第416話 全員集合!酔い潰れる仲間たち
「やっと会えた!」
目尻に涙を溜め、俺に抱きついてくるメサイア。
「サトルさん! 寂しかったです!」
リースも同じように、けれど、泣きじゃくって俺に抱きついてくる。
「やあ、生きていたのかい」
「ベル。お前はビキニアーマーでよく寒くないな」
「これくらい、へっちゃらさ」
メサイア、リース、ベル……そして酔い潰れているフォル。これで全員集合というわけだ。
しかし、なぜかファインマン・ダイアグラムも俺を見つめてきた。
「この私も含めてはくれないか?」
「お前は部外者だろうが!」
てか、くつろぎすぎだろ。
コイツは一応、人さらいの極悪人なんだがな。こんなところにいて、住人に殺されても文句は言えないなんだけどな。
「みんな、無事でなによりだ」
「もとはといえばフォルのグロリアステレポートの失敗のせいだからね。あとで叱ってちょうだい」
幸せそうに眠るフォルを指さすメサイア。
こりゃ、怒ってるなぁ……。
え?
しかも、俺がフォルを叱らなきゃならないのかよ。なんでやねん!
そう心の中でツッコんでいると、メサイアたちも席に座った。
「腹減ってるのか?」
「うん。このところ雑草ばかり食べていたから……贅沢なものは何も口にしていないの」
そういえば、みんな瘦せ細ってゲッソリしているな。
「って、雑草って……」
「仕方ないでしょ。この辺りって町とか村があんまりないし……あとお金も落としちゃってなかったし」
「そりゃ災難すぎだな。まあいい、とにかく食え」
メサイアたちはメニューを掴み、血眼になって料理を選んでいた。それと、とんでもない量を注文していた。……そこまでか。そうなんだろうなぁ。
しばらくして、肉料理やデザート、酒などたくさん運ばれてきた。
「「「いただきまあああああす!!!」」」
腹ペコ組――つまりメサイアとリース、ベルは肉料理をむさぼる。
こ、ここまで腹が減っていたとは。
こんな豪華な料理にありつけたのも久しぶりというわけだ。
それにしても……すごい勢いで料理が減っていく。
居酒屋のおっちゃん、顔がゲッソリしている。そろそろ過労で倒れるかもしれんな。
◆
せっかく再会できたというのに、みんな酔い潰れてしまった。
これでは動けそうにない……のだが。
「あのぉ、お客さん。そろそろ閉店です」
居酒屋のおっちゃん、完全に疲れた顔をしていた。あんな量の料理を注文されたのは初めてなんだろうな。
ええい、仕方ない。
みんなを運ぶか。
俺はおっちゃんに金を支払った。おっちゃんは安堵して泣いてさえいた。そこまでかっ!
さて、問題はここからだ。
メサイアたちをどう運ぶか。
さすがに四人の少女を運ぶのは難しい。
ファインマン・ダイアグラムに頼みたくもないしな。てか、触らせてなるものかっ。
「お困りのようですね、サトル」
「勝手に名前を呼ぶな」
「だが、困っている」
「……くっ。そうだよ。ご覧の通り仲間が酔いつぶれちまったんだ。運ぶしかなくてな」
「これほど美しい女性たちですから、雑な扱いはできないというわけですか」
「そんなところさ。俺はテレポートとかそういうスキルは持っていないからなぁ……困ったぜ」
新世界の神王アルクトゥルスといえど、そこまで万能ではない。
いや、かつての神王なら可能だっただろう。残念ながら俺はまだそこまでの“覚醒”に至っていないのだ。
「なら、私がお手伝いしましょうか」
「触れるのは禁止だぞ」
「大丈夫です。私は指一本触れませんから」
ファインマン・ダイアグラムは外へ向かった。
少し待つと何が物音がして、それは現れた。
「ん?」
「お待たせしました、サトル。こちらへ彼女たちを運んでください」
「お……。そうか、馬車を使えばいいのか。でも、どこから?」
「これは私の馬車です!」
元気よくドヤ顔でそう言うファインマン・ダイアグラム。
ああ、そうか。この馬車で洞窟から逃げてきたんだな……。
この馬車を使わせてもらうか。




