第436話 人探しの魔導書
この赤い本が『人探しの魔導書』か。
カローラに使い方を聞くと、適当なページを開いて“探したい人の顔や名前”を浮かべればいいらしい。そんな単純でいいとはな。
そんなワケで俺はフォルの顔と名前を浮かべた。
すると真っ白なページに【鉄の街】と書かれていた。
「――は?」
鉄の街だと……?
もしかして『鉄の街ジャービス』か?
あの街、まだ存在したのかよ!
「どうしたの、パパ」
「あ、いや……この鉄の街に覚えがあってな」
「へえ? って、結構近くよね、ココ」
ネメシアも知っているようだ。そりゃ、そうだな。このレメディオスはかつて【花の都フリージア】だった。
だが、俺がスターゲイザーなるアホ集団に消されてしまい、謎の七回の転生を繰り返している間に、紆余曲折あり……花の都は消失。
王であるミクトラン(アルクトゥルス)は俺に全てを託して消えた。
だから、今はカルミア女王の君臨する王国『レメディオス』なんだ。
しかし、周辺の街はそれほど変化はなかったらしい。気づかなかったな。
俺たちはカローラに礼を言って魔導図書館を去った。
超絶久しぶりに『鉄の街ジャービス』へ行ってみっか!
そこにフォルがいる可能性が非常に高い。いや、きっといるはず。人探しの魔導書がそこだって言っているんだからな――!
◆
【鉄の街ジャービス】
昔に比べ、ずいぶんと寂れた街がそこにはあった。と、いっても当時もこんなモンだった気がしないでもないが。
街中を歩いていると、アフロヘアのオッサンが爆走して来た。
「おまえの神はどこにいる! おまえの神はどこにいる! おまえの神はどこにいるうううううううう!!」
「な、なんですか、あのオジさん!」
俺の頭上で慌てるエコ。
うわぁ……懐かしいな。あのアフロヘアのオッサン、元気だったんだな。特徴的すぎてさすがに憶えていた。
しかも前よりもパワーアップしていないか、アフロが!
「おまえの神はどこにいる!!」
「知らんがな」
結局、このオッサンは何だったんだろうな。当時は完全にスルーしていたが。
「ねえ、パパ。この人、知り合い?」
「昔に絡まれただけだ」
「ふーん」
ネメシアは、めちゃくちゃ興味なさそうに返事した。ですよねえ~!
「おまえの神はどこにいる……」
「あ? 俺は神だ!」
「……そうか。ならいい」
「いいのかよ!!」
って、前にもこんなヤリトリをしたような。
「あの~、この辺りにこの銀髪の女の子に似た女性を見ませんでした? 多分、見た目がほとんど同じですが」
と、ネメシアはアフロヘアのオッサンに尋ねた。
「おまえの神は――うぉ!? 女神様ァ!」
なんで分かるんだよ。そうだよ、ネメシアは立派な女神だよ!
「で、あの……」
「取り乱しました、スミマセンでした」
ぺこぺこと謝るオッサン。そりゃいいから教えてくれ。
「どうなの?」
「はい。実は知っています」
「え! フォルトゥナ母様を知っているのね!」
「こちらへどうぞ……」
アフロヘアのオッサンは、背を向けて案内してくれるようだった。……むぅ、なんだろうな。なにか嫌な予感がする。
なんだろうな、この感覚。
久しぶりに背筋が凍ってやがる。俺らしくねえ。
「どうした」
光のない瞳で俺を心配するトーチカ。コイツの冷静な表情には助けられる。
「ありがとう、トーチカ」
「……うん。ヘデラ、元気なかったから」
「いざとなったら頼りにしてるぜ」
「任せて」
きっと大丈夫だ。昔の俺とは違う。ネメシアとトーチカ、そしてエコがいる。なんなら、メサイア達もな!




