第473話 強面エルフは花の騎士
エルフの騎士は、俺の背後をついてきた。
何なんだよ、この人は。
見た目は若いが、何百年と生きているエルフなんだろうなぁ。
しかし、まさかあのグレンの師匠だったとは。
ルクルのポーション屋に辿り着き、中へ。
相変わらず繁盛しているようで、ルクルは必死に接客していた。一人で大変そうだ。
「お、おかえりなさい、サトルさん!」
「よう、ルクル」
「そちらの騎士さんは……?」
「さあ? 勝手についてきた」
「え……」
困惑するルクル。ホント、男の子に思えないな。
だが、男だ!
――ではなくて、どうすっかなぁ……この騎士。
「お邪魔する」
短く挨拶をする騎士は、変わらず俺の背後を。
まあいい。
気にせずメサイアを運び、リビングへ
そこにはフォルにリース、ベルの姿があった。
みんな、まだ『おでん』を食っていた。人気だな。
「あ、おかえりなさーい! 兄様!」
「おう、フォル。メサイアを連れてきた」
「姉様! ぐったりじゃないですかー! ヒールします?」
「いや、空腹なだけだ」
「あらま。では、おでんをどうぞ!」
フォルは、メサイアと――騎士の分も振舞った。わざわざ見知らぬエルフの分まで用意するとは、さすが聖女様。
「と、ところで……その方は誰ですか?」
リースは怖がっていた。
同族のエルフとはいえ、相手は男。
しかも、中々の強面系面構えだし……。
「名前不明のエルフの騎士だ。グレン・アーカムの師匠ってことくらいしか」
「へ、へえ……」
やっぱり怖がってるな、リース。
「そうだった。まだ名乗っていなかったな。私の名はシベリウスだ。かつて『花の都フリージア』の花の騎士であった」
シベリウス、なかなかカッコイイ名前だな――って、まてぇ!?
花の都フリージアの花の騎士ィ?
ということは、ミクトランの騎士だったのかよ。
「あ~、少し容姿が変わっていたから気づかなかったよ。シベリウスじゃん」
と、親しげに話しかけるベル。
そうか、コイツは花の都フリージアの聖者様だったな。
最初の頃はミクトランの指示であっちこっち動いていたらしい。
「む? そこのビキニアーマーの姉ちゃん。私のことを知っているのか?」
「忘れちゃったの。わたしだよ、わたし」
「ん~? こんなエロ姉ちゃん忘れるはずがないのだが」
「ハーデンベルギアだよ」
そうベルが名乗ると、シベリウスは過剰なまでにぶったまげていた。
「ぬわぁにぃいいいいいい!? ベル……ベルなのか!?」
「やっと思い出したの」
「お主、容姿とか体型とかほとんど変わらんではないか!!」
「それで気づかないとかアホなの?」
ベルはため息を吐いて呆れていた。
氷のような瞳をシベリウスに向けていた。
そんな彼はなぜか悶絶していた。……うぉい!
「……聖者であるお主がなぜ、カムランに?」
「だって花の都は消滅しちゃって、今はレメディオスだし~。ミクトランも消えちゃったもん」
「なんと……そうであったか。王はお隠れに……」
残念そうにするシベリウス。
そうか、エルフって時間だとか情勢のことをあんまり気にしないタイプだった。リースもそんな感じだからな。
だから、ベルのことも忘れていたんだろうな。
ベルの方の話は置いておき、俺はメサイアの方へ振り向いた。
「……はぐはぐはぐはぐっ」
おでん、バクバク食ってるし!
「美味いか?」
「めちゃくちゃ美味しいわね! これなら売れるわ!」
「フォルを褒めてやってくれ」
「さすがフォルね! 最強の聖女なだけあるわ!」
メサイアがそう褒めるとフォルは、ワーイワーイと万歳しながらとびきり喜んでいた。
そこまで喜ぶとは!
いやだけど、実際この味付けなら問題ないぞ。
保存期間も長いようだし、保存食とても携帯食としても完璧だ。
「あとは缶を作って詰めるだけだ」
「そして自販機で売ると!」
「そうだ、メサイア。そうすりゃ、ガッポガッポ儲かって贅沢できるぞ! あと、転移の手がかりも見つかりやすくなるはず!」
「死に物狂いでがんばった甲斐はあったわけね」
感無量だとメサイアは、やり切った感を出しているが――まだだぞ!?
これからがスタートなのである。
「メサイアさん。煮卵も出汁が効いていて美味しいですよ!」
リースは、メサイアに煮卵を提供。
「ありがと、リース。……うまッ! わぁ~、幸せ。労働の後のおでんって最高ね!」
「半熟卵もありますよっ」
「わあああ! ありがとう、リースっ」
幸せそうに食いやがって。
俺も食べようっと――!




