第373話 裏切者を捕らえ、報酬をゲットせよ!!
いつの間にか倒していたパンケーキ野郎……いや、レクゥィエスカト・イン・パーケ。不気味な仮面をつけている、恐らく男。当然だが、素顔を隠す為にあんなモンつけているんだろうな。
「サトル、どうするの?」
警戒して俺の背後に隠れるメサイア。
「とりあえず、俺の槍がヤツの胸部を貫いて致命傷だなこりゃ。このまま死なれると報酬も出なくなる。フォル、グロリアスヒールを頼む」
「了解です。――グロリアスヒール!!」
直ぐにレクゥィエスカト・イン・パーケを治癒した。黄金の槍は消え、ヤツの胸部の傷が塞がる。
「……お、おのれ……よくも!」
「黙れ裏切者。お前は世界ギルド・フリージアを裏切った……その罪は重いぞ。ギルドマスター・ぼむぼむに引き渡す」
「ひぃ!! それだけは、それだけは……!!」
「うるせー!! パーガトリー・チェーン!」
煉獄の鎖を巻き付けまくって、パンケーキを捕縛した。これで逃げられない。
「ぐぁ……なんだこの不気味な鎖! ふざけんな! 解放しろ!」
「するかボケ。とりあえず、教えろ……パンケーキ、お前はなんで世界ギルドを裏切った」
「……フフフ、そんな事か。私は常に強い者の味方。天帝様に勝てるわけがない……だから、私は世界ギルドの味方でも何でもない。最初から裏切る前提だったのさ! そう、全ては生き残る為……! あわよくば、そこの聖女を私の奴隷にしてやろうと思ったけどなァ……!」
――と、パンケーキは舌をベロンと出し、フォルをいやらしい目つきで睨む。見つめられた本人は、背筋が凍るほどゾッとしたのか超引いて俺の元へ。
「……あ、あの人、物凄く気持ち悪いんですけど! さすがのわたくしも無理です……」
「ああ、だな。裏切り者ついでに聖女好きの変態らしい」
「わたくしを奴隷にして良いのは兄様だけです!! と言いますか、毎日奴隷にされちゃっていますけどね!! あ~んなことや、こぉ~んな事を要求される毎日です!」
「って、お前ー!?」
やっぱり、フォルはヘンタイ聖女だった。
――それはさておき。
フォルの圧倒的な返答に、あのパンケーキすら青ざめていた。
「な……なんだこの聖女。ヘンタイだー!!!」
ええ、その通りです。
「――って、フォルをヘンタイ扱いしていいのは俺だけだー!!」
怒りのままパンケーキをブン殴った。
「ごふぅッ!? んな……理不尽な……」
「とにかく、コイツを一度世界ギルドへ運ぶ。メサイア、リースの容体は?」
「だめね。まだ気絶してるからテレポートとか不可能ね」
まだか。余程、親父さんのふんどしがショックだったんだろうなあ。まあ、気持ちは分かる。親がふんどし一丁とか世界の終わりに等しい。
「仕方ないな。パンケーキをエロスに連れていくか。アーサー達に何とかしてもらおう」
「そうね、今はその選択肢しかないわ。リースは私が背負っていく。サトルはその……悪いんだけど、レクゥィエスカト・イン・パーケをお願いね」
……やっぱりそうなるか。
仕方ないなぁ。
「おい、パンケーキ。お前を背負うぞ」
「わ、私に触れるな下郎!」
ジタバタ暴れるパンケーキ。
う~ん、仕方ない気絶して貰おう。
手刀でパンケーキの首筋をぶっ叩く。
「――――げふッ!?」
「あ~、やっぱりそう簡単には気絶しないか」
「たりめぇだろ!! 殺す気か、お前!?」
困ったな。昔見た漫画とかだと普通に気絶していたんだが……。やっぱり、そう上手くいくものじゃないんだなあ。
なんて立ち尽くしていると、メサイアが痺れを切らしたらしく――
「なにやってんのよ、サトル。こんなのね、こうしちゃえばいいの!!」
パンケーキにアイアンクローを決める。
「ぎゃあああああああああああああ~~~~~~ッ!!!」
メキメキ、ミシミシっと頭蓋骨からイヤ~な音がした。死ぬだろアレ!! ――で、一瞬でポックリ逝き、白目を剥かれた。
うそ~ん……。
「ていうか、メサイア。お前の握力どうなってんだよ……」
「私には女神スキルが千もあるからね。これくらい楽勝よ」
「そ、そか……」
とりあえず、パンケーキは泡噴いて失神しちまった。これで先へ進めるな。
◆
【砂漠と雪の国・エロス】
「砂漠に、雪?」
砂漠地帯に入ると、なんと雪が積もっていた。なんだこの幻想的な風景……白銀の世界が広がっているのに、所々砂の大地、砂漠もあった。
「ここは季節が狂っているって聞いた事がわるわ。だから、夏とか冬とかの概念もないし、まあ、こういう風になってしまったとしか言いようがないわね」
「ほう、メサイアは地理に詳しいな。来たことがあるんだな」
「そういう分析スキルよ。ここへ来るのは初めてね」
そういう事か、納得。
俺はパンケーキを、メサイアはリースを背負いエロスを目指す。フォルは珍しく口数が少なかった。
「――あの、兄様」
「ん、どうした。やっと口を開いたかと思えば、トーンが低いな」
「ちょっと、こっちへ。姉様、申し訳ないのですが、兄様を借ります」
分かった、っとメサイアは頷く。
フォルに連れていかれ、少し離れた場所へ。
「どうした」
「……兄様、わたくし……そのぉ、我慢できなくて」
もじもじと身体をくねらせる。
……あぁ。
「可愛がって欲しいのか」
「……はい」
フォルを抱き寄せ、頭を撫でた。
最近、淋しがり屋な所もあるので、こうしないと落ち込む時がある。聖女も情緒不安定になるんだな。
「どうだ、少しはスッキリしたか」
「……幸せすぎて死んじゃいそうです……」
嬉しそうにしやがって。
まあいいけど。
それから、メサイアの元へ。
「すまん、メサイア。フォルはあれだ……前にフォーチュンの憑依があったからさ、それから精神的に落ち込んでいるらしい」
「らしいわね、理解しているわ。いいんじゃない、フォルは大切な仲間だし、心のケアをしてあげたって。私よりサトルの方が効果的だと思うし」
「さすが女神。寛容だな」
「当たり前でしょう。……でも、後でいいから、私にも構いなさいよね」
同意して、俺は再びパンケーキを担ぐ。
――もうすぐエロスに到着だ。
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