第398話 新世界の神王アルクトゥルス
レメディオスから旅立つ前に、カルミア女王へ挨拶しに向かった。
ポインセチア城へ入ると、衛兵から「どうぞ、通り下さい」と丁寧に対応されて顔パスで進めた。
「すっかり認められたわね、理」
ニシシと笑うメサイアは、赤くてデカイ瞳を俺に向ける。ヘデラでもあるという事は、女王様にも既に伝えてあり、俺は世界を救った英雄――というよりは、新世界の神王『アルクトゥルス』として迎えられた。
俺はすっかり神扱いだった。
「さすが、わたくしの兄様です! ついに神様になってしまうとは」
いや、フォルよ、お前も神様だからな!?
――そう、フォルの中には『フォーチュン』という古代神が潜んでいた。彼女が極端に運が良い理由はそれだ。
幸運値は、もはや『無限』に等しい。
「もぉ~、フォルちゃんはすぐ理さんに抱きつくー!」
ぷんぷんと怒るリース。今日もほわほわして可愛らしい。その隣にいるベルは、変わらずクールだが、僅かに微笑んで俺に視線を送る。
「ベル、お前は変わらないな」
「胸? どこ見てるの~。やらしねえ、理くん」
「そこじゃねぇよ!? しかも恥じらいもなく、淡々と言われてもなあ」
ベルのマイペースっぷりは、いつもの事だけど。
そんなこんなで『女王の間』へ辿り着く。
王座には既に、カルミア女王が座って待っていた。
「お久しぶり、カルミア女王」
「うむ、よくぞ参られたヘデラ……いや、アルクトゥルス様」
「理でいいよ」
「そうか……。では、理よ。此度の世界救済と我が呪いを解いてくれた事、礼を言おう。ありがとう」
女王は真っ直ぐな瞳を俺に向けた。なんだか照れるな。
「いや、俺はただ日常が欲しかっただけだ。仲間と共にあたりまえの生活が送れればそれで良かった。けど、スターゲイザーは俺達を分断し、悲惨な未来へ導こうとした」
――でも、実際は時の魔法使い『ラグラス・アドミラル』の計略だったのだ。
「そうだな、まさかこのレメディオスの貴族であり、腹心であったラグラス・アドミラルが裏切者だったとはな……これに関しては謝罪したい」
「俺も見抜けなかったよ。そもそも、天帝と呼ばれた男の娘を捕らえている時点で怪しかったわけで……」
よくよく考えたら、ありえなさすぎた。あの三つの国を滅ぼした少女セルリアを閉じ込めるなど……。ちなみに、セルリアはあの戦闘の後に消えていた。もともと幽霊だったし――成仏したのだろう。
「それで、理よ。これからどうするのだ?」
「俺はコイツ等と共に、アーサーの元へ向かう。彼らにも吉報を知らせないと」
「そうか。聖地が復活したのだな」
「元の世界とはいかないけど、ある程度の修正は出来たと思う。ようやくスタートラインだ。これからが“始まり”だ」
「聖地の復興に向けて、このレメディオスも支援しよう」
「ありがとう、女王様。それじゃ、俺たちは行くよ」
別れを告げ、俺はフォルにテレポートの指示をした。
「では、皆さーん! わたくしのどこでも良いので触れて下さいませー」
フォルは、あのフォースという少女から『グロリアステレポート』という最強の転移魔法を教えて貰ったらしい。
【グロリアステレポート】Lv.10
【系列】補助
【習得条件】ソウルフォース
【効果】
対象:自分/パーティ/ギルド
あらゆる場所へ転移可能。
最大七つの『座標』をメモリーできる。
その場所へテレポートする。
転移禁止エリアなど特殊なダンジョンもメモリー可能。ただし、特異点でのメモリーは不可能とする。
みんな、フォルの肩や背中に触れる。
「俺はどこにしようかな」
「兄様は、わたくしのおっぱいでいいではありませんか」
「人前で、しかも女王様の前でなんてこと言いやがる!?」
無難に腰にしておいた。
「あぁん。普通ですね」
「黙れ、ヘンタイ聖女」
「仕方ありませんね。ではでは、グロリアステレポート!!」
ついに、レメディオスから旅立った――。
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