第364話 レメディオス騎士団 - 悪の組織ヒュドラと共謀? -
エコの偵察を待つ間、俺たちはレメディオスを少し歩き、目を光らせた。
「今のところ異常はなさそうだな。住人も困った感じはない」
「そうね、ヒュドラらしきメンバーも見かけないわね」
ネメシア、トーチカと周囲を警戒していれば、しばらくしてエコが帰って来た。
「早いな、もう偵察完了か」
「ええ、テレポートしましたからね」
なるほど、それなら一瞬だ。
わざわざ走っていく必要もないしな。
手っ取り早くていい。
「――で、どうだった?」
「大きな変化はありません。ただ……」
「ただ?」
「ローブを羽織っていたので、顔までは分りませんでしたが、シミターとおぼしき人物が現れたのです。騎士団内へ入っていく所を見ました。確証はありませんけれど」
「おお。でかしたぞ、エコ! それは有力な情報だぞ! 見返りにちゅ~るぅをくれてやろう」
「ありがとですにゃ!」
懐に忍ばせているオヤツをエコにくれてやった。それから、俺はネメシアとトーチカにも意見を求めた。
「騎士団が怪しいそうだ」
「みたいね、さっそく行く?」
「ああ、トーチカもいいか?」
「うん、オーケー」
決まりだな。
【レメディオス騎士団】
到着早々、嫌な雰囲気に包まれた。騎士達が騎士団の前に立ち、陣形を組んでいたからだ。明らかにおかしいだろ、アレ。
「まさか、こっちの行動が筒抜け?」
ネメシアの言う通りかもしれん。
「ヘデラ、このままでは侵入できない」
トーチカはぶっきら棒に言う。そうだな、厳しい。さて、そうなると、どう中へ入ったものか。騎士団内部には、シミターがいるはず。
馬鹿正直に正面から堂々と行けば大事だ。乱戦確実だ。この前のようなカオスエンペラーデーモンとかヤベェモン召喚されるワケにもいかん。
「――となると」
視線を青空に向けると、みんなも釣られて空を見た。
「ちょっとヘデラ、まさか空から!?」
「そうだ、ネメシア。別に高所恐怖症ではないだろう」
「そうだけど……どうやって空へ?」
「飛べるさ。俺のスキルならな!」
「「「え!?」」」
一同、何事かと驚く。
「いいから、みんな俺に掴まれ」
指示を出すとみんな案外、素直に俺にくっついた。左にネメシア、右にトーチカ。頭にエコとなった。組体操のようなヘンな光景だが、気にしない。
俺は『ニトロ』を任意で発動し、爆発の推進力を得て上昇した。久しぶりだが、腕は鈍っちゃいない。気持ちい~!
「わあ! 本当に浮いてるー!」
「フフフ、すげえだろネメシア。魔力の消費が激しすぎて滅多にやらないんだけどな」
「ヘデラすごい。あたし空を飛べる聖女は初めて見た」
珍しくテンションの高いトーチカがグイグイ身を寄せて来る。彼女は見た目以上に柔らかいのでたまらんッ。
「あんまり揺らすな、危ないぞトーチカ。落っこちるって」
「あ……うん。ごめん」
「いいさ、しっかり掴まってろ~!」
◆
上空500メートルから騎士団の門を飛び越え、俺たちは敷地内に降り立った。楽勝だったな。
「さて、シミターは何処に」
「待って、ヘデラ」
「ん、どうしたネメシア」
「こ、腰が抜けちゃって……」
どうやら、ネメシアは飛ぶのに慣れていないらしい。戦慄し、腰をガクガクさせていた。
「おいおい」
「だって……」
「分かった。おんぶしてやる」
俺はネメシアをおぶった。
「……ヘデラ、ありがとう」
「いいって事さ。ネメシアをまだ感じられるからな」
「ばかっ」
ぎゅっと腕で首を絞められて、俺は息苦しくなった。
「おま、窒息するって」
「ご、ごめんなさい。ヘデラ、えっちな事考えたら怒るからね。あと、ヘンな発言禁止ね、少しでも何か言ったら耳を口ではむっとするから」
「なんだその地味な罰……いや、どちらかと言えばご褒美?」
まあいい、騎士団の中へ行くぜ。
レメディオス騎士団の中を走って行く。騎士たちの姿はない。すれ違う気配もない。……どういう事だ。もぬけの殻じゃないか。
「いくらなんでも殺風景すぎる」
「ヘデラ様、これは罠かもしれないですにゃ」
エコは正しいかもしれん。
そういえば、騎士団前は騎士たちが……!
『……フフフ、貴様たちが来るのは分かっていたさ……。イッツショータイムだ、聖女ヘデラ』
「お、お前がシミターか……!」
現れる人影。
こ、こいつは……まさか!
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