第38話 聖戦士 - 最強の仲間と共に -
『炭鉱ダンジョン』の横で朝を迎えた。
いつもの日常から始まるかと思ったが、どうやら今日は少し違うらしい。
コンコン……と、扉を軽くノックする音が。
こんな場所で来客とは珍しいな。
「兄様~。お客様ですよー」
「俺が出なきゃいけない決まりがあったっけな……」
とはいえ、メサイアとリースは入浴中。
朝風呂はいいよな。気持ちが良い。それに、良い朝を迎えられる。
コンコン……。
「兄様、早く出るのですよ」
「おう……」
フォルは今料理中で、背を向けている。
なんだろうな……あんな無防備にお尻を突き出されては、ちょっと悪戯したくなるよな? アイツ、案外、良い尻をしているし、無性に触りたくなる……。
「……なあ、フォル」
ちょっとした出来心で、俺は、フォルの可愛いお尻――ではなく、頭に優しくタッチしてみた。
「えい」
「ひゃぁ!? あ、兄様!? ……あ、あの、お客様……」
「フォルは、俺と来客どっちが大事だ?」
「……そ、それは、もちろん兄様ですけれど」
「じゃあ、いいだろ?」
「ズ、ズルイです。料理中を襲うだなんて……! でも、頭ならいいです♪ ……あ! そうでした! お風呂は覗けませんもんね。それで、わたくしの背後を襲ったのですね?」
「そ。風呂は、ロックが更に厳重になったしな」
それに、『千里眼』もたいしたレベル上がってないし、覗けない。というか、覗いたところでまだ目が出現しちゃうんだけどね。
「でも、兄様。どうせなら、もっと無理矢理なのを所望します。例えば、激しくマッサージしたり、スキルで服を裁断したり、モンスターの粘液を使った凄いプレイを――」
だめだ、このヘンタイ聖女……。
「……さて、来客の方を」
「あ~ん、兄様つれないです~!」
「また今度な。確かにお客さんを待たせるのはよろしくない」
「分かりました。では、今度、わたくしが兄様襲いますね」
「却下だ」
てか、ちょいと前に、もう襲われたけどな!
すっかり理性が失われている聖女を台所にポイ捨てして、俺は玄関へ向かった。特に考えることもなく、扉を開けると――
そこには……
「……ベル」
「おはよう。理くん」
この露出魔――いや、ビキニアーマーの『聖戦士』は、俺の従妹らしくて『ハーデンベルギア』。そんな彼女が今、目の前にいた。
相変わらず、肌の露出が多い。
マブシイくらいの肌色。
特にあのフトモモは壊滅級の威力。挟まれたい。
「お、おはよ……」
「どうしたんだい、理くん。そんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして」
「そりゃ驚くだろ。こんな炭鉱ダンジョンに従妹がやってくるとかさ」
「そうだね。それもそうかも。――ところで、これが理くんの家かい? 立派な家だね。ふぅん、でもまだ『山小屋 Lv.5』なんだね」
「あーそうなんだけど、分かるんだな。入るか?」
「まあね。うん。じゃあ、お邪魔しようかな」
◆
みんなが集まったところで、ベルを紹介した。
「――そんなワケで、こいつは従妹の『ベル』なんだ。よろしくな」
紹介が終わると、一番初めに言葉を口にしたのはリースだった。
「あ……裏路地で会った……」
そういえば、リースは会っていたっけな。
「へえ、サトル。あんたにこんな可愛らしい従妹がいたなんてね」
「わたくしも驚きです……。ちょっと自信なくしちゃいました」
メサイアはやっぱりというか何というか淡泊だった。逆に、フォルは何故か自信喪失していたが、いや、キミはヘンタイ以外は充分魅力があるぞ。
「で、ベル。こう言っちゃなんだが、なんの用で来たんだ?」
「それなんだけどね。……『ヴァルハラ』の攻略を手伝おうかと思って」
はい……?
「手伝ってくれるって……」
「そのままの意味だよ。わたしはもう自由の身だし、王様からも理くんを手伝うように言われちゃったし、それじゃあホラ、もう手伝うしかないよね」
ニコッと微笑むベル。
なんて尊い。天使の笑顔だ……守りたい。
「いいのか?」
「いいよ」
いいのかよ。
それじゃあ、パーティに入れますか!
なんたって、彼女は『聖戦士』。
強そうだし、ていうか最強だろ。どう考えても!
「みんな、聖戦士のベルを仲間に入れる。いいな?」
メサイアは……「おけ~」っと。
リースは……コクコクと頷き……
フォルは、
「ダメです!!」
「なんでだよ! 理由を簡潔に述べよ」
「胸がわたくしより大きいからです!」
「うるさい黙れ、お尻ペンペン3000回するぞ!!」
「ぜひお願いします! どうか、この淫乱なわたくしめお尻を、その兄様の穢らわしい手で――」
「ああ、今度な!」
フォルは無視して、賛成多数により可決した。
つーか、穢らわしいだとー!
+3000回だな。
◆
【 ヴァルハラ - 第20層 魔人の間 】
メサイアの『女神の力』で、さっそく『第20層目』のボスフロアまで到着。本来なら、ひとつずつコツコツと上がっていくものらしいが、こればかりはズルをしたい。
なんたって、だるいからな!
それに、レベルも充分高いし……【オートスキル】だって、かなり強化されている。強い仲間もいるし、きっと大丈夫さ。
ボスフロアはかなり広く、壁という壁はない。
メサイアによれば、ボス部屋は『特殊空間』になっているらしい。ただ、あまり遠くへいくと一生戻ってこれなくなる、と。
「サトル。ボスが召喚されるわ!」
「おう、みんな臨戦態勢を――」
お……?
「げ……!」
地面から、人間サイズのモンスターが出現した。
なんだ……あの両手にチェーンソーを持った外観は『バフォメット』のような、でも『ツァトゥグァ』のような醜悪で悍ましい顔をしているモンスターは……!
人間サイズなのは納得するが、なんだありゃ。
マジでバケモノじゃないか!
「理くん。あれは『エンケラドゥス』という悪魔モンスターだよ。あの『【魔神器】クレセントチェーンソー』には気をつけて」
気をつけてって……
なにをどう気をつけりゃいいんだよ!?
やがて、チェーンソーのエンジン音が激しく唸り始める。
――はじまる。
ついに第一のボス戦がはじまる――。
「ここまで来たんだ……やるっきゃねぇよな……!」
俺は【オートスキル】を全部セットした。
速攻で叩き潰す……!
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