第457話 ポーション屋事変 - だが、男だ! -
ポーション屋へ戻り、メサイア達と合流。
ついでに女体化したエルフ達も解放。各々、家へ戻った。どのみち、現状では男に戻すことも難しい。
ディスペルも一日に一回しか使えないからなぁ。
お店の中へ入ると、そこにはルクルの姿しかなかった。なんだか困惑した表情でアセアセしている。その姿が可愛らしくてキュンときてしまった。
――だが、男だ!
「……ふむぅ」
「サトルさ~ん?」
「ち、違う。男に欲情なんてするかっ! 俺にはリースがいるからな」
「でしょでしょ!」
ぱぁと向日葵のような笑みを浮かべるリース。天使だ。
それにしても、ここまでずっとリースをお姫様抱っこしたままだったな。そろそろ降ろしてやろう。
「すまん、俺にワガママに付き合ってもらって」
「いえいえ。最高に幸せでした~」
見つめ合っていると、奥で物音がした。
ん、なんだ、みんないるんじゃないか。
通路を進み、リビングに入るとメサイア達がソファの後ろに隠れていた。
「……!」
「お、おい。どうした、メサイア。フォルも。あれ、ベルまでカーテンの後ろに……」
なんだ?
かくれんぼでも流行っているのか?
「こっち来ないでよ、サトル!」
「意味が分からない。俺、なにかしたっけ?」
「あんたじゃない。ポウラよ!」
「え……」
「アイツがこのポーション屋に現れたの! で、戦った結果……」
まさか!
性別変換スキル『ペルソナ・ノン・グラータ』を喰らっちまったのか!
つまり、今ここにいる三人は『男』になってしまったというのか。
いやああああああああああああ!
見たくない!
メサイアが男子化!?
超絶イケメンかもな。――いや、ダメだ!!
フォルは爽やかなイケメンになりそうだ。――いや、ダメだろ!!
ベルはクール系か?
――アカン!! いろいろ危険なシーンになってしまう! BLになっちまう!
「そういうことです、兄様。こちらには来ないでくださいまし……」
「おいおい、マジかよ」
俺も正直、変貌した彼女たちを見たくはない。だが、目を背けていても現実はそこにあるんだ。
でも見たくないような……クソッ!
ポウラめ、なんてことをしてくれたんだ!!
「あ、あたしがみんなの様子を見てきます……」
「リース。だが……」
「大丈夫です。どんな姿になろうとも、あたしはサトルさん一筋ですっ!」
と、恐る恐る足を忍ばせるリース。まずはフォルの方へ向かった。一番の友人だから当然だろう。
フォルの隠れている巨大壺の後ろへ向かう。
すると、リースは目をハートにしていた。
――って、うぉい!
「ちょ、リース!」
「わぁ、フォルちゃん。イケメンですぅ……!」
「や、やめてー! 見ないでくださいまし~!」
そういや、声も男の子っぽい感じだ。丁度、変声期を迎える前の少年のボイス。もし、俺が女だったら一撃ノックアウトで天然ASMRを要求していたかもしれない。
つか、俺一筋じゃなかったのかよー!
相手がフォルで良かったけど。
「食べちゃいたいですっ」
「怖ッ! リース、目がハートで怖いです! わたくしは兄様ラブなんですー!」
悔しいが、相当なイケメンらしいな。
せめて俺は見ないでおこう。
「と、ところでさ~、理くん」
「どうした、ベル。つか、イケボだな」
「なんだか股がムズムズするんだよね。これってどうやってトイレするの?」
「んなッ」
俺は言葉に詰まった。そうか、マジで男子化してんだよな。そりゃ、トイレ問題も発生してもおかしくはない。
メサイアなんかソファの後ろで悶えているようだし、まさか我慢してる――!?
「サトルの馬鹿ー! 早くなんとかしなさいよー!」
「そう言われてもな、メサイア。こうなったら男として生きていくしか?」
「ふざけんな! 股間蹴り飛ばすわよ!」
うわ……いつもより声低いなぁ。
でも、まだあどけない感じ。
――って、そりゃ困るな。俺の股間を破壊されちゃ敵わん。まだ使うんだから。いろんな意味で。
「解かった。メサイア、お前たちはここで待機。トイレの仕方はリースに教えておく」
「ええッ!? あ、あたしですかぁ……」
顔を真っ赤にするリース。めちゃくちゃ可愛いが、すっげえ困惑してる。
さすがにみんなの姿を見るわけにはいかないからな。仕方ないさ。
それを伝ると、リースは渋々納得。
そんなわけで引き続き、俺とリースの二人きりで行動することになった。
こりゃ地味に大変だぞ。
だが、明日になれば一人はディスペルで解除できるはず。それまでに、ディスペルのレベルアップ方法を模索する。
ルクルにもそのことを伝えた。
「了解しました。お店は自由に使って下さい」
「ありがとう、ルクル」
目を子猫のようにウルウルさせるルクルは、物静かな少女のように可憐で――だが、男だッ!!
イカンイカン、危うく持っていかれるところだったぜ。
「どうされました?」
「いや、なんでもないよ」
ルクルから心配されるが、平静を装った俺。ふぅ、あぶねえ。
ポーション店を退店し、俺とリースは再び外へ。
ディスペルのレベルアップ方法……あるのかな。




