第422話 懐かしのオートスキル『ホーリーブレード』に防具破壊の効果追加!
お腹と背中がくっつくレベルで空腹だ。
俺もついに腹から獰猛なドラゴンの威嚇みたいな音を鳴らしていた。
「サトル、だらしないわね」
呆れた口調でメサイアは言うが、お前が言うなッ!? さっきからずっと腹を鳴らしているではないかッ!
いやしかし、このままでは餓死してしまうぞ。
ローグライクで言えば満腹度が10%ってところだ。このままでは野垂れ死ぬ。
なんとかして食料を確保しないと戦えないな――こりゃ。
「困ったねー。ここでは食べ物もロクに入手できないよ」
本当に困った顔をするベルは、とうとうお腹を押さえていた。ただでさえビキニアーマーでお腹を晒しているからな。妙に恥ずかしそうだ。
コイツがこんな風に頬を朱色に染めているところは、ちょっと可愛げがあった。
さて、どうしたものか。
俺は腕を組み、空を見上げて考える。
……あ、あの雲。俺の大好物のオムライスの形をしていやがる。……あぁ、腹減ったなぁ。
なんて少しでも空腹を紛らわせていると、周囲の人たちがざわつき始め、恐れるように正座していた。
「なんだかヘンですね」と、フォルは違和感を感じ取る。続いてリースも「あ、あそこに人が」と指をさす。
そこには身なりの整った太っちょな貴族が堂々と歩いていた。みんな、あの男に恐れをなしているようだな。
「はっはっは! 久しぶりに貧民街を視察してみればどうだ! 変わらずゴミだな、ここは!」
衛兵を二人ほど従え、あざ笑う貴族の男。なんて悪趣味な。いわゆる悪徳貴族ってヤツか。今時いるんだな、あんな分かりやすいヤツ。
太っちょな貴族は、いつの間にか土下座している民に近づいて頭を踏んでいた。
「…………ッ!」
さっきのお店のおっちゃんが頭部をグリグリと踏まれていた。おいおい、ありえないだろッ! いくら貴族でも、やりすぎだ。
怒りが込み上げてきた。
「そうだ、お前たちド貧民に人権などない。命があるだけ喜べ! お前たちのような劣等種はゴミだけ喰って生きれば将軍ルキウス様がお喜びになられる。そうやって掃除するのがお前たちの生き甲斐なのだからな」
衛兵もそろってゲヘヘと不敵に笑う。クソすぎんだろ。
そして次には近くにいた女の子を標的にしていた。おっちゃんが庇おうとしていた。
「ど、どうか娘だけは!」
「だまれ!!」
げしっと蹴り飛ばす貴族の男。
おっちゃんは転げまわって壁に激突。痛そうに悶えていた。
……なんてことを!
女の子を連れ去ろうとしたので、俺は間に入った。
「やめろ」
「ん? ああん!?」
太っちょはブチギレ気味に俺をにらむ。
「やめろっと言った」
「なんだ貴様。見ない顔だな……? だが、顔は私の好みだ。奴隷になれ」
突然のオファーに俺もメサイア達も凍り付いた。な、なんだこの貴族ぅ!? 特殊性癖をお持ちか……! やべえヤツだったな。あ、いや……最初からか。
「なるか! それより女の子を放してもらおうか」
「嫌だと言ったら?」
「お前をぶちのめす」
その瞬間、二人の衛兵が俺に襲い掛かってきた。
――しかし。
当然ながら、その“敵意”に反応して【超覚醒オートスキル】が見事に発動。
懐かしの『ホーリーブレード』が飛び出た。円月輪状が衛兵を刻み込み、魔法攻撃による光属性のダメージを与えた。
「ひえええ、ごふうううううううう!!」
「な、なんだ鎧を破壊――うあああああッ!」
そう、衛兵の鎧を粉々に破壊した。そうか、防具破壊の効果が追加されていたんだな。こりゃ使えるな!
衛兵はどこかへぶっ飛んで、泥に頭から突っ込んでいた。
守りを失った太っちょ貴族は顔を青くする。
「…………なん、だと……」
「おい、覚悟はできているんだろうな?」
俺は、指をポキポキっと鳴らす。さ~て、どう料理してやろうか。
このまま肉塊にでもしてやろうかと思ったが、目の据わったメサイアが貴族の胸倉を全力で掴み、とんでもない力で持ち上げていた。どこにそんな怪力が!? 火事場の馬鹿力ってヤツか……?
「お腹すいたああああああああ! 肉ううううう!」
「えええええええええ!?」
さすがの貴族も驚いていた。俺もビックリした。欲しいのは飯かよっ。
「は、腹が空いているのか……!? 分かった! 飯を食わせてやるから、どうか命だけは……!」
ついに命乞いをする貴族。だが、これで飯にありつける!? ナイス、メサイア! ただの駄女神ではなかったな!




