第483話 錬金術師と契約
当初こそ油断していたが、今は順調に狩りが進んでいた。
メサイアの補助スキル。
リースの大魔法スキル。
そして、フォルの支援スキル。
おかげでアイアンゴーレムを快適に狩ることができた。
ドロップアイテム『鉄』もかなり入手。
重量があるアイテムなので、そろそろ所持限界だ。
「お、重いわ……サトル。もうみんな鉄を持てないって」
「すまん。俺も限界値だ。そろそろカムランへ戻るか」
「そうしましょ」
ベイドン洞窟ダンジョンを脱出。
外へ出てそのままカムランへ戻った。
【エルフの郷・カムラン】
ルクルのポーション屋へ帰還し、俺たちはまずアイテムの清算を行った。
鉄×3000個、アイアンシールド×4個、鉄くず×870個、鉄鉱石×230個、謎のチューブ×120個
――収集品はこんなところだ。
鉄と鉄鉱石以外は売却。
340,000セルを入手。
なかなか金になったな。これでしばらくは何とかなるな。
「さっそくカジノで……」
メサイアの目は『セル』になっていた。
まてまて、また破産する気か!?
「却下だ!」
「ちぇー」
このギャンブル中毒女神がっ!
「サトルさーん、あたしお風呂へ行きたいです」
「わたくしもわたくしもー!」
二人とも汗を流したいと温泉を希望していた。
そうだな、働きすぎた。重労働後のこの疲労を癒しにいきますか。もちろん混浴でなっ。
また、旅館カルンウェナンを利用しよう。
――って、そうだ。
忘れていたが、俺を殺した魔人サリエリ。ソイツも何とかしないとな。
また殺されては敵わん。
しかしまずは温泉を楽しもうではないか。
「よし、温泉行くか」
「私も行くわ」
今回、ベルはいないが――まだ帰って来ていないらしい。アイツのことだ、そのうちヒョッコリ現れるだろう。
魔人サリエリを警戒しつつも、俺たちはカルンウェナンへ。
今日は平和的に混浴を果たし、最高の一日を終えた。
その帰りに自販機の修理を完了させ、無事に元通り。
再び『おでん缶』の販売を開始した。
「よーし、自販機は復活した! 完璧だな、メサイア」
「ふふーん。もう構造も理解したし、一発よ、一発」
ドヤ顔を決めるメサイア。
エルフの不良共に破壊された自販機の修理を終えた。
建築スキルで一瞬とはな。
「さすがだな!」
「鉄も余るほど入手したからね。これで破壊されも直ぐに直せるわ」
「缶の製造も頼むぞ」
「そうね。いっぱい作るわ! お金稼いでカジノよっ」
「賭け事かよっ。少しならいいけどさ、ホドホドにしておけよ」
大丈夫よ、とメサイアは謎の自信をもっていた。まてまて、負けたばかりだろうに。痛い目見ているはずなのになぁ。本当にギャンブル中毒なのかもしれないな。
そのうち依存症にならなきゃいいが。
そうして夜も更け――深夜。
お風呂上りのルクルが俺に話しかけてきた。
「あ、サトルさん」
「よう、ルクル。今日もポーション屋、忙しそうだったな」
「はい。おかげ様で大盛況で、毎日のようにお客様が訪れてくれます。リピーターが多くて嬉しいですよ」
笑顔でルクルは喜んでいた。……お、おぉ。男の子なのに可愛いやつだな。
エルフということもあって余計に。
もし少女だったのなら、リースといい勝負だぞ。
「ルクルは凄いな。ひとりでこのお店を経営しているなんて」
「いえいえ。偉大な錬金術師であるお爺様の遺産なんです」
「そういうことか。立派な家柄なんだな」
「そんなことないですよ~。サトルさんたちこそ、凄い力を持っていますよね。オートスキル……でしたっけ」
「そうだ。俺は自動で攻撃する能力を持っている。メサイアは主に建築スキル、リースは覚醒掃除スキル、フォルは料理スキルってところだな」
「皆さん凄いです!」
特異なパーティといえば、そうかもな。
正直、深く考えたこともないけど。
「というルクルも凄い力を持っているんだろ? ポーション関係とか」
「そ、そうですね。僕は一応、錬金術師なので……それくらいですけど」
「へえ、エルフの錬金術師か」
「よかったら、サトルさんたち用にポーションを作りましょうか?」
「いいのかい?」
「はいっ。いろいろお世話になっているので!」
「じゃあ、俺たち用じゃなくて販売用を頼むよ」
「なるほど! では、その案で専属契約を結びましょう」
「おぉ、助かるよ」
今は少しでも稼ぎたいからな。
ルクルの手も借りれるのなら、これはデカイぞ。
収益を上げ、そして次は聖地へ向かうための特殊転移を探る。いや、同時進行だな。
それと魔人サリエリ。
俺を殺した魔人。
一体、どんな奴か解らんが、俺を倒すほどだ……強いことは確かだ。だが、なぜ俺を狙った……?
本来なら女神であるメサイアを狙うはずだ。なのに俺を殺した。
魔人のことも探らねばな。
オルクス、プルート、モルスたちとも会いたいところだ。アイツ等なら詳しいことを知っているかもしれない。
このエルフ郷カムランのお世話になる日々はまだ続きそうだな――。




