第449話 エルフの気配がない郷
【エルフの郷・カムラン】
カムランは外壁で覆われているため、どこから入っていいか分からないほどだった。
崖から見た感じでは橋が一本架かっていたのが見えた。多分、そこが唯一の出入り口なのだろう。
俺たちはそこへ向かった。
道中モンスターと遭遇することなく『橋』に到着。なかなか立派だ。
「人がいませんね~」
不安気に周囲を見渡すリース。
エルフの姿が見えなくて心配な様子。という俺も、物静かな門を前に妙な感じがした。ちょっと静かすぎやしないか……?
「……兄様」
「どうした、フォル」
「このカムラン、なんだか変です」
「そうだな。あまりに人の気配がなさすぎる」
「そうではなく……なんだかエルフの魔力とは違うものを感じるんです」
「ほう?」
てか、聖女であるフォルが感知するとは、これはいったい? リースならまだ話が分かるが。ウ~ン。
「とにかく先へ進んでみましょう、サトル」
メサイアは、おかまいなしと言った具合に先へ進む。どうやら女神は感知できないらしい。隣で歩くベルも特段変化はなかった。コイツはいつも通りクールである。
――さて、ついに街の中に来たが……寂れている。
「なあ、リース」
「は、はい……」
「ここって“エルフの郷”だったよな?」
「そ、そうですね」
「人っ子一人いないんだが」
「…………うぅ」
涙目になるリースは、自信喪失していた。……あ、いや、別に追求してるわけではないんだが。
なんだか悪いことをした気分に陥ったので、能天気なメサイアに話を振った。
「どう思う?」
「ここのエルフってひきこもりなのね」
まるでリースみたいと言いかけて飲み込んでいた。……いや、間違ってはいないけどな。リースは結構な脱力系エルフで、一度部屋で寝転んだら最後。なかなか起き上がらない。その度に俺かベルが起き上がらせているのだ。
「そうじゃないだろう、メサイア。きっと、このカムランで何かあったんだ」
「そうね。そんな雰囲気が漂ってる」
なんだ、やっぱり気づいていたのか。
とにかく住人を探して事情を聞かねばな。
まずはカムランの街中を歩いていく。
やはりというか、人の気配はまったくといってない。ここまで寂れていると、もはやゴーストタウンだな。
「お店もやってないみたいだね」
ベルはぽつりとつぶやく。
そんな中で気配に敏感なリースがある店の前へ駆けて行っていた。追いかけると、そこは【ポーション屋】だった。
へえ、エルフの郷にもアイテムショップがあるんだな。
「気になるのか、リース」
「はい。この中に人がいるようです」
「建物内にはいるんだな」
「入ってみましょう」
「そうだな」
リースは、お店の扉を“コンコン”とノック。しかし、反応がなかった。お店が居留守かよ。
「オープンはしているようです。エルフ語で書かれていますから」
当然ながらリースはエルフ族だから、エルフ語が読める。なるほど、看板にはそう書いてあるのに閉まっているとは……おかしいな。
扉を開けると、中にいた人物が慌ただしくやってきて、そのエルフは土下座していた。
「ど、どうかお命だけは……カンベンを!!」
え……?
ええッ!?
な、なにがどうなってやがる?




