第418話 神聖国ネポムセイノ領:クァンタム高原
ラーメンを食べ終え、いよいよ出発へ。
クァンタムの街を去ろうとする。
しかし、メサイアが酒におぼれていた。……おぼれんなッ!
「……えへへ。サトル、朝から飲んじゃった」
「お前、よく朝から飲めるな。しかも、これ……高いやつだろ!」
明らかに高そうな酒瓶をメサイアは二本も手にしていた。酒の二刀流、だと……!
「ねえ、サトルくん。シアはわたしが面倒をみるよ」
「マジか、ベル。助かるよ」
ベロベロに泥酔いしているメサイアをベルに任せた。
これでは仕方ないな。
俺が背負うと戦闘に支障が出るしな。
「よし、フォルとリース。準備はいいか」
「え、ええ……」
「メサイアさん大丈夫かな」
フォルもリースも心配している。
本当、飲みすぎだぞ、メサイア。
◆
【神聖国ネポムセイノ領:クァンタム高原】
ついにクァンタムの街を出て『聖地』へ向かう。
高原の奥地へ向かい、山を越えねばならない。その先にあるはずだ。ゴールがな。
――それにしても。
「兄様、兄様ぁん♪」
「サトルさん、いいお天気ですね」
フォルは俺の右腕に。
リースは左腕に絡みついてきていた。
もちろん、俺は嬉しかった。
やはり、みんなと共にパーティで動くのが楽しい。
高原を歩いていく。
う~ん、風が気持ちいぜ。
幸いにもモンスターが現れる気配はない。いや、現れたところで俺の【オートスキル】が勝手に牙を剥き、敵を駆逐する。
経験値やドロップアイテムは勝手にゲット。
こんな楽な狩りはない。
少し進むと、それなりに強いモンスターが出現。
レベルの高いインフェルノスライム。だが、俺の敵ではなかった。
スキルが自動で発動してスライムを討伐。楽々進めた。
「さっすが兄様です~! かっこいいっ」
フォルからスリスリされた。
リースも対抗するように胸を押し付けてくる。
やる気が出るな!
といっても【オートスキル】なんだけどな!!
「おええええええええええええ…………」
背後で吐くメサイア。
まてまて、なんか金色の物体を吐き出していないか!? そういう異世界なりのやさしさなのだろうか。とんでもねえ女神だ!
ベルがメサイアの背中を擦っている。
やれやれ。
更に先へ進む。
山道をのぼっていく。
さすがに急斜面で歩きづらいな。
こんな時、空を飛ぶ魔法でもあればいいんだけどなぁ……。それか、せめて騎乗系モンスターで突っ走っていきたいところ。
「うーん、楽して進めないかな」
「えー! 兄様。歩き旅の方がまったり進めていいではありませんか~」
「そりゃな。でも疲れるだろう」
「わたくしは平気ですけど」
フォルは体力オバケだからいいとしても、リースは違う。か弱いエルフなんだ。
「あ、あたしは……ちょっと足が痛いです」
「すまんな、リース。そうだな、そろそろ休憩にしようか。メサイアもあんなんだし」
「ありがとうございます、サトルさん」
山の麓で休憩することにした。
しかし、なぜかパーティとかギルドが多数座り込んでいた。……なんだ? 立往生か?
会話に聞き耳を立ててみた。
「――やっべなぁ」「この先にいるボスモンスター、強すぎるって」「何人犠牲になった……」「もう三十人は死んだ」「軍隊も投入されたんだろ……もう無理だ」「なあ、軍隊って?」「この山は『ケントゥリア』という大国のものだからな。将軍ルキウスが支配している」
そうなのか。
ここから先は神聖国ネポムセイノ領ではないらしい。
「うえええええええ……」
メサイアのヤツ、どんだけだよ。
仕方ない、そろそろ治してやるか。
俺は座り込んでいるギルドに商談して、エリクサーを譲ってもらった。……10万セルとかなりボッタくられたが、まあいい。
これで酔いを醒ませるだろう。
「ほれ、メサイア10万セルもしたエリクサーだ」
「――ぐびぐび。治った!」
「はえええええええッ!?」
いや、まあ……万能のエリクサーだから、それもそうか。




