第485話 復活した『花の都』
俺はまさか過去に飛んだのか?
「……やっと見つけましたよ、サトル」
「!?」
女性の声がして俺は振り向いた。そこに立っていたのは綺麗な青髪をしたドレス姿の貴族。多分、どこかのご令嬢っぽい。
ん、なんだか見たことある顔だな。
「もしかして憶えていないのですか?」
「す、すまん。貴女ほど美しい人なら忘れないんだが……」
「我が名は『チャルチ・ウィト・リクエ』。氷の騎士ですよ」
「氷の騎士! チャルチ、お前なのか!」
「ええ。久しぶりですね」
おいおい、以前とはまるで違うじゃないか! 髪型とか! てか、普通の格好していると、こんなに美人で可愛かったのかよ……。
前は騎士の姿しか見ていなかったからな。
ということは、過去に飛んだわけではなさそうだな。
「教えてくれ、チャルチ。ここは『花の都』なのか……?」
「そうですよ」
断言するチャルチ。って、マジかよ……。
花の都フリージアは、俺がいない間に消滅して現在は『レメディオス』になったはずだが、まだあったんだな。
「なんで残っているんだ?」
「世界ギルド・フリージアの力ですよ。彼らがかつての都を懐かしみ、復建したいと望んだ結果……ネオフリージアが誕生しました」
ネオフリージア、つまり“新フリージア”ってことか。
ここまで完全再現して作ってしまうとはな……いったい、誰がここまで。
てか、世界ギルド・フリージアにそんな力があったとはな。
そういえば随分と連絡を取っていなかった。
面倒臭くて、今の世界ギルドのマスターも誰かのか全く把握していなかったぜ……。
「そうだったのか。レメディオスとは近いのか?」
「ええ。レメディオスと聖地コンスタンティンの間に位置します。ちなみに、カルミア女王の公認なのでご安心ください」
まてまて、女王はそんなこと一言も言っていなかったけどな。それとも、俺たちが聖地を目指している間にここまで再現したのか。だとしたら凄すぎるけどな。
「まあいい。聖地アーサーへ行きたかったんだけどな」
「それが目的なのですね」
「そうだ。俺はゲートからここへ来た」
「そういうことでしたか。突然、あなたの姿が見えたのでおかしいと思ったのです」
チャルチは『聖者祭』に参加する為に、この通路を歩いていたらしい。――って、『聖者祭』もあるのかよ。懐かしいな!
聖者の試練はないだろうけど。
「また遊びに来るさ。俺はいったんカムランへ戻るよ」
「ほう。エルフの郷カムランですか! 辿り着くのが難しいと聞きましたが……凄いですね」
「いろいろあってな。……ああ、そうだ。グレンを探しているんだが」
「グレンですか。彼はアーカム家の跡取りとして現在、お見合いをしているようです。妹のアグニ様は呆れているようですが」
二人ともこのネオフリージアで住んでいるんだな。ということは、シベリウスをここへ飛ばしてやれば会わせてやれるじゃないか!
いいね。聖地アーサーは行けなかったが、結果的にゲートは役に立った。
「情報をありがとう、チャルチ。じゃ、また近いうちに!」
「久しぶりに楽しかったです。サトル、いつか結婚してくださいね」
そや、会った時にも求婚されたな!
つっても半年前くらいの話だけど。
とにかく、カムランへ戻らねばな。
俺は再びゲートへ!




