第378話 死の要塞国、突入前夜
「リースママ、隣にいるこの男の人は?」
「こ、この方は~…そのぉ、えぇと……」
リースがめっちゃ焦ってる。
俺も焦っているし、困った。ネメシアに全てを明かすべきか……いや、まだ時期じゃない。まだ早いんだ。それに――ネメシアの傍には、ヘデラもいるから、余計に混乱を招くだろう。
(あのっ、サトルさん! どうしましょう)
ついにリースからテレパシーが入る。
これならネメシアにバレずに会話できる。
(今はまだ俺の正体を明かしたくない。うまく誤魔化してくれ)
(わ、分かりました)
通信が途絶えた。
「リースママ?」
「えとえと、この方は、あたしの旦那様です!」
――――!?
ある意味間違ってないけど、そう言ってしまうとは!!
「だだだだ、旦那様!? リースママ、いつの間に結婚していたのー!?」
「ごめんなさい、ネメシアちゃん。あたし、ちょっと急ぎの用事があるから……テレポート!!」
「ちょ、リースママ!!」
止めようと必死に向かって来るネメシアだったが、俺がヘデラで押さえつけた。あぶねぇ、ネメシアまで連れていっちゃう所だった……。
◆
――再び、エロスにあるアーサーの城。
「ありがとうな、リース」
「いえいえ。城内に戻ってきましたし、さっそくメサイアさんとフォルちゃんに合流しましょう」
そうだなと俺は頷き、メサイアの部屋を目指した。って、どこにあんねん!? 城内は無駄に広く、無駄に部屋の数があった。
「お任せください。テレパシーで訊いてみます」
こんな時のエルフの力だ。
万能である。
少し経ち、リースは「こっちです」と案内を開始してくれた。背中を追っていく。
城の二階、三階と階段を上がって行けば、見知った顔ともすれ違う。簡単に挨拶を済ませ、そのままメサイアの部屋へ。
「ここのようです」
「結構いい部屋を借りれたんだな」
「みたいですね。入りましょう」
部屋をノックしてくれるリース。直ぐに中から反応があって「どうぞ」と言われたので、扉を開ける。中には、メサイアとフォルのまったりした姿が。
フォルは早々に俺に反応し、飛びついてくる。
「兄様、兄様ぁん♡」
「おぉっと……なんだ、俺成分が足りなくなったか、フォル」
「はい。わたくし、兄様成分が不足しちゃいました♡」
仕方なくフォルを抱えながら、ベッドで寝そべるメサイアのところへ。おぉ、だらけとる。
「メサイア、戻ったぞ。報酬はたんまりで、この通り300万セルだぞ」
「さ、300万!? 凄いじゃない、サトル! あのパンケーキでそんなに貰えるだなんて……さっそく乾杯しましょう!」
「まて。そのパンケーキの正体を話していない。気にならないのか」
「あぁ……そうだったわね。で、誰だった?」
「トニトゥルス。この前、ぼったくりバー・えんじょいで飲んだろ。あの時に奢ってくれた巨人のおっさんさ」
嘘……と、驚きを隠せないメサイアは、手で口を塞ぐ。まさに驚愕していて、信じられんと俺を頬を突く。
「いや、俺を突かれても。夢じゃないし」
「そ、そうね……。といっても、あの時は飲んじゃってて記憶も曖昧なのよね~…。そか、あの時の人が」
「ともかく、明日には作戦開始だ。俺たちは【死の要塞国】へ向かう。今日はよく食べて、よく寝るか。明日に備えよう」
「了解。じゃ、暫くは自由行動ね」
「そうだな。俺はフォルを甘やかしてくるよ」
「そうね、ずっと恋しがっていたし、リースはこっち」
リースと交代となり、俺はフォルを連れていく。
「じゃ、また後で」
◆
部屋を出るなり、フォルは顔を埋めて来る。
「えへへ、兄様……好き好き大好きですっ♡」
「どうした、フォル。今日はいつもに増して甘えん坊だなぁ。そんなに俺が恋しかったか?」
「わたくしは一日中、兄様の事しか頭にありませんし! 兄様第一主義ですからッ。あぁ~、これこれ、これがいいんです♡」
細い指で俺の腹筋に触れてくる。
おのれ、ヘンタイ聖女め。
「とりあえず、ここは廊下で人に見られて恥ずかしい。部屋へ行こう」
さっきから騎士達にジロジロ見られまくっていた。なにか勘違い……もうされているか。
俺の部屋に入って、フォルはいきなり修道服を脱ぎだした。
「……兄様、わたくし、もう……我慢できません」
「マテ。下着にまで手を掛けるな。服も着ろ」
「あぁん……♡ つれないですね。わたくし、もっとあ~んな事や、こぉぉぉな事をしたいんです。だめですか?」
そんな舌を出して、エロすぎる目で見られても!? いや、気持ちは嬉しいんだがな。
「この戦いが終わってからな。落ち着いてからの方がいいだろう?」
「そ、それはそうですけれど……。その前に、わたくしが兄様の事を襲っちゃうかもしれませんけど……構わないと!?」
「なんでそうなる! てか襲うな!」
欲求不満聖女を膝の上に乗せ、抱きしめた。今はこれだけで十分だ。
「あ、兄様! わたくしを背後から抱きしめて、な、何をなさる気ですか! その、わたくし後ろからより前からの方が好みなんですが! お顔がよく見えますし♡」
「お前は何を言っているんだ!?」
超絶ヘンタイ聖女をこれ以上喋らせると危険と察知した俺は、フォルを抱えたままベッドに寝転んだ。
「あたたかいです……」
「じゃあ、おやすみ」
「へ!?」
「フォルを抱き枕にして寝る」
「あぁん……分かりましたです。おやすみなさい、兄様♡」
俺は宇宙一可愛い聖女を抱き枕にして眠りについた……。
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