第442話 雪原に建てた小屋でスローライフを!
あれから三日後。
リースの体調は回復し、風邪は治った。治ったのだが、過保護な俺はもう少しだけ雪原に建てた小屋にいることを提案した。
フォルも戻ってきたしな。
「本当にご迷惑を……!」
頭を物凄い勢いで上下させるフォルは、俺だけでなく皆に謝った。
涙をボロボロと零し、鼻水なんかも垂らして――おいおい、聖女がそんな顔面崩壊させるなって。
「気にしすぎよ、フォル。私は気にしてないわ!」
メサイアは煎餅をボリボリ食べながら機嫌よくそう言った。スカートの中からいくつも取り出しやがって。思えば、あれは空間スキル『ホワイト』だったんだな。
俺たちは未だに神聖国ネポムセイノ領クァンタム高原にある雪原フィールドで足止めを食らっていた。そろそろ山ダンジョン『ケントゥリア』を踏破しなければならんだが――。
残念ながら厳冬期に入ってしまい、外は猛吹雪。
しばらく出られそうにないな。
「自然の力って脅威だよね~」
メサイアの【建築スキル】で作ったコタツに入るベルは、のほほんと緑茶を啜る。そんな呑気な。
だが、こうブリザード級が吹雪かれてはなぁ……。
仕方ないよな?
それにしても――こんな風に小屋生活するなんて、いつ振りだろうか。昔懐かしいスローライフ。たまには悪くないな。
最近戦闘続きだったしさ。
「サトルさぁん、いいお湯でした♪」
少し寒そうにシャワー室から出てくるリース。バスタオルだけを巻き、現れた。……って、寒いだろうに。
いくら暖炉があるとはいえな。
「また風邪を引くぞ、リース」
「そ、そうですね。すぐに着替えちゃいます!」
くるりと回転するリースは早着替えを披露した。なるほど、エルフのスキルだろうな。いつもの可愛らしいエルフの民族衣装に変わった。う~ん、やっぱりコレだな。このスケスケがたまらん。
ていうか、こんな薄い衣服だから風邪を引きやすいんじゃ……? まさかな。
「カレーできました!」
と、先ほどまで泣き喚いていたフォルが料理を完成させていた。いつの間に! あ、いや……フォルの料理スキルはカンストしているんだっけな。
調理も一瞬なのだろう。
テーブルに並べられていくお皿。
なんと、黄金色を放つカツが綺麗に並べられているではないか。つまりこれはカツカレー!
「やるなぁ、フォル! てか、どこで覚えた!?」
「ベルさんに教えてもらったんです」
「なっ……」
瞬時に視線をベルに移す俺。
なるほどな……俺と同じ“転生者”であるベルなら、地球の情報も知っている。だから、こんな異世界にないレシピを伝えられるわけだ。
そういえば、ベルはカレー大好きだったな。
「ごめんごめん。つい食べくなっちゃって……神王様の許可が必要だったかな?」
まるで誘うかのような色っぽい瞳を俺に向けるベル。なんで、そんなエロっちぃんだよ。
「構わんさ。この世の理が崩壊しないならな」
「大丈夫だよ。料理くらいで世界が一変するなんて……多分ないよ」
多分って。
しかし、料理を舐めちゃいかんぞベル。人間は欲深いのだ。悪徳貴族か何かがこのカツカレーを知ったら戦争になるかもしれんぞ。
戦争なんて、キッカケは単純だからな。
「いただきま~すっ」
すでにスプーンを握るメサイアは、カツカレーにがっついていた。腹ペコだったか。
という俺も雪かきをして空腹だった。
一応、神様なのに働きすぎたぜ。
さっそく俺もカツをいただく。
サクッといい音がした。完璧じゃねえか……!
「フォル、ここまで再現できるとはな!」
「えっへん!」
絶妙にある胸を張るフォル。服越しでも形が良いのが分かる。
「はい、あ~んっ♪」
と、リースが俺の口元にスプーンを差し出していた。
まさかの先制攻撃に俺は嬉しすぎた。もちろん、遠慮なく戴いた。
「んぐっ……うっめえぇ!」
思わず涙が出そうになっているとフォルが「兄様、兄様! わたくしだって! はい、あぁん♡」と。
続いてメサイアも。なぜかベルも『あ~ん』をしてきた。
「ちょ、お前ら!?」
そんないっぺんに食えるかっ!
でもめちゃくちゃ嬉しいけどねっ!
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