第461話 召喚されし四人のおっさん
耳をつんざくような激しい音がした。
スイカの魔法スキルが炸裂し、屋根にいるポウラを吹き飛ばしていた。
「おぉ、すげえな……スイカ!」
「今のは『ソウルテレキネシス』です」
【ソウルテレキネシス】
【効果】
①対象の行動を奪う
②対象を吹き飛ばす
③闇属性攻撃 +5000%
④状態異常【暗闇】を高確率で与える
⑤一定時間、全スキルの固定詠唱時間を半減させる。この効果は一度切り。再使用時間は五分
この技はソウルフォースの使い手『フォース』のスキルか。過去に現れた敵でオプファというヤツも使っていた。
もしかしたら、上位の魔法使いはみんな使うのかもしれないな。
「へえ、以前にも使っていた奴を見たよ」
「これは賢者の基本的なスキルですから」
そうか。思えばあのフォースも賢者系だったのかもしれない。
「ふむぅ。しかし、ポウラがどっかに行っちまったな」
「大丈夫です。今のカムランの街を出歩いている人はほとんどいませんから」
そもそも、もう性別変換のペルソナ・ノン・グラータを使うほどのエルフは残っていないという。ほぼ全ての男性エルフは女性に変えられてしまっているようだしな。
これ以上の被害はないと判断した。
ならばポウラを追いかけるのみ!
ヤツを倒せば、それはそれで性別変換が解除されるはずだからな。
「リース、ヤツの魔力を追えるか?」
「はい、やってます……! このまま西の方へ」
「解かった!」
三人でポウラの吹っ飛んだ場所へ向かう。
すると、建物の合間から巨人のおっさんが見えた。召喚しやがったか――!
『…………』
おっさんの肩に乗るポウラの姿も見えた。なにか指示を出し、ハイジャンプしてきた。……って、ウソだろ!?
こっちに移って踏みつぶしに来る気か!
「サトルさん! あ、あれ……!」
「ああ、リース。こりゃまずい」
俺はリースをお姫様抱っこ。
スイカは自分で回避していく。
それぞれ建物の屋根に着地。
『ズンッ!!』
地響きがするや、俺たちのいた道には大穴が出来ていた。……あっぶねえ。あのまま留まっていた場合、押しつぶされていたな。
「……しつこいぞ、貴様!」
「ポウラ、大人しく敗北を認めてペルソナ・ノン・グラータを解け!」
「断る! カムランはわたしのものだ」
巨人のおっさんは目からビームを放ってきた――って、マジかよ!
おっさんのビームに反応し、俺の【超覚醒オートスキル】が無数に発動する。よし、なんとか耐え凌いでいる。
「そうかよ。なら、お前を追い出してやるさ!」
「無駄だ!! 言っておくが、おっさんは一体だけではない……“複数体”の召喚が可能なのだよ。見るがいいッッ!」
手を広げ、膨大な魔力を解放するポウラ。
地面からニョキニョキとおっさんが生えて、その数は四人となった。
な、なんだこりゃ~~~!?
つか、こんなの反則だろッ!
「まずいですね、サトルさん」
さすがのスイカも僅かに汗を垂らしていた。そうだな、巨人のおっさん四人に囲まれれるとかどうかしているぜ、この状況。
しかもだ。
目からビームは放つわ、口から炎は吐くわで魔王並みに恐ろしい。
クソ、建物が多くて大技スキルは使えんぞ……!
「アハハハ! サトルよ、カムランでは満足に戦えまい。だが、わたしにとっては街などどうでもよい。壊れたら作り直す……それだけだ!」
「ポウラ、お前!!」
しかも建物内にはエルフたちがいるはず。
人質ってわけかよ。
なんて卑怯。なんて卑劣ッ!
絶対に許せねえ。
その感情はリースも湧き出ているようで、怒りに満ちていた。
「……あの人、ぶっ飛ばしていいですか」
「構わんぞ、リース。お前のスキルでやっちまえ」
俺はリースを降ろした。
瞬間、とんでもない数の魔法陣が展開していた。こりゃ、リース超お怒りモードだぞ。
四人のおっさんは瞬殺されるだろう。
ここはリースに任せよう。




