第413話 クァンタムの街:若い娘を連れ去る魔物!?
クァンタムの街に辿り着いた。
高原に位置するだけあり、山々に囲まれている。
少し肌寒いな。
それにしても穏やかというか、空気が澄んでいるなぁ。いい場所だ。
「ここがクァンタムの街か」
「のどかですね~。スローライフするなら、最高の場所です」
「うむ。ありっちゃありだな」
しかしなんだろうな。
街の人たちは、どこか落ち着きがないというか……。なんだか慌しいな。
「妙ですね、兄様」
「ああ、こちらをチラリと見るだけで去っていく。俺たち旅人が珍しいのかもしれん」
「そうですかね?」
気にせず街中を歩く。
ただ、歩くたびに家や店の扉が閉まっていく。なんでだよ!
俺たちなにも悪い事していないのに。
「こりゃ、かなり警戒されてるな」
「どうしてでしょう……不思議です」
フォルですら、この状況に首をかしげていた。
こんな平和な街なのに、もしかして“何か”あるのか――? そうは見えないけどなぁ。
しばらく歩いて中央の噴水広場にやってきた。
そこには老人が一人だけいた。
俺たちの方へ来るなり、鋭い眼でにらみつけてきた。おっかな。
「おい、そこの男!」
「なんだい、ジイさん」
「お前、また私らの娘をさらいに来たのか……」
「は? なんのことだ?」
「とぼけるでない。お前は街から娘をさらっている魔物だろう……!」
「なんだって?」
街から娘を……そんな魔物がいるのか。
ていうか、俺であるはずがない。
さっき到着したばかりだ。
「こんな高原を訪れる旅人はほぼいない。しかも、お前ははじめてみる顔だ。怪しい」
「怪しいってだけで魔物認定するなよ。俺は人間だ」
正確には『神様』だけど、細かいことはどうでもいい。
しかも神様だなんて言ったら、それこそ色々疑われるからな。
「兄様、このお爺さん困ってるみたいですね」
「ああ、フォル。どうやら、魔物が娘さんたちをさらっているのは本当らしい」
「どうします?」
「メサイアたちとの合流があるんだ。それまでに解決するしかないさ」
「ですよね」
俺はもう一度、ジイさんを説得してみることに。
「ジイさん。俺は魔物じゃない。その連れ去られた娘さんたちを助けてやるよ」
「な、なんと……むむ。となると、あなた方は本当に魔物ではないのですな」
「だから言ってるだろ。てか、魔物がこんな可愛い銀髪シスターを連れ歩くかよ」
「た、確かに」
ジイさんはフォルを見て納得した。
とりあえず信じて貰えたようだ。
それにしても魔物ねえ?
「で、その魔物ってどんなヤツなんだ?」
「……そ、それが分からないのだ」
「正体不明か」
「誰もその姿を見たものがいない。気づいたら若い娘が消えている……。そんな状況が一ヶ月近くも続いており、もう十人は消えた……」
「マジかよ。そんなに被害が」
「どうかお願いです。娘たちを助けてください……」
ボロボロと泣きだすジイさん。家の方から人が飛び出してきて、住人が集結。俺に懇願してきた。
「兄ちゃん、お願いだ!」「助けてくれ!」「オラの娘を……」「どこへ行ってしまったんだ」「もう一ヶ月も経つ。心配だ」「魔物の正体がつかめれば……」
こうなったら仕方ないな。
「分かったよ。俺に任せてくれ。これでも魔王やらヤバイボスモンスターも散々討伐してきた。俺に任せろ!」
「おぉ……。冒険者さま、お願いします」
ジイさんから依頼を受け取り、俺はフォルと共に“謎の魔物”を追うことにした。さ~て、いったいどんなモンスターが娘を連れ去っているんだろうな。




