第478話 女神のウルトラ精錬
「これを使うがいいッ!」
シベリウスが懐から“なにか”を取り出し、こちらに投げてきた。俺はそれをキャッチした。
こ、この黒い塊は!!
「エクサニウム!」
「使うがいい、サトル」
「いいのか! いや、遠慮なく貰うけど!」
「構わん。馬鹿弟子が迷惑を掛けたらしいからな」
なんて良いやつだ! 俺はシベリウスのことを誤解していたかもしれない。
左腕を使い、直ぐにメサイアに投げて手渡した。
「こ、これなら……!」
「お前の製錬スキルでスパイラルドの『糸』を破壊してくれ!」
「ま、任せて!」
これで勝った!
過剰精錬をすれば、この糸は確率によって跡形もなく消える――はず。成功しちまったら強化されるだろうけどな!
「な、なにを!!」
状況を掴めていないスパイラルドは、俺に対する攻撃を強めていた。かつ、メサイアに糸を伸ばした。
スパイラルドの野郎!!
けどな、俺はメサイアを信じている。
アイツならきっと糸をぶっ潰してくれるはず!
「精錬スキル発動! エクサニウムを一個消費して製錬……!」
結果は……?
【精錬成功!! スパイラルドのブラッドサッカーが +1 となりました】
って、成功してんじゃねええかああああ!!
「ちょ、メサイア!!」
「ど、どうして! てか、糸がこっちに向かってきて……いやああああッ!」
クソ、まさか精錬が成功しちまうとはな!
てか『+1』なら安全圏か。
確か『+5』までは成功確率が100%だ。
製錬には安全圏が存在する。
それはサクリファイスオンラインも同じだ。
「ならば、これを使うがよい!!」
またアイテムを投げるシベリウス。今度はメサイアに直接投げた。なんとかキャッチしていたが、アレは……?」
「こ、これはウルトラ精錬用の『エクサダイト』じゃない!」
エクサダイトか。懐かしい精錬アイテムだな。確か、扱い方を間違えると大爆発するんだよな。
まさか、シベリウスが所持しているとは。
カムランでは、あふれたアイテムなのか?
「それなら一気に過剰精錬できるはず!」
「ええ、いけるわ! シベリウスだっけ。ありがと! これで糸を破壊できる!」
口元を吊り上げ、自信に溢れるメサイアは再び精錬スキルを発動。エクサダイトを消費して糸を製錬。
カンカンと金属音がしまくって――ついに!
『ボキッ!!』
糸ならぬ音がして、それが破壊音であることを俺は見逃さなかった。
「壊れたな、糸が!」
「ぐ、ぬぅぅぅ!!」
焦りまくるスパイラルドは、再び魔力を込めようとしていた。しかし、ただの糸となった今がチャンス。
俺は任意でオートスキルを発動。
この合わせ技でヤツを叩きのめしてやるッ!
「覚醒煉獄とヒドゥンクレバス!!」
「――なッ。うぎゃあああああああああああ…………!!」
炎と氷が混ざり合い、それは嵐となった。
スパイラルドを渦の中に閉じ込められ、洗濯機のように超回転。地獄の様相だった。
やがて竜巻となって宙に投げ出されていく。高速回転してぶっ飛んでいくヤツは、教会の壁よりも高く飛び、鐘に激突。
『ごおおおおおおぉぉぉぉぉん…………!』
祝福のような鐘の音が響く。
ひゅる~と落下して地面へ激突していた。
「よし、スパイラルドを撃破!」
「やったわね、サトル!」
「いや、お前のおかげだよ、メサイア」
「わ、わたしは何も……」
照れてもじもじするメサイアは、女神級に可愛かった。いや、女神なんだけどね。
そんな安堵の中、フォルとリースも糸から解放されて駆け寄ってくる。いや、俺に抱きついてきた。
「兄様ぁん♪」
「サトルさん、怖かったです~…!」
うんうん、二人とも怖かったよな
などと、やっているとメサイアが殺意の波動をこちらに向けていた。……あれ、今だけ死神になってません!?
「…………」
「ま、まてまて。落ち着け、メサイア! 今日のMVPは間違いなくお前だ」
「……まあいいわ。それより、ルクルも助けなきゃね」
そうだ。彼も磔にされていたんだった。
ルクルが倒れている場所へ向かい、救出。目をぐるぐる回して気絶していた。……良かった、無事だな。
フォルのグロリアスヒールで全員が治癒。
俺の深い傷もあっさりと癒えてしまった。さすが聖女パワー。
「シベリウスもありがとな」
「構わんさ。それより、私は倒れている三人の暴漢を逮捕する」
「騎士団とかに連れていくのか?」
「うむ。こやつ等はしばらく檻の中であろう」
なら、処理はシベリウスに任せよう。
自販機も修理しなきゃならないしな。
それに、ルクルを背負っていかないと。
「メサイア、俺はルクルを届ける」
「わたしは自販機を直せばいいのね」
「頼む。もっと売り上げて金を作るぞ」
「解かったわ。おでんの方もよろしく」
そうだな、フォルにはまた調理してもらわないと。
俺の視線に気づいたのか、腕に抱きついてきて「任せてくださいまし」と瞳を星のように輝かせていた。
本当に感謝しかない。ありがたすぎるねっ!
一旦、ポーション屋へ帰還だ!




