第452話 魔法スキルを握りつぶすマジックブレイク
光輝く雷は俺のオーディール。
闘牛のように激しく突っ込んでくるゼルフィナに対し、神の雷が放たれた。
十字の光が凄まじい速度で飛んでいくが、ゼルフィナは回避。
ほう、俺のオートスキルを躱すとはな!
「サトルさん。あのゼルフィナというエルフ……強いです」
「ああ、俺のオーディールを物理的に握り潰していやがる」
驚いた。まさかそんな脳筋的な方法でスキルを潰されるとは想定外だ。てか、そんなのアリなのかよ。
いったい、どういうパワープレイなんだ、ありゃ。
「これは俺の力――『マジックブレイク』さ」
【マジックブレイク】
【効果】
両手に魔法スキルを無効・破壊する効果を付与する。
対象・全体攻撃の魔法スキルに限り発動する。
(設置型など特殊な魔法スキルは無効・破壊できない)
そういうことかよ。
つまり、ゼルフィナは両手にマジックブレイクを付与していたわけだ。だから、俺のオーディールは無効化されてしまったんだ。
つまり、リースのディスペルみたいなものか。
しかし、あっちは両手という制約があるものの、回数制限はなさそうだぞ。
「マジックブレイク……厄介な」
「そうだろう。貴様のスキル、そして抱えているエルフの魔法も無駄だぞ」
握りつぶされるワケというわけか。
リースは既に大魔法を放とうとしていたが、事実を知って控えていた。
「ごめんなさい、サトルさん。あたしは力になれそうにないです……」
「なぁに。俺のそばにいてくれるだけで十分さ! それだけで愛という名のパワーを得られているのだからね」
「あ、愛っ! そうですよね!」
嬉しいっと抱きついてくるリース。最高だっ!
感動しているとゼルフィナがブチギレていた。
「いつまでイチャイチャしてんだあああああああああ!!」
今度は向こうから接近してきた。
どうやら、接近物理型のようだな。
ひとまず、俺はオートスキルで様々な技を展開する。しかし、どれもこれも握りつぶされた。おいおい、覚醒煉獄でもダメなのかよ。
そこまで無効化されると、ちと落ち込むぜ。
「……っ」
「アハハ! 無駄だよ。人間風情が!!」
かなりの距離を詰められたが、俺は久しぶりに設置型スキル『ラヴァトラップ』を地面へ置いた。
大きな穴が床にでき、そこはドロドロの“マグマ”となった。
あのマグマ地帯に落ちれば、どんな敵であろうともほぼ即死だ。
「これなら無効化できないだろ!」
「な、なにィ!? くそう、設置型スキルを持っていたか……!」
驚くゼルフィナは、距離を取って唇を噛んでいた。
筋肉質なのに身軽なヤツだな。
さて、これで少しは状況が変わったな。
「ゼルフィナ、ポウラはなぜカムランを支配する? なぜ性別を変えるんだ?」
「そうホイホイと教えてなるものか!」
その間に俺はラヴァトラップを設置しまくった。
これでそう簡単にはこっちへ来れないぜ。
「さすがサトルさんですっ」
「ありがとう、リース」
相変わらず俺はリースをお姫様抱っこ。
うん、このまま戦闘を続けて勝利しよう。
この甘いひと時を最後まで味わいたい。
「いつまでもエルフを抱えて……もう許さん!」
怒りに震えるゼルフィナは、筋肉を膨張させていた。……なんだ? アイツは接近型のはずだ。あの距離で、間にはマグマ地帯。どうやって攻撃する気なんだ?
妙な殺気を感じ、俺は先制攻撃を仕掛けるか防御態勢に入るかで少し悩んだ。
「先制攻撃あるのみだ!」
物理攻撃は効くはずなので、オートスキルを強制発動して『パニッシャートライデント』を召喚。この槍は聖槍でもないので、万が一も無効化されないはず。
パニッシャートライデントをブン投げる俺。
ゼルフィナの方は手を巧みに、円形に動かしていた。
な、なんだあの妙な動き。
そして、膨大な魔力を感知した。……これはヤベェな!
「喰らうがいいッ! 覇王轟翔波ッ!!」
な、なにいいいいいいい~~~~~~!?
アレはまさか、フォルの秘奥義スキルじゃないか!!
しかも特大級の!
や、やべえ……!
コイツ、宮殿を破壊するつもりでぶっ放してきやがった。この野郎、まさかそんな大技スキルが使えるとは!!
仕方ねえ、対抗できるか分からないが!
「エンデュランス!!」
秘奥義には、俺の最強スキルをぶつける。これしかねえッ!
「あたしも手伝います。魔力をお渡ししますね」
リースは俺の体にぎゅっと抱きついて、魔力を流し込んできた。おかげで俺のエンデュランスの威力は爆増。
超新星爆発もびっくりの火力になって、ゼルフィナの覇王轟翔波を一気に飲み込む。
これでッ!!




