第5話 料理スキル - 聖女が落ちていたから拾ってみた -
外の【草原フィールド Lv.50】に出た。
【イノシシの肉】がたくさん転がっている。どんだけ倒しちゃったんだよ、俺。
ついでに、人間も転がっていた。
……またか。
「まあ……あの人間は食えないよな。イノシシの肉一択だなぁ」
俺はそこらじゅうに散乱している【イノシシの肉】を【オートスキル】の『一括回収』でアイテムを回収した。しまくった。
……まとめて一括回収っと!
クッソ便利だ。この『回収スキル』は今後の狩りでも必要不可欠な存在だな。いちいち手で拾っていたら面倒だし、日も暮れてしまう。効率重視サイコー! 面倒臭がりの俺には、神スキルである。
「さて、小屋に戻ろう」
「ま…………待ちなさい!」
ゲッ!
転がっていた人間に肩を掴まれた。
目が据わってる。怖いなぁもう。
そいつは、神々しい聖職者の恰好をしていた。ああいうの、シスター服っていうんだっけ。似合ってるし、可愛いな。
でもって、また少女。
またか。またなのか!
「キミもあのイノシシに襲われたクチか」
「い、いえ……。わたくしは『フォーチュン』に導かれてそれで……気づいたらこんなところに。それより、お腹空きましたのです。なんでもいいので食べ物を分けて戴けませんか……素敵なオジ様」
ぐ~~~っと、少女のお腹から間抜けな音がなった。
す、素敵なオジ様。
オジ様なんて初めて言われたよ。でも、出来ればそこは素敵なお兄さんにして欲しいけどな。でも、不思議と悪い気はしなかった。
「イノシシの肉しかないが」
「そ、それでイイので……戴けませんでしょうか!」
「そのままは食えないぞ。お腹壊すぞ、生肉だし。ちゃんと調理しないとな」
「わ、わたくし、料理はすっごく得意なのですよ! これでも【料理スキル】はカンストしているんです! お願いですから雇って下さい。アテがないんです~!!」
オヨオヨ泣き崩れるプリースト。
なんなんだコイツは。
てか、コイツの瞳……右目が青で、左目が桃色だ。オッドアイってヤツか。
◆
小屋に三人の少女と俺。
さすがにちょっと窮屈になってきた。狭い。けど、だいぶ華やかにもなった気がする!
「それ、誰?」
メサイアがジトっとした目でこちらを見ている。
誘拐でもしてきたの? なんて疑いの眼差しが向けられているが、そんなワケはないので、ここは断固として否定しておかないと、誤解を招いてしまいそうだ。なので、俺は正直に――
「直ぐそこで拾った。一応、プリーストの成りをしとるが、聖女でもあるらしいぞ。名前は知らん」
「自己紹介が遅れました……わたくしは『フォルトゥナ』です! 長いのでどうか、フォルとお呼び下さいまし」
「このフォルは【料理スキル】をカンストしているらしいぞ。ちょうどココに【イノシシの肉】があるし、調理してもらおう」
「そうね。私は【建築スキル】しか取り柄がないし、リースも【掃除スキル】しか取り柄がないし。サトル、あんたは【オートスキル】だけだし、あと寝言多いし」
充分役に立ってるだろ俺は。
……って、寝言多いの俺!?
「しかし困ったな。調理器具がないぞ」
「あります! 全部持っていますです!」
フォルが調理器具を取り出しまくった。
いったい、どこから取り出した!? マジックショーかよ。
あの包丁とかフライパンは……隠し持っていたのか? 暗器の武器……?
「じゃ、イノシシの肉は頼んだ。俺はダリ~から寝る。あとはよろしく」
「寝させないわよ。サトル、あんたは『小屋拡張』どーするか決めるの」
メサイアが足で小突いてきて邪魔してくる。
ん? なんだって『小屋拡張』だぁ?
「小屋を広くできるのか? メサイア」
「そ。私の【建築スキル】で小屋をパワーアップさせるの。だって、気づいたら四人もいるじゃないこの小屋。さすがに狭苦しいわ。だから、広くするの」
「ああ、それには大賛成だ。確かに、四人ともなると中々に狭いな。寝れなくはないが、快適に過ごすなら俺の……いや、各自の部屋も欲しいな」
「それなら増築するべきね。実はね、たくさんの材料さえあれば、家とかお屋敷、努力次第ではお城にも出来るわ。広い方が生活もしやすくなるし、守りも強固になるから。モンスターから身を守れるし、改築次第では『籠城』とか出来るわよ~」
「つまり、俺だけの『マイホーム』を作れるってことか」
そりゃ、すごい!
しかも『籠城』も出来るとか、それはラクチンでいいな。
「そ。ただ【オートスキル】でモンスター倒してるのも退屈でしょ」
「いいね、それ。しかも、小屋の拡張をメサイアがやってくれるなら、俺は考えるだけでいいしな」
「でしょでしょ? それに、掃除と料理はもう優秀な人材がいて困らないし、案外快適な生活が送れるんじゃないかしら!」
サムズアップして、キメるメサイア。
この女神、たまにマトモである。
「オーケー。乗った。ということで、リースもフォルもいいか?」
「は~い」「はいです!」
ふたりとも手を挙げ、アッサリ返事してくれた。
こうなりゃ、俺だけの家を作るっきゃないでしょう!
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