第400話 貴族の決闘エリア
神聖国ネポムセイノの先へ進むと、明らかに平民らしき人間はいなくなった。この先は貴族ばかりなのか?
豪華な服、ドレスに身を包む人間が多い。
「兄様、ここってなんか変ですよ」
「そうだな。傲慢な貴族ばかりいるように見える」
しかも、剣を交えて戦っている者さえいた。なんなんだここ?
首を傾げていると、声を掛けられた。
「君たち、見ない顔だね」
「ん、あんたは?」
「僕はニコラス。君たちこそ貴族には見えないけど、変わった身なりをしている」
「俺のことはサトルとでも言ってくれ。こっちのシスターは、フォル」
「そうか。まあ、ここは平民も入ってもいいのだが……あまり立ち寄ることはないよ」
「どうして?」
「僕の頭上を見てみなよ」
頭上? と、俺はニコラスの頭の上を凝視した。すると、そこには『Lv.3900』とあった。え……レベルが表示されているのか!?
よく見ると、他の貴族の頭上にも5000だの6000だのレベルが表示されていた。
「まさか……」
「そのまさかさ。ここは“決闘エリア”なんだ。いつでも決闘していい場所でね。だから、力に自信のある者は決闘して貴族を倒す。それで成り上がるんだ」
なるほどな。それでこんな人数が剣を交えているんだ。奥の方では、十人規模で戦っているところは見えた。
神聖国ネポムセイノの特別エリアらしい。
「へえ、面白いな」
「でも気を付けてね。中には殺しを楽しむ者もいる」
「殺人か」
「うん。基本的には相手に『参った』と言わせるだけでいいんだ。その時点で勝者はレベルアップと爵位ポイントを得る」
「爵位ポイントですか?」
フォルが不思議そうにしていた。俺も気になった。
「神聖国ネポムセイノでは、爵位ポイントを得られれば得られるほど上を目指す。伯爵なら100万ポイント、公爵なら1000万ポイントを稼いでようやくなれるんだ」
「そんなに必要なんです!? って、基準がよく分かりませんけど」
「まあ、相手のレベルで得られるから割と苦労はしないよ」
つまり、相手がLv.5000なら5000ポイントってことか。まあまあ大変だな。でも、それでがんばって貴族に成り上がるヤツもいるのか。面白い国だな。
「ほーん。というか、俺たちはそんなつもりはないんだけどね」
「そうなのか、サトル。君のレベルは……なッ!? ちょっと、待ってくれ!! 君のレベルはなんだい!?」
ニコラスが驚いて目を丸くしていた。
俺の頭上に書かれているレベルってなんだ? 最近、まったく確認していなかったからんぁ。覚えちゃいない。
「フォル、俺のレベルって?」
「えっ、兄様、自分のレベルを確認されていないのです?」
呆れた顔で視線を向けるフォル。
だって、面倒くさいからな。
最後に確認したときは確か『Lv.10000』を超えたところ。あれからどうなった?
「教えてくれ」
「えっとですね、兄様は……『Lv.58200』です」
「へ……」
「兄様は『Lv.58200』ですよ」
「なにぃぃぃぃ!?」
マジか!!
俺ってそんな高レベルだったのか。限界突破してから、そんなレベルアップしたとはな。恐ろしいことになっていたな。
そりゃま、直近では『天帝』とも戦闘を交えたし、時の魔法使い・ラグラスとも交戦した。その経験値が膨大だったのかもしれない。
頬を掻いていると、ニコラスが俺にすり寄ってきた。
「サトル! 君は凄いな! Lv.58200なんて聞いたことがない! 君なら、この世界最高権力を持つ神聖国ネポムセイノの……第9998代皇帝ジークムント・ケッヘルを倒せるかもしれない……!」
「な、なんだってぇ!?」
俺が皇帝をぉ!?
いやいやいやいや!!




