第367話 能力値を奪え - ステータスのスティール -
「ソクラテス、お前は絶対に許さん!!」
ヤツを攻撃すれば、カルミア女王にも影響が出るかもしれん。かなりやり辛い戦闘だ。――だが、女王様を救出すれば、こっちモンだ。
「ネメシア、トーチカ、エコ! あのソクラテスの内部には女王様が取り込まれている。不用意に攻撃すれば女王様が大ピンチだ。いいか、細心の注意を払って攻撃しろ」
「じょ、女王様が!? そんな……」
「ネメシア、お前は女神スキルで何とかしてくれ」
「分かったけど、うん……そうね、頑張ってみる」
余裕のない表情だったが、ネメシアも構えた。
それからトーチカは、アパッチ・ナックルダスター・リボルバーを装着。久しぶりのガンスリンガーモードってワケだ。
かっけええぜ、このメイド。
それから、エコはロリエルフの姿に。
「エコ、お前……良いのか?」
「もういいでしょう。姿がどうとか言っている場合はありません。初めまして、ネメシア様、トーチカ。私はこの通り、エルフの姿が本来なんです」
「エ、エコ!? エルフだったの!? すっごい可愛いじゃない……その服も着ていたのね。リースママと同じスケスケのワンピースで驚いたわ」
ビックリするネメシアさん。
「エコが小さい女の子になった……」
トーチカも珍しく虚ろではない瞳で驚く。
そりゃ二人共驚くよなあ。
「聖女ヘデラ、なにを余所見している!!」
「おっと、忘れていたぜ、ソクラテス!!」
こうなれば、皆の力を借りる。
そうさ、俺には最高で最強の仲間がいる。
絶対に負けはしない。
闘志を燃やせ。
怒りを燃やせ。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……!!!」
駆け出しいく俺は、ソクラテスの頭部を狙った。
「……き、貴様! もうウィークポイントを判断したのか。素晴らしい反応速度だ!! 素晴らしい、素晴らしい、素晴らしいぞ!! さすが理だ!! 神だ!! お前こそが本当にアルクトゥルスだったのかもしれないな!! だが、だが、だが!!」
「うるせええええ、オーディール!!!」
右手を翳し、神の力を代行する。
目映い光は刹那でソクラテスの頭部に命中し、吹き飛ばす。ヤツはかなりの距離を吹っ飛び、けれど、宙へ舞った。飛行能力があるんだな。
「――――スラムファイア!!!」
トーチカの遠距離攻撃が発射された。
火属性の魔弾は瞬く間にソクラテスの手足に。
「小癪な! 魔弾使いがいるとはな……!」
「女神もいるわよ!!」
「いつの間に!!」
ソクラテスの背後には、ネメシア。
エコのテレポートで瞬間的に移動したらしい。
『シュネーヴァイス!!!』
両手から放たれる白き女神の力は、ヤツの手足をふと気飛ばした。そうだ、胴体に命中させなきゃ女王に影響はないはずだ。
「ぐぉぉぉぉ……! お、おのれぇ……女神如きが私に触れるな!!」
白い影がネメシアの体に触れようとした。
「お前こそ俺のネメシアに触れるなああああああああああああ!!」
怒りを爆発させた俺は――
煉獄の鎖・パーガトリー・チェーンでソクラテスをグルグル巻きにして、捕縛した。これで動けまい!!
「いちいち癇に障る野郎だああああ!!」
ブチッと体で鎖を破壊し、抜け出す。
野郎……俺の煉獄の鎖を抜け出しやがった。
いや、それくらい大幹部ならワケがねぇか。
「仕方ねえ、この能力を使うか悩んだが……一応コピーしておいて良かったぜ!」
「なんだと!?」
俺は、ソクラテスに向けて――
『グルーミーⅡ!!!』
これは、ユーウェインの使っていたステータスのスティールスキル。相手の能力値を全て奪う事ができる。
もちろん、それがヤツに効くかは保証がなかった。だが――。
「……な、馬鹿な!! ステータスを奪うスキルだと!! 大幹部である私になぜこんなスキルが……そうか、内部にいる女王のせいか!!」
完全な偶然だったが……そうか、女王を取り込んでいるヤツは、種族[人間]を掛け持っている状態ってワケか。もちろん、要因はそれ以外にもあるだろうけどな。
とにかく、ヤツの自爆に救われた。
『ホワイトアロー!!!』
女神の矢がソクラテスに突き刺さって、地面に落ちていく。
「ぐあぁぁぁぁああッ」
ドンと墜落。
ネメシアがこちらへ戻って来る。
「大丈夫か!」
「ええ、ヘデラが助けてくれたから」
俺は一応気になってネメシアの頬とかに触れた。
「触られるの嬉しいけど、だ……大丈夫だってば」
「心配なんだ」
「ヘデラこそ怪我ない?」
「俺は平気だ。お前が一番心配なんだ」
「うん。もっとわたしを見てくれる?」
「いつだってネメシアを見ているさ」
なんてやってると――
「おっほん。お二人さん、お熱い中すみませんね」
ロリエルフ状態のエコが咳払いした。俺はハッとなってネメシアを抱きしめた。
「ヘデラ、そこは普通、離れるところ」
トーチカに鋭い突っ込みを戴く。
「そうですよ、ヘデラ様。それ逆ですよ」
「これが正しいんだよ。なあ、ネメシア」
「……えへへ」
めっちゃ嬉しそう!!
やっぱり正解だった。
「ネメシア様、幸せそうですね。ならいいですね! でも、今はそれよりもソクラテスですよ!」
そうだ、ヤツはどうなった?
「…………ぐぐぐぐぐ……! 危ない危ない……」
「クソ、そう簡単にはくたばらないか」
ソクラテスは身体を真っ二つにされても生きていた怪物。つまり、自己再生能力がかなり高いのだ。
ならば、女王様をさっさと救出して一撃で葬るしかないのだろう。やるしかない……次こそ女王を救出して――そうだ、こうなりゃ、旧約聖書『ヨナ』でいくか。
いつしかも何処かで同じ事をしたような気がするけどな!
つまり、ヤツの腹の中に突っ込むってワケだ――!
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