第433話 雪原フィールド
ついに賢者の街・ギンヌンガガプを去った。
グロリアステレポートで行方不明になったフォルと合流せねば。
リースによれば、テレパシーは上手くいっていないらしい。もしかしたら圏外にいるかもしれないと。
ということは、相当離れた場所にいるということか……?
仕方ない。ここは慎重にいきますか。
神聖国ネポムセイノ領のクァンタム高原へ再び戻り、モンスターを自動で狩りながら先へ進む。
いやぁ、オートスキルは便利で助かるなぁ。
「サトル、調子いいわね!」
俺の隣を歩くメサイアは、新調した一張羅についた雪を払いながら言った。
この近くは標高も高いらしく、雪がパラパラと降り始めていた。気温も極端に低下。なかなかに寒くなってきたな。
相変わらず、ベルは平気な顔をしているが……ビキニアーマーで極寒フィールドを歩き回るとは、他の冒険者が目撃したら卒倒するぞ。
「なぁに、理くん。わたしの顔になにかついてる?」
俺の視線に気づくベルは、仏頂面で言葉を返す。
いや、だからその姿にツッコミたいんだよ、俺は。
高原を徘徊する蜂モンスター『ライトビー』をオートスキル『ホーリーブレード』で一掃していく。
ドロップアイテムが蜂蜜で料理の材料になるし、売っても高いし、なんなら舐めて回復するのもありだ。
この辺りのモンスターは経験値も高いし、なかなか良い狩場だな。
先へ進むと雪原フィールドに差し掛かった。この先は覚悟がいるな。
「あ……リース。大丈夫!?」
ふと背後を見るとベルが倒れてかけているリースの体を支えていた。
「どうした、リース!」
「…………うぅ」
なんだか体調が悪そうだな。顔も赤いし。
「サトル、リースはきっと風邪よ」
と、メサイアは指摘した。そうか、風邪か……。
マフラーだけだし、体温が低下しすぎて体調が悪化してしまったってところか。
こりゃ大変だ。フォルを探すどころではなくなった。
「回復アイテムとかないのか?」
メサイアもベルも首を横に振った。どうやら、将軍ルキウスとの戦闘で使いすぎたらしい。という俺も魔力の回復やらにほとんどのアイテムを消費してしまった。
「こうなったら、ここでリースの回復を待つしかないわね」
「けどよ、どうするべ?」
「わたしに任せなさいな! これでも女神よ」
「ふぅむ」
「なによ、その目。言っておくけど『建築スキル』持ってるんだから!」
完全に忘れていたが、メサイアは『建築スキル』をマスターしていたのだった。うん、マジで記憶の彼方だった。
だが、そうか。その建築スキルがあれば建物くらい簡単に建てられるわけか。
最初の頃、小屋を作ってくれたし。
移動用のオッサンも付属したな。
メサイアは偶然にも所持していた『木材』を消費。
適当な場所に小屋を建てた。
「おぉ、懐かしい小屋だな!」
「でしょう! えっへん!」
少しばかり成長した胸を張るメサイア。基本的に怠惰の女神なのだが……うむ、たまには役に立つな。
それにしても。
当時のままの小屋がそこにはあった。
まるで昔に戻った気分だな。
「家具とかも同じなのか?」
「さすがにそこまで再現は不可能よ」
しかし思ったが……女神のスキル『ホワイト』を使って邸宅へ入った方が早いのではと、今更ながら俺は思った。
特殊空間に俺たちの立派な家があるんだよな。
「なぁ、メサイア」
「解かってるわ。ホワイトのことでしょ? 残念だけど魔力切れだわ」
「はい?」
「小屋を建てた時点でゼロよ」
どうやら、この女神……ホワイトの存在を忘れていたらしい。……やれやれ。
言い争っても意味がないので、俺は小屋で我慢することにした。リースも寝かせたかったしな。
ちなみに、ベルは「薬草取ってくるよ~」と手を振って雪原を駆けて行ってしまった。アイツは元気すぎるだろう……!
聖者って風邪を引かないんだろうな。
リースを簡易ベッドへ寝かせた。
「メサイア、タオルを出してくれ」
「残念だけど、ないわ」
「マジか」
「大丈夫よ。わたしのパーカーを破ればいい」
ビリビリと破り、タオルの代用にするメサイア。ま、まさか……そこまでしてくれるとは。さすが女神だ。
「良かったのか。その服、気に入っていたんだろ?」
「いいのよ。リースの方が大切だから」
そう照れくさそうに言いながら、メサイアは布切れを使ってリースの汗を拭っていた。……俺の出番はなさそうだな。
小屋を出て、俺は久しぶりに聖女『ヘデラ』の方へ移った。
ネメシア達ならフォルを探せるかもしれないと思ったからだ。
今、ネメシア達は……ん?
エコとトーチカと仲良く温泉に入っていた。な、なんか裸にされてるぅ!?




