第382話 死の要塞国・デイ
乾かすのにそれほど苦労はなかった。
ただし、今俺の横を歩くフォルは……穿いていない。そのままの状態でメサイア達と合流を果たす。
「遅かったわね、サトルとフォル」
「あはは……メサイアの方は待ってくれていたんだな。いや、すまん……ちょっと色々あってな」
「いろいろ?」
「き、気にするな!」
フォルは顔を真っ赤にして俯いた。
さすがの彼女もノーパンは恥ずかしすぎるらしい。もうさっきから言葉すら出ていない。
「フォルちゃん、大丈夫~?」
リースは不思議そうにフォルの顔を覗く。けれど、視線を合わせずスリットを押さえるので必死だ。おいおい、逆に怪しまれるだろうが。
仕方ない、この俺が助けてやろう。
「リース、悪いんだがフォルは今、ノーパンでスースーしているんだ」
「「「え!?」」」
皆驚いて振り向く。中でもフォルが涙目で訴えて来た。多分……「なんでバラしたんですかぁ!!」と憤慨しているに違いない。と、思ったが、涙目ながらも何だか嬉しそうだぞ。だめだコイツ……早くなんとかしないと。
◆
【死の要塞国・デイ】
ついに俺達は、巨大塔の前に辿り着く。
寒々とした空気が場を包み、緊張が走る。
「サトル、これが死の招待状よ」
メサイアから黒い封筒を受け取る。これこそが『死の招待状』だ。この死の要塞国に入る為の鍵だ。これがないと入れないらしい。
そもそもこの塔に入り口も無ければ、侵入できそうな穴さえも無いのだ。つまり、この招待状を使う他ないという事なのだ。
「この時が来たな。メサイア、フォル、リース……心の準備は出来ているか?」
俺は三人に問う。
装備やアイテムも万が一に備えて揃えてある。後は、皆の覚悟だ。この先を進むか――否か。
「私は何があってもサトルの傍にいるわよ。だって、女神だもん」
そうメサイアは当たり前のよう言った。そうだな、そうだった。
「兄様、もうココまで来たんですよ。今更引き返せません」
そこそこ苦労して辿り着いたしな。フォルのお漏らし事件もあったけど。
「参りましょう。あたし、ちょっと怖いですけど、サトルさんとなら大丈夫です」
リースに震えはない。彼女も成長したな。昔はここまで積極的ではなかったが、今は違う。
「よし、招待状を使う。この塔に侵入するぞ!」
――俺はついに『死の招待状』を使用した。
◆◇◆◇◆
暗闇が漂う迷宮の中にいた。
視界は悪くて、何処に何があるのか分からない。適当に手を伸ばすと、柔らかいモノに触れたような気がした。
「あ、兄様! そ、そこぉ……」
「そこぉ!? これは、フォルのどこの部分だ!?」
「ぁ……、ん」
なんだか艶めかしい声をお出しになられるフォル。明らかにいつもと違う甘い声だった。……って、ダメだろうが!! どこの部位か分からんが、俺は手を離した。てか、俺は本当にフォルの何処かに触れていたのだろうか? それにしても、妙な感覚だった気がするが。
それから【オートスキル】を任意で発動させ、血の煉獄を制御しつつ灯り作った。簡易的な松明ってヤツだな。
「おぉ、フォル。って、大丈夫か?」
「……はい。あのぅ、兄様。続きまた後で」
「続きィ!?」
もう何の事だか分からない。
俺の指先にほんの少し粘り気があるような気はするけど……ま、まさかなぁ……。
視界不良で見えてなかったし、真相は闇の中だ。確かめる術はない。まあいい、それよりメサイアとリースだが。
「メサイア……おお、いたいた。リースを抱えてくれていたのか」
「いきなり飛ばされるんだもの。怖いって。でも、ここが『死の要塞国』なのね。何も見えないじゃない……闇の国なのかしら」
かもしれないな。アーサーが言っていたが、国はそれぞれの属性があるって言っていた。遥か昔、この世界は『火』、『水』、『地』、『風』、『光』そして『闇』の六つの国があったらしい。
これ以上の詳しい事は知らんけどな。
もし、もしもだ。
天帝の力で闇の国が再現されているのだとすれば、ヤツはとんでもない力を持っている――という事だ。いや、そうなのだろう。俺は何度か天帝と矛を交えている。あの力は本物だった。
闇使いだった。
「なんであれ……この塔の天辺には天帝がいるのだろうな。漂う瘴気のような闇は間違いない。俺が感じたモノと同等だ。皆、警戒しつつ上を目指す」
よく見れば、上へ果てしなく続く螺旋階段があった。幅はアホみたいに広く、途中途中に街のようなものが見えた。なんだ、この塔の構造。
「これは凄いわね。女神や死神族ですら、こんな建造物は作れなかった。でも、天帝ってヤツはこれを作ってしまったのよね」
元死神であり、女神であるメサイアが溜息をつく。そうだな、これ程のモノを作るヤツだ。きっと何か意図があって、こんな世界に作り替えちまったんだ。だけど、俺は絶対に許さん。未来を、全てを奪った天帝を。
「あ、サトルさん。ここって『一階』のようです。ほら、階段の横にプレートが埋め込まれています」
リースの言う通り、そう刻まれていた。
なるほど、階層があるらしいな。
この感じだと『千階』あるいは『一万階』はあるといってもいいだろう。いいぜ、登り切って見せる――頂上までな!
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