第447話 ぷち強いサムライオーク
「愛のホーリーグレイル!」
超巨大な魔法陣を宙に展開して、そこから大魔力を放出するリース。いったい、どこにそんな魔力があるのか教えて欲しいくらいだが――今は落ち武者オークの殲滅が先だ。
ホーリーグレイルは、大瀑布のように魔導砲を穿つ。
あまりに一方的な魔法攻撃は、落ち武者オークの大群を薙ぎ払う。
『ギャアアアアアアアアアア……!!』
複数の雄叫びと共に、落ち武者オークは消し飛んでいく。文字通りの蒸発である。
【 落ち武者オーク×130 を討伐しました 】
= リザルト =
【 207,220,000 の 経験値 を 獲得しました 】
【 1,300セル を 入手しました 】
【 錆びた刀の破片 × 98個 を 入手しました 】
一気に経験値やらアイテムを入手。
てか、130体もいたのかよ。
「さすがリース。やるね~!」
一定のテンションを保つ口調でベルは、リースのことを褒めていた。
「えへへ、嬉しいです。ありがとうございます、ベルさん」
「うん、やっぱりリースのようなエルフがいると大群に襲われた時に助かるよ」
リースの頭を撫でるベル。ホント、お姉さんだな。だが、正確には俺の“従妹”にあたるので本当なら年下なのだ。異世界に転生した時に雰囲気を変えたようだが。その詳しい詳細は未だに不明だ。ネメシアの急成長と同じシステムなのかもしれない。
「あ~ん、リースばかりズルいです!」
珍しくフォルが妬いていた。
ほぉ、普段は俺ばかりに構ってるクセに。
とか言いつつも、フォルは俺のお腹を擦っていたが――ダメだ、このヘンタイ聖女。早くなんとかしないと……。
「うぉい、フォル!」
「兄様の腹筋が恋しくて」
「言動と行動が矛盾しすぎだっ!」
――って、こんなことしている場合じゃない。早く『カムラン』を目指さないと日が暮れてしまうんだよな。
先を急ごうとすると塵となっている落ち武者オークの中から人影が――いや、モンスターの影が現れた。
「…………貴様、よくも同胞を」
明らかに他の落ち武者オークよりもスリムで、しかし筋肉質なオークが現れた。装備はカタナだが、少しデザインが違う。言葉も話すし、妙だな。
「なんだ、お前」
「某は『サムライオーク』とでも名乗っておこうか」
【サムライオーク】
【詳細】
侍となったオーク。
上位の存在であり、武器は刀の『ヤスツナ』を使用。切れ味抜群だ。
「サトル、あのオークは危険よ」
メサイアは煎餅をボリボリ食いながら言った。いつもハラペコだな、オイ! 緊張感もなさすぎだオイ!
……まあいい。
「ああ、そうらしいな。ボスオークってところか」
俺のオートスキルが反応しねえ。多分、このオークに“殺気”が無いせいだ。コイツ、どういうことだ……!
普通のボスモンスターでも俺のオートスキルは反応するんだがな。
つまり、普通ではないってことか!
となると強制発動するしかない。
「男よ、この先のカムランに行きたいのか」
「どうして知っている!」
「さきほど会話が聞こえたからな。だが、行かせぬよ。我らが先に向かい、エルフ共を犯すのだからなァ!」
やっぱり、オークとかゴブリンだとか言えば、そういうコトだよね。結局そういう目的か。あ、もしかして殺気がないのも、そんなよからぬことばかりを考えているせいか!? そうなのか!?
「てめぇをぶっ飛ばす! ――くらえ、ヒドゥンクレバス!」
「水属性攻撃。当然の判断だな……しかし、我が神速の剣の前では無意味!」
ビュンっととんでもない速さで刀を抜くオークは、俺のヒドゥンクレバスを叩ききっていた。
――な、なんてヤツ!
言っておくが、俺のスキルは大抵がスキルレベルマックスだぞ!
それを簡単に潰すとは、このオーク只者ではないな。
「そうかよ。だがな、俺はひとりじゃねえぜ!」
ダンッと飛び跳ねるフォルは『覇王天翔拳』を繰り出していた。背後では、メサイアが攻撃力を三倍にする『オルクス』をフォルに支援付与。
サムライオークにフォルの一撃が命中。
「ぐおおおおおおおおおおお!?」
吹き飛ぶものの、刀を地面に突き刺して耐えていた。野郎、フォルの覇王天翔拳を食らって立っていやがるだと……!
「あ、兄様。アイツ、バケモノです!」
こうなったら必殺でいく。
死ぬほどの怒りを込め、俺は最強の大技スキルをサムライオークめがけて放った。
「エンデュランス!!」
俺の右手から白と黒の光が混じり合い、砲撃となった。刹那で到達する俺の攻撃は、サムライオークに命中。
「こんなものおおおおおおおお!!」
白い光に包まれていくオーク。
おいおい、耐える気か? 無理だぜ。さすがに俺の最終スキルだ。これを耐えた奴はほとんどいない。
ムカついたので魔力を一気に上げた。
「おらあああああああ!」
「ぐおおおおおおおおおおおお!!」
よしッ!




