第448話 洞窟の先にあるエルフの郷
サムライオークは塵と化していく。
よし、なんとか撃破できたな。
【 サムライオークを討伐しました 】
= リザルト =
【 923,000 の 経験値 を 獲得しました 】
【 300セル を 入手しました 】
【 刀の破片 × 1個 を 入手しました 】
【 特別報酬:サムライの証を入手しました 】
しかし、俺の大技を耐えるとは……この近辺のモンスターは中々強いらしい。
「よくがんばったわ、サトル!」
褒めたたえてくれるメサイアとハイタッチを交わす。
――って、まて!
お前は煎餅を頬張っていたよな!?
少しは支援スキルをだな……まあいいや。
さっさと先へ進むか。
と、思ったがフォルが足を止めていた。
「兄様……」
「どうした?」
「ここって、あの洞窟って以前、ファインマン・ダイアグラムがいた場所では?」
ファインマン・ダイアグラム。
ああ、あの大貴族を自称していた男か。
クァンタムの街の娘さんたちを連れ去ったが、彼女たちの方が強くて逆にファインマン・ダイアグラムが参っていたほどだった。
結局、娘さんたちはクァンタムの街へ戻ったらしいが――。
なるほど、この洞窟の先が『カムラン』に通じていたんだな。
「そうです! この先です! 魔力を感じるんですっ」
と、いつになくテンションのギアを上げるリース。間違いなさそうだな。
まさかこんなところにあったとは……。
洞窟内部に進入していく。
薄暗く先は闇に包まれていた。さすがに見えないな。
「ん~、明かりが欲しいな」
「あたしに任せてくださいっ」
リースは、手のひらに小さな炎を灯す。
おかげで周囲が明るくなった。へえ、小さい炎の割には明るいな。
そのまま真っ直ぐ向かうが、なかなか歩くな。
そうか、この洞窟結構奥が深かったんだな。
ファインマン・ダイアグラムたちが住んでいた場所は、とっくに通り過ぎていた。
やがて洞窟の奥らしき場所に到着。
「行き止まりだね」
ベルの冷静な声が闇の中で響く。
「ふむ……」
「あ、サトルさん。この突き当りには魔法が施されています」
「本当か、リース」
「はい。恐らくこの壁はすり抜けられるかと」
なるほどね。ただの行き止まりかと思ったが、一応続いているわけだ。俺は試しに手をついてみた。
すると『ヌルッ』と腕がめり込んだ。
「おぉ……マジか」
「やっぱり……。サトルさん、この先こそがエルフの郷カムランです!」
「すげぇ場所にあるな。よし、行ってみるか」
でも、ちょっと怖いな。
この先が実はマグマだとか、即死トラップがあるとかカンベンしてくれよ。
でも、リースがああ言っているんだ。間違いなんて……。
「さっさと行きなさい、サトル!」
ベシッと背後から蹴られ、俺は闇の中に落ちていく。
「うおおおい! メサイアおまええええええええ~~~!?」
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蹴り飛ばされた俺は、次の瞬間には草原らしき場所に落ちていた。
な……外に出た?
「お~、ここがカムランですか!」
「フォル。みんなも!」
どうやら、みんなもあの壁のワープを使って来れたらしい。
「へえ、花が綺麗ね。まるで花の都みたい」
「メサイア、よくも俺を蹴とばしたな!?」
「ごめんごめん。なんか、サトルってばモタモタしていたからさ~」
確かに、考え事はしていたけどさ!
まあいい、女神から蹴られて嬉しくない奴はいない。少なくとも俺は嬉しかったね!
「やれやれ。ここがカムランか」
【エルフの郷カムラン】
雄大な草原の中に大きな街があった。
円形の大きな外壁。
もしかしたら、モンスターから守る為の壁だろうか。少し聖地に似ているな。
「こんな場所があるだなんて……兄様、世界は広いですね!」
「そうだな、フォル」
俺は、この異世界サクリファイスの全体を歩き回っていない。まだまだ未開の地は多く存在する。
こうして新しい地に訪れられて少しワクワクするな。
「行きましょうか」
メサイアが先行して歩き出す。
そうだな、まずはカムランのエルフたちに挨拶をしたい。そして温泉だ。ゆっくり体を癒して――それから、聖地へ行く方法を模索する。




