
「ちなみに、そこの赤髪の騎士はグレンだ。昔、敵対していたが今は味方だ」
「花の騎士様ですね! ええ、憶えていますよ」
グレンに対しても挨拶を交わすフォル。相変わらず馬鹿丁寧だ。
「そうか、アイファ様の娘とは……フォルトゥナ様のことであったのか」
妙に納得するグレン。
コイツはコイツで何か知っていそうだな。
「おい、グレン。どういうことだ」
「サトル、君たちと会った時はフォルトゥナ様の名声は、今よりも低く……聖女としてもそれ程ではなかった。しかし、今は違う。彼女は各聖地に多くの教会を建てた。知られる存在となった。大聖女と言っても過言ではないだろう」
半年前はそれほどの知名度ではなかったと、グレンはそう言いたいらしい。フォルは、それを聞いてなぜか照れてるし。
「そ、そんなことはありませんよう」
……むぅ。
いや、複雑な気分に陥っている場合ではない。
聖女アイファのことを聞かねば――と、思ったが痺れを切らしたメサイアが前へ。リースからフォルを奪い取るような形で壁ドン。
珍しく目を吊り上げ、静かな怒りを漂わせていた。
「フォル、なぜ勝手に行動したの」
「……あ、姉様……ごめんなさい。どうしても確かめたくて」
「なにを?」
「この“ネオフリージアを創造してしまったのか”それを確認したかったのです」
「――な」
予想外の返答に、俺もみんなも時が止まった。
ネオフリージアを創造した……?
それはつまり、フォルの母親がこのフリージアを再現したということなのか。そんな奇跡みたいな力が本当にあるのか?
そういえば、母親も聖女らしい。
大魔法の類か、それとも。
「しかも、この国の位置する場所は……噂に聞く『魔人サリエリ』の封印があったという、そんな危険地帯なんです!」
「…………! そうだった。ここで以前、戦いが」
メサイアは、過去を思い出したのか半分パニックに陥っていた。
「落ちつけ、メサイア」
「サ、サトル。この国は危険かもしれない。このままでは【死の呪い】が再び――」
言いかけたところでグレンが遮った。急になんだコイツは……って、なんだァ!?
「話の途中すまないが、おいでなすった」
「グレン、あの“空にいるヤツ”はなんだ……」
「アレか。アレは死神以上にタチの悪い存在……『魔人』だ。魔人サリエリだ」
アイツが……!




