第374話 砂漠と雪の国・エロス
雪の積もった砂漠のど真ん中に国はあった。
その名のも『エロス』である。
「エロス……」
フォルが何故か興奮していた。
「おい、ヘンタイ聖女。なにを鼻息荒くしている」
「兄様ひどーい。わたくし、そこまでムラムラしていません!」
「そこまで?」
「……うぅ」
フォルは顔を赤くして黙った。
なるほど……ある程度はムラムラしているんだな。このヘンタイがっ!
――って、そりゃいいや。
門から複数の騎士が現れ、俺たちは囲まれた。ですよねぇ~。
「そこの三人……いや五人か。何をしている。ここはアーサー様の聖地である。無断で立ち入る事は許されん。スターゲイザーであるのなら、尚更だ」
剣、槍、弓を複数の騎士から向けられる。
あちゃー、完全に警戒されてるな。
「おい、メサイア。歓迎されてないぞ」
「あのねえ、セルリアの一件で超警戒モード突入中なのよ。そりゃこうなるでしょ。だから、エロスに入る為に必要なものがあるでしょ」
と、メサイアに言われ俺は思い出す。
<ピコーン!!>
以前、ラグラス・アドミラルから貰った『エロス通行証』を思い出す。俺はそれを懐からゴソゴソと取り出し、提示した。
すると、目の前にいるごっつい騎士がそれを見て、ガクガクブルブル震えて顔を青くした。なんでそこまで驚く!?
「ここここここ、これは大変失礼致しました!!! ラグラス・アドミラル様と世界ギルド・ぼむぼむ様の署名に間違いありません」
そういえば、通行証にサインが入っていたな。これがそうだったのか。
「俺達は通して貰えるんだな?」
「ええ、こちらへどうぞ」
門を無事に抜け、俺たちはエロスへ入国を果たした――。
◆
大通り。どいつもこいつも鎧に身を包む騎士達ばかりが行き交っている。僅かに商人とかいるくらいだな。
「やっぱり、騎士しかいないんだな」
「そうみたいね~。ここまで騎士ばかりだと目移りしそうだわ。でも、女騎士もいるわね」
メサイアの言う通り、女騎士も歩いていた。猫耳の騎士もいるな。……へぇ可愛いと思っていると、その騎士と目が合った。なんか微笑んで貰って、ちょっとラッキー。
「おぉ……可憐だ」
「むぅ……兄様!」
「悪い悪い。あの猫耳騎士が可愛くてさ。――って、あれいない」
気づいたら彼女の姿はなかった。
……何処へ行ったんだろう。
桃色髪の可愛い子だったなぁ。
大通りを歩き、やっと城前へ。
「ここが本陣となります。城内にアーサー様達がおられますが、これより先はパロミデス様がご案内されるとの事です」
「ん、パロミデス? どこかで聞いた事があるような……って、まさか!?」
「やっほー。久しぶりですにゃ~」
この桃色頭……口調。
かなり雰囲気が変わって以前よりも美少女となったこの猫耳騎士……まさか!
「パ……パロミデスなのか?」
「そうですにゃ、サトにゃん」
「!!」
その呼び方も間違いない!
「パロー! すげぇ久しぶりじゃん! とんでもなく可愛くなって……見違えるようだな。そうか、さっき目が合ったのはパロかよ~」
「えへへ……そう言われると嬉しいにゃ。前より胸も成長したにゃ! ところで、そこの方達はもしかして」
「ああ、久しぶりだろうから改めて紹介しておく。こっちの銀髪は聖女のフォルトゥナ。こっちの黒髪が女神のメサイアで、彼女が背負ってる金髪の子がエルフでリース。で、俺が担いでるのは裏切者のパンケーキ」
「パ、パンケーキ!? な、なるほど……裏切者かにゃ。とりあえず、皆様一度お世話になっていますが、改めてよろしくですにゃ」
メサイアとフォルは、パロと挨拶を交わした。
「久しぶりね、パロ」
「パロ様、可愛いですっ」
二人に囲まれモフモフされていた。
なんと羨ましい……と思っていると。
「兄様、なんだか恋しそうですね。いいですよ、後でわたくしがいっぱい挟んで差し上げます」
なんでそんなエロすぎる口調で言うんだよ!? さすがにちょっと興奮したわッ! ……ま、まあ、ヨシとした!!
「後でな。それより、パロ。この城の中にアーサー達が?」
「はいですにゃ。円卓の騎士全員ではありませんけど……それでは、参りましょうにゃ~」
城の中へ入っていく。
警護する騎士達が俺達を鋭い目つきで見つめて来るが――俺の顔を見るなり驚いていた。
「おいおい……パロ様が連れているあの男、かなりレベルが高いぞ」
「……ああ、美女も連れている。どうなっているんだ?」
「なぜあんなヤツが……」
そうコソコソされてもなぁ。
「すみません、サトにゃん。彼らはグランドクロスの騎士達なので、サトにゃん達の顔を知らない騎士もいるのですにゃ……申し訳ない」
「いや、それなら仕方ないさ。先を急ごう」
そうか、城内にはグランドクロスも。かつては敵だった『コンスタンティン軍』だったが、今は本当に味方なんだな。
それから、ついにアーサー達と久しぶりの再会を果たすのだが――まさか、そんな事になっていたとはな……。
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