第437話 空から降ってくる巨大なナニか
鉄の街ジャービスの奥地へ向かう。
そや、街の奥へ行くのは初めてだな。昔は少し立ち寄っただけ……でもないけど、そこまでガッツリ観光したことはなかった。
鉄の街というだけあり、そこら中に鉄製品が転がっていた。武器や建物の材料に使えるはずなんだがな。
それにしても、謎の鉄塔も多い。
でも……なんだか寂れている。
「妙な感じ」
ぽつりとつぶやくトーチカ。そうだな、なにか感じるような気がする。気のせいならいいが。
かなり奥へ歩くと、広場に出た。
なんだ、この廃材置き場。
こんなところにフォルがいるというのか……?
突然、アフロヘアのオッサンが「も、申し訳ない」と謝罪した。なんで? と思っていると、更に奥から二人組が現れた。
なんだ、このあからさまに不良な冒険者は。
スキンヘッドの妙に筋肉ムキムキの男二人組。
ソイツ等は、ニヤニヤ笑いながらこちらに向かってきた。
「おぉ、こりゃ上等な女が手に入ったな!」
「おい見ろよ。この銀髪のシスターはクッソ美人だな!」
やはり、というかなんというか俺に注目が集まる。……おい、ヤメロ。
男から褒められても嬉しくねーっての。
俺の胸を舐めまわすように見やがって、気色わりぃ。
「パパ、人気者ね」
「だから、嬉しくねぇって」
それより、こんなところにフォルがいるのだろうか。人探しの魔導書も、ここを指しているように見えた。
「女ども、さっそく脱いでもらおうか!!」
頬に傷がある男がダガーナイフを取り出し、脅してきた。なんでそうなる。
俺はアフロヘアのオッサンに説明を求めた。
「この冒険者共はなんだ?」
「……実は、三日前にこの鉄の街に現れ、金品を強奪。若い娘も取られてしまったのです」
いや、まてよ。
思い出したが、このアフロヘアのオッサンはビフロストにある“聖者の試練”でアグリオスという巨人だったはず。
しかも、あの時に俺が倒した。
まあ、死んではいなかったのかもしれないが。
「オッサン、あんたアグリオスじゃないのか?」
「……それは『兄』です。私は出来損ないの弟・アルカトオスと申すもの」
弟だったのかよ!
コイツも兄同様の身なりで、同じセリフを吐いていたってワケね。
ならば、この男も巨人になれるのではないだろうか。
「変身はできないのか?」
オッサンは首を横に振った。
「巨人の能力は、かつてミクトラン王に与えられた力です。選ばれた兄、アグリオスが第80層』のボスモンスターとして君臨しました。しかし、聖者の試練を受ける者に倒されました」
それが俺だった。まあ、あの時はパーティ単位でヴァルハラ攻略を進めていたがな。別にそれは禁止されていなかったワケで。
しかし、まさかミクトラン(アルクトゥルス)がアグリオスを指定していたとはな。
「そうか。まあいい、この二人組は俺たちで何とかする」
腕を構えると、隣のネメシアが「ねえ、パパ。ヴァルハラ攻略ってママから聞かされたことある」と神妙な顔をして言った。
メサイアのヤツ、今までの『冒険譚』をネメシアに話していたらしい。別に減るものでもないし、恥ずかしい過去でもないけどな。
「な~にをゴチャゴチャ話してやがる!」
「さっさと脱げやああッ!」
二人組は乱暴に指示――いや、命令してくる。
だりぃなぁ、オイ。
「おい、お前ら。俺と似たようなシスターがいたはずだ。知らんか?」
一応、聞いてみるが二人組は「あぁ?」と睨むだけだった。ダメか。
さて、ヤツ等は“殺意”をもって俺に挑んできた。てか、服を剥ぐ気らしい。きもちわりぃ。
アホ共に言いたい。
お前らは俺にケンカ売った時点で“敗北”だと。
今の俺はもう以前の、ただの可愛い聖女ではないのだよ。
ナイフが向かってきた瞬間には【超覚醒オートスキル】の聖属性攻撃『オーディール』発動した。
十字の光が馬鹿二人を吹き飛ばす。
イカンイカン、なかなか良いスキルが飛び出てしまったな。
「「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」
なんだ、やっぱり雑魚だったか。
俺は直ぐに吹き飛んだ方向へ向かい、倒れている片方の胸倉を掴んだ。
「おい、本当に知らねえのか!」
「……し、知りません。どうか、お許しを」
コイツ等は無関係なのか?
首を傾げていると――。
『ヒョウォォォォォ…………』
――ん、あ?
空から何か“巨大”なモノが降ってきた。
え、ええええええええええええッ!?
なんだありゃああああああ……?




