第363話 新機能オートスキル - スキル付与で仲間を守れ -
死神王との戦いで男の肉体を失った俺は、スターダストで復活出来るまで聖女のヘデラの姿で活動する事にした。
「しかし、この姿は本当によく目立つなぁ。街を一歩でるとこれだ」
「わあ、ヘデラ様だ~」「オレとデートして下さい!」「銀髪すげぇ綺麗」「顔小さい」「背も小さくて可愛いなぁ」「俺の嫁になってくれねぇかな」「細身なのにあのデケェ胸も良い」「たまんねー!」
――あのね、男からモテても嬉しくねっつーの! けど、この人気っぷりは、ちょっと癖になる。……う、いかん! 俺にそっちの趣味はねぇ。
◆
ぼったくりバー・えんじょいへ向かい、ネメシア達と合流した。カウンター席には、トーチカとエコの姿もあった。
ネメシアはトーチカに「――アレね、お肌に良いの」とか女子トークを繰り広げていた。俺にはサッパリだ。一応、女だけど。
「よ、二人と一匹」
「ヘデラ、待っていたわ」
これはネメシア。
「ちょーっす、ヘデラ」
これはトーチカ。
「にゃーす、ヘデラ様」
変な挨拶はエコの所為か!
みんなに軽い挨拶を済ませ、俺は席につく。
「さて、本題だが、これからレメディオス騎士団を偵察しようと思う。あそこは、裏切っている可能性があるからな」
俺が議題に上げると、みんな――。
「「「えええ~~~!!!」」」
とまあ、嫌そうにした。
「なんでだよ!?」
「「「面倒臭い」」」
口を揃えて言わんでも!?
「面倒臭いのかよ! 俺も面倒臭いよ? けどな、裏切者には鉄槌をってな」
「それより、飲もう」
「ネメシア、お前なぁ」
やれやれ、少しくらいならいいか。
ミルクたっぷりのコーヒーを注文して、みんなと談笑する事にした。そうしていると、酒場の別の席から男が接近してきた。
「なあ、あんた達さ、良かったら俺のギルドに入らない? ウチさあ、人手不足でさあ、君たちみたいな美人は大歓迎だよ」
俺もだが、特にトーチカは冷めていた。
興味なさそう。
「すまない、俺らは同じギルドなんだ。悪いけど」
「ああ、そうなのか。じゃあ、抜けて入ればいいよ。銀髪のキミ、特にキミは可愛いねぇ、好みなんだよね」
……気色悪いな、コイツ。
「無理だって」
「おーっと、そうだ。まだ名乗っていなかったね。俺はルーベルで、ある大きなギルドに所属しているんだぜ」
「そう」
「――でさ、そこの黒髪の子でもいいや、ウチに入らない?」
まだ話を続けるルーベル。
「――――」
当然、ネメシアはそっぽを向く。
気持ちは分かる。てか、しつこすぎる。
仕方ない、俺が追い払うか。
「あ、あの、本当に悪いんだけど、他を当たって」
「じゃあ、試用期間ってことで」
――――ヤバイ。
マジでコイツ、ヤバイ。
俺、久しぶりに鳥肌が立っている。
人の話を聞かないうえに、なんてしつこさ。しかも、ギルド加入要請を送りまくってくるし! だが、俺たちは世界ギルド・フリージアに所属している為、自動でキャンセルされていた。
「んだよ、世界ギルドかよ。このクソビッチども」
はぁ?
カチーンときた。
さすがに侮辱は許さん。
「おい、お前ふざけんなよ。勝手に盛り上がって勝手に要請しておいて、何なんだよお前は!」
「あぁん!? 俺は『ヒュドラ』に所属しているんだぜ。シミター様の配下ってわけ! いいか、シミター様はあの天帝の大幹部様と繋がっているんだぞ。痛い目に遭いたくなければ、口を慎むんだな」
おいおい、コイツはヒュドラのメンバーだったのかよ。道理でしつこいわけだ。そうと分かれば、とっ捕まえるしかない。
「ルーベルだっけ、お前こそ俺の仲間を侮辱すんじゃねえ! 俺はいいが、ネメシアとトーチカ、そしてエコを傷つけるんじゃない。訂正しろ」
「断る。世界ギルドは我々にとって敵だ。敵と分かった以上、ここでお前たちを……いや、ちょうど横にいるこのメイドを人質にしてやる」
トーチカの髪を引っ張るルーベル……こいつ殺す。
その瞬間にも【オートスキル】が発動した。
最近、俺のスキルは新たな機能がついた。なんとオートスキルを仲間にも付与できるようになったのだ。つまり、仲間に危害が加わった場合、レベルの低いスキルに限定はされるが、発動されるようになったのだ。
どうやら、この前の死神王戦でレベルアップしようで、効果が強化されたようだ。
そんな理由で、ルーベルの暴力が攻撃判定となり【血の煉獄】が舞った。炎は、男を包み込み、燃やして行く。
「うあぁぁぁぁ、なんだこの赤い炎!! ぎゃああああああああ、やめやめやめろおぉぉぉぉお!! アアアアアアアア!!!」
俺はすぐにトーチカを庇った。
「大丈夫か、トーチカ。髪が乱れちまったな」
「……うん、ちょっと怖かった」
「ごめんな、怖い思いをさせちゃって」
「いいの。ヘデラが守ってくれるって信じてるから……本当に守ってくれたし」
珍しく手が震えているじゃないか。
俺はトーチカにヒールを施した。
「俺のヒールじゃショボいけど、一応な」
「ありがとう」
さて、ルーベルだが……。
「………かぁっ」
ボトリと床に伏せていた。
酒場の客やオーナーが何事かと注目している。まずいな、これ以上は迷惑どころか、大惨事だ。
「オーナーすまない。こいつは悪の組織・ヒュドラのメンバーだ。アマゾネスに突き出す。悪いな、面倒事を起こしちまって」
「いいよ、ヘデラ様がレメディオスの治安を守って下さっているって国中のみんなが知ってるからな。そこのネメシア様、トーチカちゃん、黒猫ちゃんもな。そうだろう、みんな!」
「おおう! そうだ!」「ヒュドラは敵だ!」「このボケを牢屋にぶち込んじまえ」「なにがヒュドラだよ、詐欺グループだろ!」「俺なんかこの前、変なツボを買わされたよ」「ああ、謎の集金もしてくるし」「無理なメンバー勧誘も多いって話だ」「訪問販売もひでえって話だ」「いい加減にウンザリだよな」「最悪だよな、ヒュドラって」
――みんな迷惑がっているんだな。やはり、ヒュドラ問題は早急に解決する必要がありそうだ。
「よし、エコ、騎士団への偵察をお願いしたい」
「分かりましたですにゃ。ヘデラ様の為ならお任せあれですよ。では、行ってきますですにゃ!」
エコはトコトコと走って外へ出た。
こんな時、黒猫は万能だ。
さて、俺はどう動くべきか。
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