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【コミカライズ】全自動攻撃【オート】スキルで俺だけ超速レベルアップ~女神が導く怠惰な転生者のサクッと異世界攻略~  作者: 桜井正宗
第十三章 新世界

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第421話 とある賢者の幻のご飯

 賢者の街・ギンヌンガガプ、この街はどうなっていやがる。

 弱者を暴力で支配しているようにしか見えない。一方で、階級の高そうな貴族や兵は堂々と街中を闊歩(かっぽ)し、自由を謳歌(おうか)しているような――そんな風に見えた。


 なんなんだこれは。

 こんな街があっていいのかよ。

 そもそも“賢者の街”って名前がついているくらいなのだから、もう少し(おだ)やかだと思ったんだがな……。


 頭を痛めていると、奥に見える駐屯地(ちゅうとんち)らしき広場が騒がしくなっていた。まるで兵隊アリのようにワラワラと現れ、こちらに向かっているような気がした。

 マズい。さっきの騒動を知らされたかッ!



「ねえ、理くん。これってマズイんじゃないの~?」



 俺と同じく目の良いベルは、そう警戒感をあらわにした。そうだな、これは正直面倒なことになりそうだ。


 けどな、どのみち将軍ルキウスとかいう暴君(ぼうくん)をどうにかせにゃーならん。将軍をぶっ飛ばして山を越えねば聖地には辿(たど)り着けないのだからな。


 それに、こんな支配が強い街はあってはならない。人間(ヒト)は自由であるべきだ。……そうだろう?



 数十人、数百人と集まりつつある兵。こりゃ、ヤバい。

 けど逃げる気もなかった。

 将軍の居場所を吐かせてやるさ。



 腕をまくっていくと、メサイアが俺の腕を(つか)んだ。



「ちょっと待ちなさいよ」

「大丈夫。死なない程度にやるし、住人の為だ」

「ダメよ!」


 珍しく真剣な表情を浮かべるメサイアは、俺の腕をぎゅっと(にぎ)る。な、なんだよ、調子狂うな。いつものお前なら止めないだろう?


「どうしたのさ」

「お腹空いたの……! 先にご飯食べましょ!」


「って、そっちかよぉ!?」



 このアホ女神ィ!

 こんな時に空腹で倒れそうときたモンだ。しかも地獄の雄叫(おたけ)びのように『ぐぅ~』っとお腹を鳴らしていた。


 さらに、メサイアだけではない――。


 フォルにリース、ベルまでもお腹を鳴らした。


 そして、みんな恥ずかしそうにお腹を抱えた。



「あぅ」

「……あたしも」

「あはは……」



 おいおい、みんなお腹減ってるのかよ!

 だけどなぁ、こんな街に安全に食える飯屋なんてあるのだろうか。……ええい、考えているヒマはないな。

 急いで撤退てったいして、まずは腹ごしらえといこうじゃないか!




 人混(ひとご)みに(まぎ)れ、駐屯地から離れた場所へ。

 広い街だから兵を()くのは容易(ようい)だった。




 明らかにボロい家が立ち並ぶ貧民街らしき場所に到着。こりゃヒデェな。一目で見ても、ボロボロで不当な扱いを受けていると見て取れた。



「なんだか貧富(ひんぷ)の差が激しいですね……」



 不安げに声を()らすリース。その通り、さっき居た場所とはずいぶんと光景が違った。少し離れるだけで、この差かよ。

 将軍ルキウスは、弱者から搾取(さくしゅ)もしているというのか。分かりやすいヤツだな。


 いったい、どこに賢者の要素があるっていうんだ……?


 しかし、ここの住人は貧しいなりに頑張(がんば)っているようで、割と活気があった。


 廃墟のようなボロイ出店(でみせ)が複数構えられており、良い匂いが(ただよ)っていた。


 おぉ、美味そうな食べ物が売っているじゃないか。



「よかったな、メサイア。飯は売ってるぞ」

「さっそく何か買いましょ!」



 早歩きでお店へ向かうメサイアと俺たち。

 歩いて見回って目についたお店に立ち寄った。

 そこはベーコン肉を串刺しにした食べ物を売っていた。ほぉ、これは美味そうだな。



「…………」



 しかし、店の人は立ち尽くして挨拶(あいさつ)もしない。……やる気ないのか? というか、明らかに覇気(はき)がないというか。



「おっちゃん、その串焼きをくれ」



 俺が注文をすると、おっちゃんはピクッと反応して(うつろ)ろな目でこちらを見た。な、なんか怖いぞ。



「……お客さん。これが肉に見えるかね」

「え。まあ……匂いは肉だし」


「じゃあ、(つか)んでみな」


「? どういうこと?」



 言われるがままに串を持ち上げた。しかし“するり”とすり抜けてしまった。……は? なんだこれ? 食べ物じゃない!?



「え……! サトル、その食べ物って……(つか)めないの?」

「あ、ああ。これは驚いたな。見せかけかよ。にしては匂いはあるが……」



 混乱気味に(おちい)っていると、店のおっちゃんが事情を説明してくれた。



「これはね。とある賢者様が作った見せかけの食べ物さ。実際のところ、俺たちはロクな食い物を食べちゃいない。だから、こうして『幻』の食べ物で……せめて匂いを楽しんでいるのさ」


「……マジかよ」



 な、なんだそりゃ!

 匂いだけは本物で、実際は食べられないって……。普段はいったい何を食っているんだか。

 その疑問は直ぐに答えてくれた



「この貧民街では野ネズミだとか貴族の残したゴミを食っているのさ」

「……ひどい」


 ギリッと歯を()むフォルは、明らかに(いか)っていた。俺もその事情を聞いて、久しぶりにキレそうになった。


 なんだよそれ……!


 将軍ルキウスは、弱い立場の住民たちをこんな風に扱っているのか。とんでもないクズ野郎だ

 やはり、俺がなんとかするしかないだろう。


 山ダンジョン『ケントゥリア』を突破する為にも!

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