第468話 女神のとあるお金稼ぎ
魔人サリエリのことをフォルとリースにも共有。
二人とも、その怪物のことを聞いて青ざめていた。
そういや、みんなは魔人を見たんだよな。
俺は殺されて見れなかったが……いったい、どんなヤツなんだろうな。
「姿形を教えてくれ、フォル」
「ん~…あれをなんと表現してよいやらです……」
非常に難しそうな表情で考え込むフォル。こうしていれば美少女でしかない。
「異形だったのか?」
「いえ、アレは人型でした」
「ほう」
「――ですが、空高く飛んでいたので……正体不明です!」
クソ真面目な顔、それと真面目な口調でフォルはそう言った。って、そりゃ単に見えなかっただけだろうが!
「解からんってことか」
「つまりそういうことです!」
メサイアやベル、リースも同じ感想だった。意味ねえ~~~!
誰か見た者はいないのだろうか。
そういえば、あの露天風呂には他の女性エルフが複数人いたな。あの中で目撃した者は……いないよなぁ。多分、見えていなかったってことだ。
「なあ、メサイア。これからどうするんだ?」
「うーん、私たちの目的は『聖地アーサー』よ。目指すしかないんじゃない?」
「そうだな。それが一番だ」
再びアーサー達と再会し、聖地復興を目指す。
世界が正しい方向へ向かっていることを知らせる。それが旅の目的だったはず。
しかし……“魔人”の登場とはな。
世界とは実に理不尽に出来ている。
そう簡単には平和にさせてくれないな。
「理くん」
「どうした、ベル」
「この異世界サクリファイスは“生贄”という理によって成り立っているんだよ」
「突然なんだよ。魔人と関係あるのか?」
「おおありだよ。そのうち解かるけど、備えておいて損はない」
「ふむぅ……」
回復アイテムなどの消耗品を買い込んでおいた方がいいかもしれんな。今回ばかりは持ち前の魔力だけは足りんかもしれん。
旅館カルンウェナンを去り、ポーション屋へ戻った。
扉を開けるとルクルが忙しそうに接客をしていた。繁盛しているんだな。
「……あ、サトルさん!」
「ただいま。ルクル、大変そうだな」
「はいっ。サトルさんたちのおかげで有名になったんです!」
どうやら、俺たちがポウラを倒すためにルクルのポーション屋を拠点にしたことが噂になったようだ。
てか、よく見ると奥にはスイカの姿も。
「こんにちは、サトルさん」
「おう、スイカ。まさかルクルのお店にいたとはね」
「しばらくカムランに滞在しようかと。エルフの郷には珍しい魔法もありますからね」
「そういうことね」
という俺たちも聖地へ向かう為の秘術を探しているのだけどね。見つからんけど。
「あ、あたし手伝います!」
リースが名乗りを上げ、接客へ。
おぉ、マジか。
普段は働きたくない~と怠けているリースが!
少しは成長しているのかもしれんな。
「ルクルのポーションって回復力あるからね」
と、メサイアは棚に陳列されている試験管サイズのポーション瓶を摘まんで眺めていた。黄緑色の液体が揺れていた。
「メサイアも働いてみたらどうだ?」
「えぇ……」
めちゃくちゃ嫌そうな顔だな。
「気持ちは解かるけどな。俺、その昔は死ぬほどバリバリ働いていたからな。毎日が嫌で嫌で仕方がなかった」
「……あぁ、母様から聞いたわ。転生前の話ね。労働とか面倒臭いもん。働かず楽して稼ぎたい」
まるで俺の気持ちを代弁するかのようにメサイアは言う。マジで解かる。今でこそ異世界で活動しているから、そんなに気にならないが。
この世界ならレアアイテムを入手して売ればいいだけの話。楽でいい。
「やれやれ。手持ちがないから、久しぶりにクエストでもするか」
「そうだったのね。だから働けと」
「そうだよ、メサイア。この頃、戦闘続きだったろ。もう金がないんだ」
「それを早く言いなさいよ」
仕方ないわね~とため息を吐くメサイアは、フォルとベルを招集。これから受ける“クエスト”について話した。いや、これはたぶん、クエストではない!
「え、姉様、なんです?」
「なんだい、シア」
ニヤリと笑うメサイアは、なにか企んでいた。……なんだよ、その笑み。嫌な予感しかしないぞ。
まさかギャンブルじゃなかろうな?




