第458話 掃除スキルでディスペルをレベルアップできるようです
カムランの街は、変わらず人の気配がない。
昼の時間帯なのに、こう誰もいないと不気味すぎるな。
こんな状況の中でディスペルのレベルアップ方法を探る……? めちゃくちゃ難易度が高いんじゃないか、コレ。
「……あ、サトルさん。あっちの通路には人の気配がありますよ」
エルフの気配には敏感のリースは、裏路地を指さした。ほう、そっちにね。
気になったので向かってみた。
やや狭い通路だが、確かにエルフがいた
なるほど、見つからないようコッソリ移動はしているようだな。生活もあるだろうし、大変だ。
俺は気になってエルフに声を掛けてみた。
「あの……」
「ひぃ! どうかお仕置きはご勘弁をぉ……って、誰です?」
「俺はサトル。このゆるふわ可愛い系エルフのリースと共に、ある魔法のレベルアップを探っているんだ」
「あ、もしかしてユーモレスク宮殿から同胞を救ってくださった?」
どうやら、俺たちのことはもう噂になっているらしい。おかげで詳しい説明は省いてよさそうだな。
「そんなところだ。ディスペルに詳しい奴はいないか?」
「それならばエルフ族ではありませんが『不羈魔法使い』はいかがでしょうか?」
「不羈魔法使い?」
どこかで聞いた覚えがあるな。
「はい。今日先ほど到着された偉大な魔法使いです。ポウラ討伐の為に一役買って下さったそうなのですが、現在は食事をされているようで」
「ふむ。どこだ?」
「このお店です」
エルフの指さす方向。すぐ目の前の建物だった。
そんなところにいるのか、その不羈の魔法使いというヤツ。……てか、なんかやっぱり覚えがあるぞ。
まさかな?
扉を開け、中に入る。
建物内は酒場のように薄暗く、大人な雰囲気。
中を通っていくとカウンター席でオムライスを食べる魔法使いの姿があった。
あの大きな帽子、マントの背中は間違いないだろう。
俺はその魔法使いの隣の席に座った。
「あんたが『不羈魔法使い』か?」
「…………」
少女は、俺を驚いたような表情を向け――美しい緑色の瞳を向けた。
アレ。
この娘、どこかで……?
過去の記憶を探る。
アレはそう――花の都フリージアのお城で……!
『ある伝説を残した賢者の娘。不羈魔法使い『スイカ』。古き歴史を持つ炎の使い手、アーカム家の長女『アグニ・アーカム』――』
元王ミクトラン(アルクトゥルス)の言葉が脳内で再生された。
――あ。
あ、
ああああああああああああああああああああ……!!
「スイカさんでは!?」
俺よりも先にリースがその名を口にした。
そういえば、度々一緒にパーティで戦っていたし、面識はあったな。
この黄緑髪の少女は間違いない。
不羈魔法使い『スイカ』だ。
多分、半年以上振りだろうか。ほとんど変わってないな。いや、当時のままだ。こう言っては失礼だが変化なし。
「スイカ! 久しぶりじゃないか!」
「お久しぶりです、サトルさん」
以前よりは落ち着きがある口調でスイカは視線を向ける。
なるほど、少し大人びたようだな。
「あの、あたしは……」
「もちろん憶えていますよ、リースさん」
「よかった!」
二人は微笑みあっていた。かつての戦友みたいなものだからな。
「サトルさん。あたしのこと、忘れていなかったんですね」
「すまん、さっき思い出した」
「構いません。いろいろあったでしょうから」
「ああ、転生して聖女になったりいろいろな。その時、記憶がぶっ飛んだんでね」
「それで、サトルさんたちもポウラの討伐に?」
「そうだな。本来の目的は『聖地アーサー』へ向かうことなんだが、問題山積みでね。今はポウラの撃破が優先だ」
「ですが、性別変換スキル『ペルソナ・ノン・グラータ』によって阻まれているんですね」
もう把握済みだったか。話が早くて助かる。
俺は、これまでの経緯を説明。
スイカは真剣な表情で聞いてくれた。
「というわけだ。ディスペルの強化が必要なんだ」
「それで、あたしを頼りに、と」
「ああ、賢者の娘で魔法使いの君なら、なにか詳しいことを知っているんじゃないか?」
そう質問を投げると、スイカはしばらく固まって考えているような素振りを見せた。あるのかないのか分からん表情だ。
今は答えを待つしかない。
頼むぞ、スイカ。
そして、ついに答えが返ってきた。
「ないことはないです」
「それはつまり、探せばあるってことだな!?」
「はい」
「よし! それでもいい。教えてくれ」
「それは……」
「「それは!?」」
俺とリースの声が重なる。
その条件がついに判明した。
「お掃除スキルのカンストです」
「「……え?」」
またも声が重なった。
「ディスペル習得の前提条件がそもそも『掃除スキル』なのです。これをカンストさせ、更に【覚醒掃除スキル】を習得してください。……ですが、これを達成できた者は世界で一人もいませんが」
掃除スキルだって?
それって、リースの最も得意とするスキルでは?
「リース、掃除スキルのレベルは?」
「そ、そういえば、ずっと戦闘続きでまともに振っていなかったです。今は『掃除スキル Lv.80』でした」
「掃除スキル Lv.80って、なかなかだな。カンストには近い。スキルポイントはあるのか?」
「はい。沢山! 直ぐにカンストできるかと!」
今まで散々モンスターを討伐したり、強敵と戦ってきたりしたからな。余りまくっていたんだろうな。
その状況にスイカは驚いていた。
「リ、リースさんっていったい何者なんですか……! 普通、掃除スキルを習得する人はいませんよ!?」
「リースは元々俺と似ていて面倒くさがりなんだ。ひきこもりだし」
「えぇ……」
だからだろうな、掃除スキルのレベルが馬鹿高い。掃除スキルがあれば一撃で片付くからなぁ。あともともと掃除好きなのもあるらしいが。
簡単に片付く、そして綺麗になるからこそ掃除スキルを極めたのだとか。
「あたし、ディスペルの為に掃除スキルをカンストさせます!」
「頼んだぞ、リース!」
よぉし、これで一気に前進するな!
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