第419話 婚約を申し込まれたベル
メサイアの酔いも醒め、俺は情報収集をした。
近くにいた商人のおっさんに話しかけた。
「教えてくれ、商人さん。このケントゥリアって山は険しいのか?」
「冒険者さんですね。……おぉ、美人な方が多いパーティで羨ましいですなぁ」
「それはいい。どうなんだ」
「……うむ。このケントゥリアは『山ダンジョン』の中でも世界最高峰ですな」
「マジか」
確かに、見上げるととんでもない高さだ。
これを登っていくとか、しんどすぎてお手上げた。普通には無理だ。
だが、なにかしら方法はあるはず。
ショートカットとか裏道がな。
「タイミングの悪いことに、この山を支配する将軍ルキウスがとんでもないヤツなんです!!」
「とんでもないヤツ?」
頭上にハテナを浮かべていると、ベルが何か思い出したようで将軍のことを話してくれた。
「ルキウスか。知っているよ」
「ベル、マジか」
「うん。彼から婚約を申し込まれたことがあってね」
「え……」
それを聞き、俺は呆然となったがメサイア達は驚いていた。
「うそー!!!」「本当ですか!」「な、なんと!!」
なんだって……ルキウスから!? 誰か知らんが許せんな!! そりゃ、ベルはビキニアーマーでエロいけどさ。
「かなり前だけどね。アイツは世界中の美しい女性を集めてるって言っていた」
「な、なんだそのヘンタイ野郎! てか、よく拒否した、ナイスだ!」
「そりゃあね。お金だとか土地だとかくれるって話だったけど、興味なくて断ったよ」
なんてゲスい野郎だ!
モノで女性を釣るとはなぁ……。中には釣られてしまった人もいるんだろうな。
そんなのが将軍やっているとか大丈夫なのか。
「へえ、面白い将軍ね」
「おい、メサイア。興味を持つんじゃありません!」
「サトルってば嫉妬~?」
ニヤッっと笑うメサイア。こ、こいつぅ~~~!? 俺が嫉妬なんてありえねぇし! 俺、神様だし!!
……あ、いや。神様も嫉妬くらいするか。そういう逸話や神話は多いし。
「か、からかうんじゃないっ」
「まあいいわ。ともかくそのルキウスって将軍をぶっ飛ばすしかないんでしょ」
ぶっ飛ばすって乱暴な。
まあ、女性たちを集めてるってのはいけすかないな。
とはいえ、この山ダンジョン『ケントゥリア』を――ん? まて。まだ詳しいことを聞いていなかった。
俺は改めて商人のおっさんに聞いた。
「――で、ルキウスって野郎は何をしているんだ?」
「ええ。彼はこの山を“封鎖”しました」
「なんだって!?」
「ただし、通行料を支払えば通れるようではあります」
「なんだ、金を払えばいいのか」
しかし、おっさんは首を横にブンブンと振った。
「金ではないのです! 女性で支払うしかないんです……」
「は? 女性?」
「そうです。ルキウス将軍は美しい女性を求めているんです」
「人身売買かよ。ふざけんなソイツ!」
「ええ。だから麓ではギルドやパーティが立往生しているんですよ」
なるほど、ようやく見えてきた。ルキウスは将軍という立場を利用して、やりたい放題やってるわけか……! 確かに、とんでもない野郎だ。
「兄様、将軍はとんでもないハーレム野郎ですね……最低です!!」
ぷんぷんと怒るフォル。リースも引いていた。
ふむ、この山ダンジョン『ケントゥリア』を突破できないのではな。ならば、ルキウスをなんとかするしかねぇか。
よし、ここは俺が人肌脱ぎますか!




