第465話 エルフの郷の混浴温泉
エルフの郷カムランの丘にある“旅館カルンウェナン”に温泉があるという。
てか、旅館があるのかよ。
メサイア達と共に丘へ向かった。
ルクルのポーション屋から歩いて十五分の場所にそれはあった。
「へえ、本物の旅館だねえ~」
懐かしさをと共に感想を漏らすベル。
俺としても、このいかにもな旅館にはノスタルジックな気持ちになったね。
建物の中に入ると受け付けがあった。
温泉利用の場合は、別の出入り口があるらしく、そっちへ。
少し歩くと番台があった。
あんのかよ、この異世界にも!
「いらっしゃいませ~。入浴料は一名様につき1,000セルとなります~」
若い女性エルフの番台さんが笑顔で出迎えてくれた。へえ、入浴料は良心的だな。
「サトル。全員分よろしく」
「解かってるよ、メサイア」
少ない所持金で支払いを済ませた。
「では、このままお進みください~。あ、ちなみに当旅館の温泉は“混浴”ですので、予めご了承くださいませ~」
ニコニコスマイルの番台さんは、爽やかな口調で案内を進めてくれた。
おぉ!!
やっぱり混浴なんだ。
きたああああああああああ…………!!
心の中でくす玉が開く俺。
よし。よしよしよしッ!!
「あ、兄様と混浴……うふふ」
ヘンタイ聖女のフォルは期待しとるようだった。ですよねー…。
「あわわ。やっぱり混浴なんですね……恥ずかしいです」
顔を真っ赤にするリースはオロオロしていた。可愛い。
「参ったね。理くんと混浴か~…」
まんざらでもなさそうな表情のベル。どうやら嫌なワケではないらしい。
「ちょ、ちょっと! どうして、みんなそんな乗り気なのよ!」
パーティの中で一番顔を赤くしているメサイアは、明らかに意識していた。ボスモンスターと遭遇した時のような凄い慌てようだ。
という俺も心臓バクバクで今にも口から飛び出そうだった。
こんな美少女たちと混浴だぜ?
鼻血の在庫がなくなる前に心停止だぜ。
料金を支払った以上は、通路を進むしかない。いや、進むね、俺は!
脱衣所に到着。
先に温泉へ入れとメサイアがしつこいので、俺は先陣を切った。服を脱ぎ捨てて温泉へ。
扉を開けると、そこは――。
「ここの温泉最高だよね~」「うん、お肌がツヤツヤになる」「やっぱり、この温泉が一番だね」「うーん、気持ちい」「最高っ」
お、
お、
おおおおおおおおおおおお~~~!!
若い女性エルフが……ひぃ、ふぅ、みぃ……七人はいるじゃないか! しかも、全員可愛い。こりゃ飛び込むしか!(※温泉は飛び込んではいけません)
ジャンプしようとした瞬間、俺は視界を失った。
え、
あれ、なんで急に真っ黒に!?
「だめだめ、だめです!!」
「ん、この超絶可愛い声はリースか」
そうか。両手で俺の目を隠したんだな。
「はいっ。あたしです。サトルさんは他の女の子の裸見ちゃだめなんです!!」
「え~…混浴なんだけどなぁ」
「このまま入ってください」
「そんな殺生な」
てか、おかしいな、俺とリースは身長差があるはず。どうやって俺の目を覆い隠しているんだ……?
「ちなみに、視覚を遮断する魔法を使っています!(禁忌)」
「うぉい!! 最後ボソッと禁忌とか言ってないか!?」
確かに、視覚を奪えるとか最強すぎだよな。くそぉ、見ることも出来ないとか……これでは混浴の意味がねえッ!
「よくやったわ、リース」
この声はメサイアか。妙に声が震えているぞ。
どんだけ緊張しているんだよ。
という俺は、とっくに心臓麻痺でぶっ倒れそうだったが。さっきのエルフたち、可愛かったなぁ。数秒しか見れなかったけど。
「兄様はわたくしにお任せを」
「フォルちゃんは、サトルさんの腹筋をぺろぺろしたいだけでしょ!」
「……そ、そんなことありませんッ!」
全力で否定しながら俺の腹筋に触れてくるフォル。ってうぉい、妙にいやらしい手つきを――!
視覚を奪われているので、これはこれでマズいぞ。
結局俺は真っ暗の中、掛け湯をしてから温泉の中へ。
どうしてだよおおおおぉぉぉ……!(血涙)




