第451話 エルフのユーモレスク宮殿
エルフの郷カムランを支配し、人々の性別を変えるという恐ろしきエルフ族のポウラ。いくら恨みがあるからって、やりすぎだろう。
街中に出ると、やはりエルフの姿はなくて寂れていた。
風だけが“ぴゅ~”と吹き、虚しさだけが残る。
「皆さんポウラというエルフを恐れて出てこないんでしょうね……」
「ああ、みんな非力な女性にされて抵抗できないんだ」
とにかく、ルクルの教えら貰った情報を辿り『ユーモレスク宮殿』へ向かう。どうやら、カムランにはかなり巨大な宮殿があるらしく、歴史ある神聖な場所なのだとか。
「あ、見えてきました。あの巨大な建造物でしょう」
「おぉ……」
リースの指さす方向。
そこには通常の家や城よりも数倍大きい建物が鎮座していた。
とんでもないデカさだな、こりゃ。
普通の城の三倍の大きさはあるだろうか。
階段もバカ広くて無駄に段数が多いな。
さっそく正面から上がっていく……って、一段一段はダルすぎる。
「……あぅ」
リースも上りづらそうにしているし。
「サクっと上へ行こう」
俺はリースの小さな体を持ち上げてお姫様抱っこした。
「サ、サトルさん。……えへへ、嬉しいですっ」
ぎゅぅと嬉しそうに抱きつかれて俺は元気百倍に!
リースのほわほわの感触は、俺の無限のパワーを与えてくれるッ。
その場から超跳躍する俺。
『ぴょ~~~~~~~~~~~~~~ん』
と、走高跳世界記録を簡単に打ち出し、あっという間に出入口前に着地。……ふぅ、我ながら完璧だぜ。
「ケガはないか、リース」
「はいっ、大丈夫です!」
下ろそうとするとリースは離れなかった。
「……リース?」
「このままでよいかと」
「いやだが、戦闘になったら戦えないような」
「大丈夫ですよ。サトルさんのオートスキルなら手足を縛られていても問題ないでしょ?」
「それは――そうだが」
そうだな。リースの言う通り、俺は本来無理に身動きする必要がない。
今日のところはリースをお姫様抱っこしながら戦い切ろう。
そう納得しながらも、そのまま奥へ向かう。
しかし、通路もこれまたやたら広くて奥行きがあった。
てか、どこまで続いているんだよ!
全然部屋らしき場所にたどり着かねえ。てか、人の気配もねえ。
門番もいないとはセキュリティはそれほど高いわけではないらしい。
「……おかしいですね」
「ああ、つかない」
「この通路には魔法が掛けられているっぽいです」
「やっぱりか。さっきから無限ループしている気がしていた」
「あたしが解除しましょう! ……ディスペル!」
【ディスペル】
【効果】
このスキルは1日に1回使用できる。
あらゆる魔法スキルを無効化できる。
リースが『ディスペル』を発動すると、通路は急に歪み始めて“正常”になったようだ。奥が見えるようになった。
やっぱり魔法が掛けられていたのか……!
ここまで高度な魔法が使えるとはな。
だが、リースのおかげで突破できた。
ついに部屋の奥らしき場所に到着。
そこには筋トレをする筋肉質な女性エルフがいた。もしかして、コイツも性別を変えられたのだろうか。
「ほう、まさかここまで来られる客人がおろうとはな」
「お前がポウラか?」
「いいや、俺はポウラの相棒だ。ゼルフィナと呼びな」
手をバキバキと鳴らすゼルフィナという女性エルフ。なんだか、ただの女性には思えないな。
「そうか。じゃあ、お前をぶっ飛ばしてポウラの居場所を聞かせてもらおうか」
「やれるものならな」
「遠慮はいかないぜ」
「……いや、まて」
「ん?」
「その小さなエルフは下ろさないのか?」
「おろさない。リースと俺は一心同体なのだ」
と、当然のことを言い放つとリースは嬉しそうに密着。……いい感触と匂いだ。
「嬉しいっ! サトルさぁん」
「ふふふ……」
そんなヤリトリが異様に映ったのか、ゼルフィナはブチギレていた。短気なヤツだなぁ。
「ふざけるな! 敵を前になにをイチャイチャしとる!」
「うるせえ。俺とリースはラブラブなんだよ」
そんな間にも敵の“怒り”に反応して【超覚醒オートスキル】が発動した――!




