第353話 温泉開発 - 建築スキルで大幅にリフォーム -
「今日はこんな所か」
建築スキルで内装を大幅にリフォームした。もともとボロボロの宿屋だった中身は、今や銭湯になっていた。
「おぉ、なにこれスゴイ!」
ネメシアがいつになくテンション高かった。
「これが温泉だよ。そこの魔導式自動券売機で入場券を買うと温泉に入れるってワケ。受付はバイトを募集する予定」
「へえ! 完成が楽しみねっ」
そう笑顔を向けられると俺も嬉しい。
「…………」
エコを頭に乗せるトーチカの瞳も輝いていた。――おや、虚ろじゃないとは珍しい。最近分かった事だが、かなり嬉しい時にああなるっぽいな。
「もう少しで完成ですかにゃ、ヘデラ様」
「う~ん、あと三日は掛かるだろう。拘りたい部分もあるからな」
魔導式マッサージ機とか色々な。
混浴専用の露天風呂も考えたい。
夢は大きく、だな!
「今日は帰ろう」
宿屋――いや、今や俺の温泉となった『デザイア』(仮)の完成も近い。
◆
邸宅に到着して、少し仮眠を取った。それから、俺はネメシアが気になって部屋の前に……あれ、話し声が聞こえた。
ん?
「……あのね、ヘデラってカッコいいの」
「うん、知ってる」
ドアの隙間から二人の話声。
あれ、これってネメシアとトーチカか。
ああ……、そういえば、たまに二人で女子会みたいな事してるって言っていたな。俺はちょっと聞き耳を立ててみた。
「ヘデラの全部が愛おしい」
「あたしも。ヘデラが大好き」
……聞いてるこっちが恥ずかしいっての!
これは参ったな。
俺、今顔真っ赤だよ!?
「ねぇ、トーチカ」
「ん」
あれ、なんか変な雰囲気になってね?
顔の赤いネメシアは、トーチカを押し倒して――いかん!! これは、まさか!! ネメシアの欲求不満が爆発したのでは!!
あわわわわ……。
そういえば、ネメシアには、全く男っ気がないし……。もしかして、変な方向に向いちゃっているんじゃ!? いや、でも知らん男にネメシアを取られるくらいなら……、まだトーチカがいいかも。
って、何言ってんだ俺はー!!
「……ん」
「……」
あれ、ネメシアさん……まさか、トーチカにキスを!?
「はい、ゴミ取れた」
って、目のゴミかああああああああああい!!
「ありがとう、ネメシア」
目からすっと涙を零すトーチカさん。
本当にゴミだったらしい。
◆
「……ヘデラ」
ん――そうか、俺は寝ちまったらしい。
「ヘデラ」
優しい声が俺の名を呼ぶ。
この可愛い声は……ネメシアか。
「ねぇ、ヘデラ。起きないと、ちゅ~するわよ」
ガバッ!!
俺は即起きて、挨拶をした。
「お、おはよう~ネメシア! 今日も可愛いな!!」
「……ふぅん、わたしのキスは嫌なんだ」
「そうじゃないって。で、どうした」
「はい、服」
差し出される薄い服とミニスカ。
え……まさか。
「作ってくれた服か?」
「うん、欲しがっていたじゃない。だから、プレゼント。ちなみに、これ、わたしの自作なんだから」
「……マジかよ。う、嬉しいよ」
ちょうど下着姿なので、俺はそのまま服を着た。
「へぇ、なんだこの女子高生っぽい感じ……ちょっとスチームパンク風も残っていていいけど、すーすーするなあ」
「可愛いじゃない。すっごく似合ってる」
「ありがと、ネメシア」
「うん」
新しい衣装に身を包み、俺は今日も『温泉』開発を進めていく!
「まずは朝食だな」
「そうね、みんなと一緒に行きましょう」
部屋を出て、玄関前へ。
すでにトーチカがいた。エコは頭に乗っていた。準備万端だな。よし、今日もがんばるぞい……!
◆
道中、リースと出逢った。
「お、リースじゃん」
「おはようございます。サ……あ、ヘデラさん」
相変わらず俺の本名を言いかけるリースさん。こう不慣れな所も可愛いわけだが、それにしても、珍しい。
「どうしたの、リース」
「はい、あたしも温泉を手伝おうかと」
「いいね、じゃあリースにも手伝ってもらおう」
「はい♪」
ちなみに、メサイアは「また今度にする~」とダラけていて、面倒臭がって来やがらなかった。まったく、たまに駄女神モード全開だから始末に負えない。
フォルもまだ遠征中で、帰ってこない。心配だ……特に余計な虫がついていないか! くそう、自身も別行動中だからなあ。確認しようがない。
そんなわけで、俺、ネメシア、トーチカ、エコ、リースの五人で『温泉』開発に励む事となった。
完成は目前だ。
温泉オープンまで……あと一週間!
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