第474話 女神と聖女の力でおでんを作りまくれ!
メサイアに『缶』を製造してもらった。
建築スキルとは実に便利である。
家とか容器まで大抵の物体なら作れてしまうのだから。
ひとまず、鉄を100個消費してもらい――『おでん用の缶』を100個製造。
部屋の中が缶で溢れ、踏み場がなくなった。
……しまった、一括製造だったか。
「ちょ、メサイア!」
「ご、ごめーん! スペースを考えていなかったわ……! サトル、どうしよう……」
「と、言ってもな」
これが1000個だったら、もっと大変なことになっていただろうな。100個なので埋もれることはなかったが。
「わぁ! なんです、これ!?」
部屋にルクルがやってきて驚いていた。
「すまん。缶を作ったら一気に出来てしまったんだ」
「そうなんですね。……あ、では木箱をお使い下さい」
別室にポーションを収納する為の木箱があるらしい。それを借りることにした。
ルクルのおかげで『缶』を箱に納めることができた。彼が商人でよかったな。
あとはフォルに美味しいおでんを作ってもらい、それを『缶』に詰めていく。
その作業を俺とリースで担当することに。
「ベル、お前は?」
「わたしは聖地へ行く方法を模索するよ」
「そうだったな。秘術があるんだっけ――転移の」
「そそ。調べものは得意だからさ、任せてよ」
しかし、今日はもう日が沈む。
今晩はルクルの家のお世話になることにした。
シベリウスも一泊すると言い出したが、俺が追い出した。
「なぜだ、サトル」
「これ以上は狭苦しいし、こっちは女子も多いんだ。カンベンしてくれ」
「ちぇー。美しいおなごと酒を楽しみたいと思ったのだがな」
やはり不純な動機か!
阻止しておいて正解だったな。
「帰ってくれ。グレンやアグニのことはまた後日話そう」
「そうだな。あの二人のことを詳しくな」
急に真面目な表情と口調を見せるシベリウス。マントを翻し、真っ直ぐ帰っていく。
俺はポーション屋へ戻って、メサイア達と合流。
空いている部屋を借りて一夜を明かした。
――翌日。
早朝から『おでん』の製造がはじまった。
フォルは料理スキルで次々に作り上げ、缶に納めていく。
「もうレシピは極めました! あとは作って詰めるだけですよ、兄様」
「すげぇな、フォル! おでんをここまで極めるとは……ハッキリ言って感服だ」
「もっと褒めてくださいまし! 嬉しいので!」
せっせと『おでん』を作るフォル。
物凄いスピード感で作業を進めている。トンデモナイ闘志である。
もう20個、30個と作り終えた。
なのに、フォルは疲れひとつ見せていない。
さすが体力オバケ。
スタミナという概念がないのかもしれん。
お昼前には80個を超え、そして100個も見えてきた。
「あとちょっとだよ、フォルちゃん!」
「応援ありがとう、リース。わたくし、最後までやり切りますからね!」
額に汗を滲ませ、ラストランを駆けるフォル。ついに一桁台だ。
5、4、3、2、ラスト……!!
「お疲れ! フォル!」
「お疲れ様です! フォルちゃん!」
俺もリースもフォルを褒めたたえた。
お店の表でポーション屋を営むルクルも声を上げた。
「おでん缶の完成おめでとうございます!」
忙しいのに、ありがたいね。
フォルは照れに照れまくって、頬を深紅に染め上げていた。
「ありがとうな、フォル。これで『おでん缶』が完成した。お前のおかげだ」
「いえいえ! みんなの力を合わせた結果ですよ~」
「ああ。でも、調理してくれたのはフォルだからな」
「……兄様。わたくし泣いてしまいそうですっ」
感激するフォルは、俺に飛びついて“柔らかいもの”を無条件で押し付けてきた。……うーむ。これは……。
油断しているとリースも飛びついてきた。
「あ、あたしだってフォルちゃんのこと、凄いと思ってます!」
だからって俺をサンドしなくても。
おかげで前も後ろも幸せ~~~~~~!
しばらくはこうしていよう。
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ついに完成した100個の『おでん缶』を、さっそくメサイアの作ってくれた自販機へ投入。
リースの万能魔法によって電源が入っているし、セキュリティも十分だ。破壊することや、盗むことは不可能に近い。
自販機の扉を開け、商品を補充していく。
「――ふぅ、こんな感じか」
「不思議な構造ですね~」
興味津々の子供のような目で自販機を眺めるリース。可愛すぎる……。
「お金、つまりセルを投入すると『おでん缶』を購入できる」
「おひとつ500セルなんですね!」
「そうだ。だから、全部売れれば五万だ。その間に追加で製造しまくる」
「なるほど。続けていけば利益を増やせる、というわけですね」
「その通り。継続が大事だ」
100個で終わるつもりはない。目標は10000個以上。
しばらくはメサイアとフォルの力を借りることになるな。
無理せず製造していく!




