第392話 神の涙『ティアドロップ』
神の涙『ティアドロップ』を俺は口に含む。
ごくんと一気に飲み込み――!!
これで俺は……!
「…………!」
見た目に変化はないように思えた。ん……不発か? いや、そうではなかった。明らかに神聖な力が湧き出ていた。これは……これこそが『神の力』なのか。
「ちょ、サトル……あんた……凄い力よ」
「ああ……! メサイア、俺は『涙』を飲み込んだ」
俺は【アルクトゥルス】になった……? 力を感じる以外は、大きな変化がなく俺は戸惑った。だが、今ならあの『闇』を何とかできそうな気がしていた。
いける……いけるぞ。
ギリギリで耐えている、この状況。
逆転するには今の状態で再び大技を繰り出すしかない。だが、その前に。天帝に一言言っておきたい。
「俺はこの闇を消し去り、世界に再び希望の光を照らす」
「……もう遅い。俺の『闇』が世界を覆う。全てを無に帰した――その時、世界は再び『バテンカイトス』として生まれ変わる」
「なら、最初からそうすれば良かっただろ!」
「残念ながら『聖地』が俺の力を阻むようでな。だから壊していていたんだが、思いのほか抵抗が凄まじい。今もどうやら各地で反抗勢力が暴れ回っているらしいな」
アーサー達か。
よくやってくれている。
「そういう事か。聖地が枷になっていたんだな」
「ああ、そうとも。聖地は【アルクトゥルス】の魂の一部。だから手を出せなかった。俺の力を弱めるからな……なので『セルリア』に頼んで破壊を命じた」
「お前の亡霊娘か!」
「そうだ。だが、娘は帰ってこなかった。三つの聖地を破壊してくれたがなァ!!」
強まる闇。
やべぇ……押し切られる。
だけど、こんな所で負けるわけにもいかない。俺は約束したんだ。メサイア達に、ネメシア達に――アーサー達に……すべての人達に!!!
『ミレニアムエンデュランス――――――!!!』
更に【超覚醒・オートスキル】を合わせ、魔力大食いのエンデュランスを乱発した。以前の俺なら不可能だったが、神の力を手に入れた今なら、それは可能らしい。
希望の光が闇を撃ち消していく。
「…………なッ!!!」
さすがの天帝でさえ、驚きを隠せないでいた。闇はどんどん浄化されていく。これが【アルクトゥルス】の力なのか。
「ユメ……!」
「だ、だめだ。フォース。俺なんかを守る為に犠牲になるな!!」
「いいの。あたしはユメを守れるのなら……ソウルテレキネシス!」
だが、それでも俺の大技は止まらなかった。あの小さな魔法使いの少女が必死に天帝を守っている……。でもあれは幻だ。儚い……夢物語だ。
【アルクトゥルス】となって、俺はようやく彼らを理解した。
「天帝、お前は失った仲間を取り戻したかったんだな。でもな、だからといって世界を改変していい理由にはならない。俺だって掛け替えのない仲間がいる。それは同じだ!!」
「そうですよ、兄様!!」
後方のかなり離れた距離にいたはずのフォルが飛んでくる。
「フォル……いや、この感じ、まさか!」
「ええ、この時がやってきたのですよ、アルクトゥルス。わたくしは『フォーチュン』。約束を果たす時がきたのです」
フォルトゥナの両目が『桃色』だ。
間違いない。今は覚醒して【フォーチュン】となっている。つまり……これで。
【アルクトゥルス】
【フォーチュン】
【バテンカイトス】
全員が集合したわけか――。
まるで神話の再現だな。
けれど、こっちは二人……いや、俺には女神もエルフも聖戦士もいる。皆の力を合わせ、これで最後にする――!!
もしも面白い・続きが読みたいと感じましたら、ブックマーク・評価をお願いします。




