第348話 召喚術士 - 不完全の悪魔召喚 -
『――――ヘデラ様、大変ですにゃ』
レメディオスを奔走していると、エコからテレパシー通信が入った。
「どうした」
『北西にあるレメディオス騎士団付近に、男たちが集結しているようです』
「なぜ、そんな所に」
『さあ、分かりませんにゃ』
「エコ、俺に合流しろ」
『いえっさーですにゃ』
ぴょんぴょん屋根を駆けていく。
北西の方はあんまり用がないし、立ち寄らないのだが……おし、いた。黒猫のエコを回収っと。
「にゃー」
「エコ、掴まってろよ!」
◆
レメディオス騎士団前――。
変な服装の男たちが今度は十人ほど。
円形を作って悪魔召喚でもしているような、怪しい儀式を執り行っていた。なんだ、コレ。
「…………」
謎の呪文を唱えると――本当にモンスターが召喚された。こいつらの中に召喚術士がいるのかよ。
「ヘデラ様、大変ですにゃ!」
「なんだ」
「ヤツ等が召喚したのは、カオスエンペラーデーモンです!!」
「……馬鹿な」
ごうっと現れる巨大な悪魔。
背後に悍ましいオーラを漂わせて、こちらをギョロリと睨む。な、なんて気配だ……バケモノだ。
以前、ゴータマが召喚していたモンスターよりも上級っぽいな。という事は、ファルシオンは幹部クラス? という事か。
「ん、だが様子が変だぞ」
「ええ、ヘデラ様。あのカオスエンペラーデーモン……腐ってやがる、急ぎ過ぎたですにゃ!」
どこかで聞いたセリフを吐くエコ。
それってつまり――
「うああああああああ、これは不完全だ!!」
男たちが叫び、逃げ惑う。
……オイ。
召喚失敗ってか。
ドロドロと溶けていくカオスエンペラーデーモンの体。なるほど、能力も半端な召喚術士による召喚だったか。だから、アレは失敗作。
「む……!」
「ヘデラ様、カオスエンペラーデーモンの眼が紫色に……不気味に光っていますですにゃ」
「あ、ああ……」
見守っていると、カオスエンペラーデーモンはいきなり――
『ズドドォォォォォォォォォォォォォォォ――……』
とまぁ見事な目からビームを放って、遠くの砂漠を爆破した。遠方で核級の爆発が巻き起こり、とんでもねぇ風圧が襲った。
「ぐあぁ……エコ!」
「わわわわわわわ……」
馬鹿みてぇな火力だ。
あれがもし完全態だったのなら、このレメディオスは消滅していただろうな。半端者の集まりで命拾いした。
「許せん……許せんですにゃ」
「エコ? ぷるぷる震えてどうした!?」
「うにゃああああああああああああッッ!!」
ぴかーと光るエコは、金髪ロリエルフの姿になった。これが本来の、真の姿であるのだ。
「おぉ、久々だな!」
「ヘデラ様……私はビーム教として、ヤツを許せません!」
「なんだよその宗派! 聞いた事ねえよ!?」
「いいから、見ているですにゃ!!」
何故かブチギレたエコは、超豪華な神器級杖を取り出し、力強く握った。こりゃ本気か。
「カオスエンペラーデーモン! 本当のビームを見せてやるですにゃ!」
虹色の魔法陣が無数に浮かぶ。
宙にどんだけ展開するんだよ!!
百、千、万と……虹色の魔法陣が浮かび上がって――
『愛のホーリーグレイルですにゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!』
超絶叫びまくるエコ。
魔法陣からビームが集約し、一気に塊が押し出された。
『――――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
「うぉぉああああああぁぁッ!!」
なんちゅー威力。
カオスエンペラーデーモンは、空へ吹き飛ばされて一気に急上昇。大気圏にまで吹っ飛んでいった。
キラーン★
とぶっ飛んでいく。
「おいおい、宇宙へ飛ばすとかさ……」
「ふっふふふ……これが本当のビームですにゃ」
金髪ロリエルフは満足気に俺の方へ倒れた。……まったく、この猫エルフは。
「頭を撫でてやる」
「にゃー♪」
「ああ、助かったよ、エコ」
「ヘデラ様に撫でれると嬉しいですにゃ~…」
顔を赤くし、まるで酔っているみたいにデレデレするエルフ。なんかこうもデレられると、俺も悪い気はしなかった。
「よし、次行くか!」
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