第479話 ポーション屋生活
自販機の修理はメサイアに任せた――が、材料がまた減りそうだ。とにかく『鉄』が必要だ。
鉄の材料をドロップするモンスターをもっと狩らねばな。
でなければ、おでん缶の『缶』も製造できない。
それでは儲けられずに赤字だけが残ってしまう。まずいぞ。
俺たちは早く資金を貯めて、聖地への転移方法も見つけ出さねばならない。いつまでもカムランでスローライフしている場合ではないぞ。
ポーション屋に到着すると、ベルの姿はまだなかった。さすがにそう簡単に、特殊な転移方法は見つからないか。
「温泉行ってくるわ」
メサイアは、リースやフォルを連れて風呂へ。
俺も行こうかな――いや、ダメだ。
鉄を確保しなければ。
残念だが、俺はソロでカムラン周辺のフィールドやダンジョンを巡る……いや、まてよ。無理する必要もないか。
てか一人とか寂しいし、つまらん!
今、がんばる必要はない。
そうだ。無理をしても仕方ないのさ。
明日、またやればいいのだ。仲間と共にな。
【翌日】
良い匂いで目を覚ました俺。
ルクルの家に泊まったことを思い出した。というか、居心地が良すぎるんだよな。
最近はリビングで寝てばかりだ。
メサイアたちも同様に身を寄せ合っていた。
これでは小屋生活と変わらんな。
しかし、この食欲そそる良い匂い。お、これはもしかして――。
「おはようございます、兄様」
「やっぱり、フォルか。朝飯を?」
「そうです。早起きして人数分を作っているんですよ~」
さすが料理大好き聖女。
こんな朝早くから作ってくれているとはな。
まあおかげで普段は料理に困らないし、美味しいものを食べられるんだから幸せだ。
しばらくして全員起床。
ルクルも含め、フォルの作ってくれた豪華朝食をいただいた。
スクランブルエッグにベーコン、そして何故かアスパラガス。
どれも味付けが最高の塩梅であり、もれなく全員の胃袋を幸せにした。
「さすがフォルちゃんです。いつもありがとう」
「お褒めに戴き光栄ですよ、リース。朝食などは特に愛情をこめておりますので」
ハートを添えて俺を見つめるフォル。事実美味いんだけどね。これをも売れないかなぁなどと一瞬思ってしまう俺。いや、それはダメだ。
というか、スクランブルエッグ缶とか無理だな。数日で腐りそうだ。
やはり、出来ても『おでん』が限界だろう。
――って、そうだ!
「みんな、鉄が必要なんだ。今日はダンジョンに付き合ってくれるとありがたい」
俺がそう提案すると、メサイアは「寝るから無理」とふざけたことを抜かした。コイツは強制的に連れていく。
「缶を作るのに必要なんですよね」
「そうだ、リース。一緒にアイアンゴーレムを狩って欲しい」
「解かりました。あたしの大魔法で一掃しましょう!」
心強い。リースがいるなら、効率がもっと上がるし。
あとはフォルだが「一生ついていきます!」のひとつ返事。
「僕はお店があるので」
「大丈夫だよ、ルクル。部屋を貸してくれているだけでも感謝している」
「いえいえ。それくらいしかできないので」
おかげで野宿せずに済んでいる。
いざとなればメサイアの建築スキルで建てて貰えばいいんだが、材料のほとんどを自販機計画に回してしまっているからな。
あとはベルだが、まだ姿がない。
まさか帰ってこないとは……少し心配だが、アイツなら大丈夫だろう。そのうち、ひょこっと姿を現すに違いない。
というわけで、今日はベルを除いたメンバーで鉄を大量確保しにいく。




